頸髄症と手術後の回復~3ヶ月で何が変わるのか?やさしく解説!
今回はちょっと専門的なテーマを
なるべくわかりやすくお話しします。
テーマは「頸髄症とその手術後の回復過程」。
頸髄症は、首の脊髄(神経の大事な通り道)が
圧迫される病気です。
この圧迫によって腕や手に力が入らなかったり、
動きがぎこちなくなる症状が出ます。
今回は論文をベースに、
手術前から術後3ヶ月まで、
どのように回復していくのかを
追った研究について、お伝えしていきます。
そもそもどうやって研究したの?
研究対象になったのは、頸髄症の診断を受け、
手術を行い、術後3ヶ月間追跡できた49人の患者さんたち。
この患者さんたちは、手や指の細かい動きに支障があって、
その改善が見込めるかどうかを調べました。
年齢の平均は60歳前後。
性別では男性が多いけど、女性もいました。
さて、この研究の目玉は
「上肢の運動機能の回復」を
いろいろな方法で評価していることです。
以下に、どんな方法を使ったか見ていきましょう。
上肢の運動機能を測るテストたち
フィンガーエスケープサイン(FES)
これは指が意図せず開いてしまう症状をチェックする方法。頸髄症の症状を直接反映する指標です。指が開いてしまうと、なかなか細かな動作が難しいですよね。10秒テスト
指の素早い動きがどのくらいできるかを測ります。10秒間でどのくらい指を動かせるか、というシンプルだけど重要なテスト。握力
手全体で握る力を測る握力テスト。これは手や腕の大きな筋肉がどれくらい力を発揮できるかを知るための指標ですね。年齢が上がるとともに握力は落ちるので、改善が見られるか要チェックです。ピンチ力(つまむ力)
指の先でつまむ力を測ります。細かい筋肉の力がわかります。右手と左手それぞれを測定し、どちらが改善しやすいかもチェックしています。FFT(手指運動機能検査)
指の動きの範囲やスムーズさを調べるテストです。指が自由に動かせないと、日常生活でもストレスがたまるので重要ですね。STEF(総合的な手指の運動機能)
上記の要素を総合して、手の運動機能全体を評価するもの。いわば「総合評価」です。手術の成果がどのくらいあるかの全体像が見えます。
測定はいつ行われたの?
患者さんたちは、
手術の1週間前、手術後1ヶ月、
手術後3ヶ月に同じ測定を行いました。
このように複数のタイミングで測定することで、
手術がどれくらい効果的だったのか、
回復のスピードやタイミングがわかります。
研究結果:どんな変化があったの?
さて、ここからが本題。
この研究では、手術前と手術後3ヶ月までの
回復の経過を詳しく調べています。
以下に、項目ごとにどのような変化が
見られたのか説明していきます。
FES(フィンガーエスケープサイン)と10秒テスト
手術後1ヶ月で「FES」(指が開いてしまう現象)や10秒間で指を素早く動かせる能力が大きく改善。つまり、手術後の1ヶ月が回復のピークで、それ以降はそれ以上の大きな変化が見られないようです。握力
握力の回復には少し時間がかかるようです。手術後1ヶ月まではあまり変わりませんが、そこから3ヶ月にかけて徐々に改善していくパターンが見られました。腕や手の筋肉が回復するには時間が必要なのかもしれませんね。ピンチ力
指の先で物をつまむ力は右手で特に改善が顕著でした。左手でも改善は見られたものの、少し遅れる形で回復が進んでいました。右手が利き手の人が多いためか、もしくは筋肉の使い方に左右差があるのでしょうか。STEF(総合的な手の運動機能)
手全体の機能(STEF)は、手術後1ヶ月でかなりの改善が見られました。ただ、その後も3ヶ月まで少しずつ回復が続いていました。FFT(手指の動き)
指の動きのスムーズさも、手術後1ヶ月でほとんどが改善し、その後は大きな変化は見られませんでした。つまり、術後1ヶ月までで回復が安定してしまうようです。
結論:上肢機能はいつ改善する?
研究結果からわかるのは、
各機能が改善するタイミングが異なるということ。
手術後1ヶ月までが回復のピーク
指の細かい動き(FESや10秒テスト、FFT)は、手術後1ヶ月でほぼ回復が完了。この期間に集中してリハビリを行うことで、手術の効果を最大限に引き出せそうです。握力や総合的な手の運動機能は3ヶ月以上のフォローが必要
筋力(握力)は回復に少し時間がかかります。ピンチ力も同様で、術後3ヶ月までは改善傾向が見られるため、3ヶ月以上の継続的なリハビリが重要です。総合的な機能(STEF)も同様に、3ヶ月までゆるやかに回復が続きます。回復期間ごとのリハビリ内容
リハビリの計画を立てるときには、手術後1ヶ月までは指の細かい動きを重視し、そこから先は握力や手の運動全体のトレーニングにシフトするのが良いでしょう。3ヶ月以降も、ゆるやかながら回復が見込めるので、リハビリを切らずに続けることが大事です。
今後の課題
今回の研究では、頸髄症における
術後の回復パターンがわかったものの、
今後の課題としてさらに長期的な追跡調査が
必要としています。
3ヶ月で機能がほぼ回復するケースが多いものの、
それ以上も回復の余地がある可能性があります。
また、感覚障害に関する詳細な研究が進んでおらず、
こちらも今後のテーマとなるでしょう。
まとめ:頸髄症の手術後3ヶ月までの変化とは?
今回紹介した研究は、
手術後の上肢機能がどのように回復していくのか、
特に「何がいつ改善するのか」を詳しく示したものです。
リハビリテーションの計画を立てるうえで
参考になるポイントが多く、
例えば手術後1ヶ月までは指の動きやすさに集中し、
3ヶ月までで握力や総合的な運動機能の介入に
シフトすることが推奨されます。
手術がゴールではなく、その後のリハビリが非常に重要。
早期の回復を目指しつつ、継続的なリハビリで
長期的な回復を目指しましょう!!
タイトル: 頸髄症における上肢運動機能の経時的変化 -術前・術後3ヶ月までの変化-
著者: 酒井 浩, 土井田 稔
掲載誌: 京都大学医学部保健学科紀要: 健康科学
発行年: 2005年3月31日
巻号・ページ: 第1巻, pp. 19-24
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