2023年7月の新譜記録
こんにちは!タイトルの通り、私が7月に聴いて良いなあと思った新譜について、簡単な感想コメントとともにまとめておく記事です。
7月、いくらなんでも暑すぎましたね。8月はサマソニに行く予定なのですが、この暑さが続くと考えると、真面目に健康面が不安。「夏にフェスやるのやめたら?」っていうのをいよいよ本気で検討しなきゃいけなくなってきた気がします。歳のせいもあると思いますが、もう「夏だ!!」で盛り上がる気持ちより、暑さで受けるダメージの方がデカいので……
良かった新譜
アルバムタイトルを押すとsongwhipのページに飛べるので、気になった方はそちらからどうぞ!
Get Up / NewJeans
みんな大好きNewJeans。一切の無駄な装飾やベタつくグルーヴもなく、6曲12分というスピード感で爽やかに気分を盛り上げて過ぎ去っていく、暑い夏にぴったりのクールな一枚です。今年の夏はコレで決まり❗️
音楽的にはっきり新しいことをやっているわけではないものの、決して多くはない音数でフロアを踊らせるアーバンなダンスミュージックの手法が、装飾過剰なEDMベースのポップチューンを経た現行シーンに新鮮に刺さっているのかも。サマソニで見るのめちゃくちゃ楽しみです。
ちなみに、パワパフコラボのパッケージがすごく好みだったのでボックスセットを買ったのですが、3000円弱とは思えないほど内容も盛りだくさんな上、デザインのコンセプトが随所で徹底されていて圧倒されました。おすすめです。
1STST / TESTSET
METAFIVEの特別編成としてフジロック'21に出演した、砂原良徳 × LEO今井 × 白根賢一 × 永井聖一によるスーパーグループ。自分の周りではなぜかあまり言及されているのを見ませんでしたが、かなりバキバキでカッコいいです。テクノ基軸のウワモノと四つ打ちのドラムでダンスチューンとしての土台を作ったところに、永井聖一のニューウェーブ趣味なギターがユーモアを、そしてLEO今井の神経症的にシリアスな歌声がピリッとした緊張感を添える様は、後期Talking Headsを彷彿とさせます。フジロックは行けなかったんですが、ぜひいつかライブで見てみたいです。
Super Snõõper / Snõõper
ナッシュビルのパンクバンド。ローファイで性急なサウンドは一聴すると古式ゆかしいパンクスですが、演奏はかなり技巧的で、フレージングや曲の展開の付け方からはハードコアの暴力的なエネルギー、打ち込みドラムやダブリングされたボーカルからは80sのニューウェーブへのオマージュも感じられます。パンクを軸に、そこから派生した諸様式を(ややシニカルに)再統一するようなアルバムです。
Good Living Is Coming For You / Sweeping Promises
ローファイな感じでいえばこちらも良かったです。かなり徹底したローファイサウンドをしていて、ところどころグリッチのような趣きさえ感じられました。楽曲自体はたぶんポップセンス溢れるパンクがベースだと思うんですが、いかんせんサウンドがキマっちゃってるせいでなんだか不穏で薄気味悪い。だがそれがいい。
宇宙から来た人 / PSP Social
TwitterのTLに流れてきて知ったバンド。ジャンルで言うとサッドコアになるのかな。ギター、ベース、ドラムの三つの楽器がただただ乾いた音を鳴り響かせながら、同じフレーズが無限に反復される楽曲からは一種のエクスタシーを感じます。とりわけ、22分超の大作であるM5『行く人』は本当に凄い。M3『流れる』の合唱曲みたいな歌メロもかなりグッと来ました。"PSP Social" というバンド名も相まってか、なんだかCDで持っておきたいタイプの質感の一枚です。物理音源出たら欲しいな。
Xtalline : 001
注目のレーベル、Siren For Charlotteによるリリース第一弾。近年、シューゲイザーやエレクトロニカを軸にインターネット音楽のシーンで広まっていたある特定の美学様式に、「非在のものの美しさを叙景する幻視の音楽」を意味する「遠泳音楽」という名前を与え、再定義を試みた意欲作です。Parannoulやthat same street、衿などの新進気鋭の作家から、存在感を持ち続けているアメリカ民謡研究会や溶けない名前、さらには元BURGER NUDSの門田匡陽氏などが名前を連ねる、まさに「全員集合」のコンピで、リリース情報を見たときは思わず笑ってしまいました。
「非在のものの美しさ」という感覚は言い得て妙というか、シューゲイズの轟音によって呼び覚まされるそうした感覚は、IDMやブレイクコアのどこか非現実的なサウンドや、合成音声に特有の存在感の希薄さ・透明さからも喚起されるものだと思いますし、実際近年のインターネットシーンはそのことに自覚的であったと思います。その意味で、「シューゲイザー」の概念を、従来の様式に囚われず、むしろ美学的な側面から再定義したことは興味深く、また意義深いことだと感じます(また個人的にも、そうした感覚がおしなべて「『青春』や『夏』への感傷」にダウンスケールされてしまう邦シューゲにすこし辟易していた部分もあり……)。今後のリリースも楽しみです。
(なお、同レーベルからは8/4に第二弾リリースとして Lily Fury氏による "Hinemosphere" という作品がリリースされたのですが、これがそりゃもう死ぬほど良かったです。必聴。)
Blackbox Life Recorder 21f / in a room7 F760 / Aphex Twin
Aphex Twin久々の新譜。もはや名人芸と言えるようなビートの気持ちよさ。ハットの入れ方からウワモノの音作りやフレージングまで、来るべきタイミングで来るべきものがちゃんとやってくる感覚がずっと最高でした。NewJeansが2000年前後のUKガラージのリバイバルとすれば、こちらは同時代のIDMを正当に洗練させたアウトカムのように思います。
I Want It All Right Now / GROUPLOVE
Tongue Tiedしかまともに聴いたことなかったので、なんかPassion Pitとかみたいな2010年代のエレクトロポップの人たち?という認識で、実際今回の新譜もそのエレクトロなテイストはあるのですが、強力なリフでアンサンブルをグイグイ駆動していくスタイルにはしっかりロックの方法論を感じました。ミックスはエレクトロよろしく中〜低音強めで、それで良いリフがガツンと来てくれるのが嬉しい。
おわりに
以上、7月の新譜記録でした。これ以外だと、アジカンのサーフブンガク完全版はまあ前から気にしていたんですが、なんかあんまりハマりませんでした。同窓会みたいな楽しくてある種の大人の余裕に溢れた空気感はすごい好きなんですけど、曲調と音の良さのミスマッチ感が否めない(特に鵠沼サーフのイントロのドラムとか)というか、なんか同窓会の域を出ないなあと思っちゃいました。ソルファ再録盤は好きだったんですけどね。
あとはやっぱりフジロック行きたかったですね……。ストロークスとかフーファイとか、あとCory Wongは生で見たかった……(Vulfpeckはいい加減来日してくれ)。来年以降はちゃんと仕事も休み取れるようになると思うので、どうにかして行きたいなと思います。
まあその分(?)、今年はサマソニには行けるので、夏はそちらを楽しみに生きていこうと思います。
あとあと、7月は久しぶりに時間を取って曲を作っておりました。遠泳コンピとか聴いた後だとほんとに心が折れるんですけど、まあなんかしら作ってる人間ではありたいという気持ちはあるので、早いうちに形にしてしまいたいところです。そっちのお知らせもいずれできたらいいな。
仲間内でやってるマガジン。よければこちらも。
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