<ペアリング研究会 vol.1> タコス 2020/1/15

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先日、ニューヨークの食材を使って作った料理と、それに合いそうなワインを探して実際に相性を試してみる、<ペアリング研究会>を行いました。(研究会と名付けましたが、メンバーは私ひとりです。笑)

 ルールは、

①ニューヨークのローカルの食材を使用する

②今までに飲んだ事のないワインと合わせる

③王道の組み合わせから、少し冒険する

 
第一回目として選んだ料理は、タコスです。もともとメキシコ系移民の多い西海岸で大ブレークしたタコスは、ここニューヨークでも人気で、道端で売っている屋台から、モダンにアレンジされた高級なタコス店まで様々なレストランがありますが、ニューヨーカーにとっても、”おにぎり”の様な身近な料理で、皆それぞれにお気に入りのタコス屋さんがあるようです。メキシコ発祥のタコスは、伝統的にはとうもろこしの粉から作られたトルティーヤ(小麦粉から作られているものもあります)で野菜と魚や肉などの具材を包んで食べる料理ですが、日本だと甘辛味の挽肉とチーズがたっぷり入った、ザ・B級グルメのタコスが思い浮かぶのではないでしょうか。

 私もタコスといえば、そのイメージだったのですが、ブルックリンに長く住むアメリカ人の友人に、「この界隈で一番おいしいと思う!」と勧められたCerveceriaというメキシコの本場スタイル(本場は知りませんが、、)のタコス屋さんで食べたタコスに衝撃!を受けました。とてもシンプルなのに素材の組み合わせが絶妙で、ソースが美味しい。あと、焼きたてのトルティーヤが何より美味しいのです。

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(左:メキシコではなくてはならない存在、サボテン(英語ではCuctus"カクタス”)とえびのタコス。右はフィッシュタコス。)

しかしこのお店、ドリンクリストにワインがありません。メキシコ本場らしいというか、お店の人も、「ここはビールとテキーラだけだよ!」と。ということで、これは家でやるしかない、とタコス×ワインのペアリング試してみました。

 メニューはフィッシュタコス。

グリーンマーケット(ローカルの生産者が集まるマーケットで、マンハッタン、ブルックリン等数カ所で定期的に開催しています)で購入したヒラメを使用しました。

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(マーケットで売られている魚は地元民にも人気。左下がヒラメで、日本のものよりも身が厚くぷっくりしています。この日は1ポンド(約450g)で$20(約2200円)で販売されていました)

このヒラメにパン粉をつけてフライにし、フライパンで温めたトルティーヤの上におき、あらかじめ作っておいたサルサソースとレタス、ハラペーニョソースをかければ、あっという間に完成です。今回は小麦粉から作られているトルティーヤを使用しました。

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ワインは、先日訪れたマンハッタンの大手ワインショップ、Astor Wines&Spirits から、スタッフによるユニークなおすすめワインとして販売されていた、ギリシャのセミ・スパークリング(微発砲)のスキンコンタクト※による、セミ・ドライ(中辛口)のオレンジワインを選びました。1本12$(容量500mlでした)とお手頃価格です。

 ※スキンコンタクトは、ブドウを破砕した後、果汁と果皮を一定期間漬けておくこと。

 果皮や種子から成分を抽出する為に行われる白ワイン造りの手法ですが、長時間漬けた場合、果汁の色がオレンジっぽい色になることから、近年はこの手法で作られるワインの事をオレンジワインと呼ばれています。

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生産者はDomaine GLINAVOSというギリシャ北部に位置するZitsa(ジツァ)いう山岳地帯に位置するワイナリー。ギリシャの希少な固有品種を使い(国際品種も栽培)伝統的な手法を重んじる生産者です。

ブドウ品種は、ギリシャの固有品種である Debinaという白ブドウがメイン(97%)で、 Vlahikoという黒ブドウが3%ブレンドされています。どちらも初めて聞きましたが、何て発音するのでしょう・・・。アルコール度数は10.5%と低めです。

 
微発砲、スキンコンタクト、低アルコールというと今のワイン市場の流行ワードが勢揃いした様なワインですが、"Paleokerisio"というワイン名は、ギリシャ語でOld fashion("時代遅れ")という意味。要はスキンコンタクトの伝統的な作り方を揶揄した事からつけられたと思うのですが、くすっと笑ってしまうネーミングセンスも素敵です。

 

ペアリングの結果、タコスはワインに合う!

個人的にはこのワイン、マリアージュ・フレージュの紅茶、マルコポーロの香りがしました。アプリコットジャムや熟したピーチのような華やかな香りに加えて、エキゾチックな紹興酒とかライチとかナツメグの様なスパイスな香り。酸味がしっかり感じられるので、サルサソースのトマトの酸味と合い、残糖感がハラペーニョソースの辛みと合いました。タコスの複雑な味の要素に負けないパンチ力と微発砲の軽さを兼ね揃えた、じわじわと包容力を持つワインでした。 さらに、値段が12$って、タコスのカジュアルさにぴったりじゃないでしょうか。

 日本でも、東京の三軒茶屋にこだわりの自家製トルティーヤを出すタコスレストラン、ロス・タコス・アスーレスがオープンして人気になっているなど、ザ・B級グルメではない本格タコスが少しずつブームになっているような気がしています。お店で食べるタコスも最高ですが、美味しいトルティーヤさえ手に入れば好きな具材で簡単にできてしまうタコス。「タコ焼きにビール」が誰もが経験したことのある定番ホームパーティメニューだとしたら、これからの時代は「タコスにワイン」が新たな定番になる日がくるかもしれません。新しい「タコパ」、おすすめです。

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