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認知症と孤独あるいは孤立

こんにちは。

近年、日本だけでなく世界的に問題になっている「認知症と孤独あるいは孤立」をテーマにしたいと思います。

しがない中年男の備忘録だと思ってくれれば助かります。

認知症と孤独の関係

2012年オランダの研究によると、孤独感を味わっている人が認知症になる確率は、そうでない人の1.64倍だったそうです。一方で社会的孤立と認知症の間には関連がなかったそうです。

2021年のアメリカのボストン大学の研究では「常に孤独を感じている」中年の人たちは、「孤独を感じていない」同世代の人たちと比べて、認知症あるいはアルツハイマー病を発症するリスクが1.91倍との報告がありました。

…なるほど、孤独を感じている中年は認知症になりやすいのか。そうすると自分もそうなるかも…とふと思ってしまいます。「アルコールと認知症」のお話でも書きましたが、私の父も引きこもりの酒飲みで、70代後半から認知症になりました。

孤立とは何だろう

しかし、社会的孤立(Social Isolation)は関連がないとなると解釈が難しい。社会的孤立の明確な定義はないそうで、おもにはひとりで、社会や他者との交流が乏しい状態とのことらしいです。ということはひとり暮らしでも家族や知人との交流がある人は社会的孤立状態ではないか?

ここで気になるのは、社会や集団の中にいても孤独を感じる人もいれば、ひとりでいても孤独を感じない人はたくさんいますよね。

私はどちらかというと前者の方ですが。

最近は「ソロキャンプ」や「ひとりカラオケ」が流行っています。彼らが総じて孤独を感じているかと思うと、なんかむしろ活き活きしているような気がします。

本田選手の言った、「俺は孤立している。あえてね。」…なかなかの名言です。彼は孤独なのでしょうか?

孤独のグルメの五郎さんはわびしくご飯を食べているのでしょうか?

ですから、なんとなくですが、「孤立という状態」よりも「孤独という気持ち」に、認知症は関連してくるような気がします。

SDGsで孤独はなくなるのか?

SDGsの目標に「すべての人に健康と福祉を」とあるのですが、そのなかに「全ての国々、特に開発途上国の国家・世界規模な健康危険因子の早期警告、危険因子緩和及び危険因子管理のための能力を強化する」とあります。

早い話がSDGsの話題性に飛び乗っている訳ですが、この健康危険因子に「孤独」あるいは「孤立」が入る、ということらしいです。

確かに不景気やコロナで期せずして社会から切り離され、孤立し、そして孤独を感じるというケースは多くあります。社会的に孤立してしまった方に焦点をあて、支援していく活動は持続可能な社会の実現のためにとても重要だと思います。

話が戻ってしまいますが、孤独と孤立はひとくくりでしょうか?

孤独という気持ちにアプローチできるのか?

孤独という気持ち」そのものにアプローチする手段はあるのでしょうか?

先述のボストン大学の研究では、「かつて一時的に孤独を感じていたが、今は孤独を感じていない人」は「孤独を感じない人」より認知症やアルツハイマー病になりにくいということも報告されていました。

つまり、数年前は孤独だったけど、今は大丈夫!という人ですね。もしかしたらその数年前というのは何かの喪失体験があった人もいたかもしれませんね。

立ち直ったきっかけはいろいろあるとは思いますが、たとえば、孤独に対して手を差し伸べる家族や知人がいたとか、これではまずいと思って孤独を解消するために自ら動いた、とかでしょうか。

生じた孤独に対して支援してくれる人、相談できる人が周りにいれば、それはとても良いことです。

そしてなかには自ら「立ち直った人」もいるのではないかと思います。この立ち直りの速さ、逆境に対する強さのことを「レジリエンス」といいます。確かに逆境を克服した人に、最終的に大成した人は多いような気がしますし、逆に順風満帆にきた人がポッキリ折れたなんてことも…。

学生さんのなかにも「立ち直りが速い子」、「めげない子」、「引きずらない子」がいます。そういう学生さんは良い結末を迎えることが多い気がします。教員として最もいいなと思うのは「失敗を引きずらず、失敗から得た教訓を次に活かせる子」です。

話はずれましたが、孤独を感じてもなお、自ら孤独を解消しなかったり、あるいは周囲と接点と持たずにいたりすれば、意図しない孤立状態になってしまうこともあるかと思います。

孤独という気持ちへのアプローチとして、私たちリハビリ職でいうと「作業療法」や「行動療法」などがあるかと思います。

あるいはそういった喪失体験による孤独がある方には、時間をかけたモウニングワーク(喪の作業)が必要ではないかと思います。

そういった立ち直る力、逆境を克服する力をつけるにはどうしたらいいかという研究も進められていますので、もしかしら認知症に対しても何らかの示唆が得られるかもしれません。

終わりに

他の研究でも、「孤独」と「孤立」どちらが良くないか?との議論はありますが、もちろんお互いに関連しあってもいるでしょう。

社会的孤立があれば病の発見は遅れますので、孤独死と社会的孤立は無縁ではありません。

イギリスでは2018年に「孤独問題担当大臣」が誕生したとニュースになりました。孤独は世界中、社会全体の問題であると改めて認識しました。

かつての記憶なので曖昧ですが、手塚治虫先生の愛蔵版「ブラック・ジャック」の表紙に「病んでいるのは人か世か」というキャッチコピーがあったと思います。

ブラック・ジャックもあえて海辺の診療所で、悩みや葛藤を抱えながら自ら孤立している方でしたね…。

ここまで長文を読んでいただきありがとうございました。

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