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『モモ』

ミヒャエル・エンデ 著, イラスト
大島かおり 訳

1973年に刊行された児童書であり、長い間たくさんの人に読まれてきた本だそうだ。
この本に興味を持ったのはNHKの「100分で名著」だった。

まず、児童書ということでいつでも読める、すぐに読み終えると思って先延ばしにしてきた。
今回借りたのは、岩波少年文庫版で、その厚さにまずびっくりし、開いて文字の小ささにもう一度びっくりしてしまった。
さらに、児童書のため難しい漢字は使われてなくひらがなが多用されていて、目で追うだけでは読めず、所々真剣に文字を一言一言噛みしめて読んでいった。

題名にもなっている主人公のモモは決して清潔でない小さな女の子で人の話をよく聞きその人の発想を豊かにしてくれる不思議な子です。

物語はまるでサスペンス小説のように速いスピードで流れていきます。
観光案内のジジ、道路掃除夫のペッポ、この二人が最後までモモを支えていく友達になります。
時間貯蓄銀行の灰色の男たちが人々の時間を盗んでいきみんな時間がなくなり荒んだ世の中になってきます。

 時間節約こそ幸福への道!
あるいは
 時間節約してこそ未来がある!
あるいは
 きみの生活をゆたかにするために
  時間を節約しよう!

こんなポスターがたくさん掲げられるようになっていきました。(現代社会への警告かな)

子どもたちのやったことは、すべてむだだったのです。 
(中略)
影がどんどん長くのびてきましたまもなく暗くなるでしょう。空気がひんやりとしてきて、子どもたちはさむくなりはじめました。 とおくの教会の時計が八つ打ちました。

子供たちは大人に灰色の男たちの陰謀を知らせるためにデモをするのですが全く失敗に終わります。

この文章で鐘が八つ鳴るというのは8時を意味するのであれば、ドイツでは5月〜8月まで日の入りは午後8時を過ぎ、暑いという表現も無いため、時期的には6月くらいかと思う。

これから先はネタバレになってしまうので、モモと時間の神様とが灰色の男たちと戦うことになるとだけ言っておきます。

この本が刊行されたのは1973年ですから日本では第1次オイルショック、ベトナム和平協定、インフレ・狂乱物価、ピカソが死去、ドバイ日航機ハイジャック事件、ブルース・リーが死去、金大中事件、巨人軍V9などが起こっていた時代です。
近代化が進み全てが画一化され工業化されていくことに誰も不安も疑問も持たなかった時代に著者のエンデは警鐘を鳴らしていたのかもしれません。

時代への警鐘という意味では1936年にチャップリンが作った映画の「ライム・ライト」が有名です。

今こそ、こんな時代だから、沢山ある時間を上手に使えるよう頭を使っていきたいですね。

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