page.22 間テクスト性の諸性質

間テクスト性(intertextuality)は,主にポスト構造主義者たちに頻用され,意外かな構造主義者たちにもしばしば援用されてきた歴史をもつ,哲学の重大なテクニカルタームである。

クリステヴァが1966年に造語した。

同時期にはデリダの散種(Dissémination)など,テクスト読解における無視できない振盪が認められる。次項ではこの事態を批判することで,現在われわれの立たされている哲学的座標を把捉し,それによってこれから向かうべき場所についての検討を予定している為,本項ではその準備として,間テクスト性に内在するであろう二種のテクスチュアリティと,それにしたがった類別を考える。きっと本項で試みるそれは,ジュネットの類別とは異なるものになるだろう。

まずは,テクスト同士が別のテクストの解釈に影響してきたという事実は想起できる。テクストAが,ある地域における商売の禁止を達し,それと別のテクストBが商売の定義を規定,あるいは変形させてしまうような事態は想起できるし,この事態は明らかにBがAの意味(具体的な諸行為について,その可否)に影響している。

或は,「すべての文学作品はその作者に愛される」といったセンテンスをAとしたとき,もしその作者に愛されない文学作品Bが認められたときには,BはAの内容を反証するとさえ考えられる。

どうやら,間テクスト性の本質は次のように大別できそうである。すなわち,一次内容による影響と,副次内容による差響である。前者の“一次内容”とは,テクストの語る直接的な内容であり,後者の“副次内容”とは,テクストの存在が示す事実である。(ここで“語る”と“示す”は,それぞれの用法をヴィトゲンシュタイン哲学に対応させた)

造語なので,この区別について具体例を挙げることで敷衍しよう。

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