劇評『ヴェローナの二紳士』RSC版

Royal Shakespeare Companyの”The Two Gentlemen of Verona”の感想を綴るよ〜。ヴェローナの二紳士

いいところから。ブランクバース最高!初期のシェイクスピアってやっぱり韻律が素晴らしい。自然じゃないところはもちろんあるけど、詩的な台詞回しになったときに本当に光る。
マジでせっかく英語で原文のまま上演してるんだから演出家さんはもうちょい韻律考えてやってほしいよ、

あとは意外と押韻も多かった?気がする。翻訳家泣かせ。

前半はかなり良かったですね、シェイクスピアの喜劇の中でもトップクラスに好きかなーっていう内容だった。シンプルでわかりやすい設定。誰がみても理解できる。あとは中盤のプローティアスのところに行くジュリアのセリフ。自分をpilgrimに例えてて、これはロミオとジュリエットのロミオと同じ。男女逆転。他作引用関連の話でここだけは面白いとは思った。

全体を通して男女の価値観って結構揺れ動いてるよね、この戯曲。男に振り回される女のステレオタイプ、女が自分から男の元へ行く近代性。

悪かったところ(戯曲)。展開がめちゃくちゃすぎる。後半マジでお遊戯会並みだろ、あの一瞬登場したシルヴィアの救世主なんだったんだよ。俺でももう少し上手くフェードアウトさせられる。

「許し」も順番めちゃくちゃだったな。唐突に見えるかもしれないけどシェイクスピアのコメディは急な「許し」は全然あってもよくて、ロマンスになるけど『テンペスト』もそれ。ただ、致命的だったのは、バレンタインがプルーニアスのNTRを許した後で怒り最高潮のジュリアが来ちゃったところ。もう何が何だかわからず片っ端からプルーニアスが許されるめちゃくちゃ展開。

ジュリアちゃんは日本で上演すれば人気出るんだろうな。レミゼで言えばエポニーヌだね。相手の男は自分を捨てた。それはわかってて、相手はそんな最低な男なのに、自分の気持ちには逆らえず男を追ってしまう。好きだろ?日本人、こういうの。

あとは他作品の引用が強引かつ雑。出てきたのはロミオとジュリエット、十二夜、夏の夜の夢とか。多分もっとあるけど。これは当時のシェイクスピアくんの少ない引き出しをフル稼働して出てきたアイデアなのだろうが、雑。ロレンス神父が一番意味わかんなかったな。ジャズと一緒で、引用って効果的に使わないと意味不明になるな。

もう一つ、下世話すぎないか!?時代錯誤すぎることわざとか女性蔑視があるのはいいとして、いくらなんでも汚いネタが多すぎる。若いな、スピア。演出の後押しも受けているが。

悪かったところ(演出)
さっきも書いたけど、もっとヴァースを大切にしよ?、、、
これは日本語でも意識してほしいと思っている。特にシェイクスピア初期はこれが見どころの一つなのだから。コメディってトラジェディと比べるとどうしても物語が浅くなったり、下世話になるってことはある。だからこそ格式を保つためにもシェイクスピアの意匠は残してほしい切実に…

その2。コメディタッチすぎる。初期スピアの特徴だけど、全体的にめちゃくちゃ詩が綺麗。あいみょん、ヒゲダンどころじゃないくらい天才的なセリフがかなり混ざってる。そういうところは噛み締めて演じてほしいな。ちょっとでも手数増やしてなんとかシアターを笑いで包もうみたいな、インディアンス的なコメディは古典には適さない。インディアンス好きだけど。そもそもコメディ(喜劇)ってコメディ(お笑い)とは違うから。

主人公と相手役が最後には結ばれて大団円って形がコメディなのであって、シアターを笑いで包むことを目的としたものは演劇ですらないんじゃないか。

とはいえこの戯曲は道化が多すぎて笑いに困らない、飽きの心配はいらない戯曲ではある。


深く考えずに見れば最初から最後まで楽しくて面白くて演劇初心者でも楽しめる作品。かといって本来演劇はこんな大雑把なものじゃないからオススメはしづらい。そんな作品です💕

みんなも興味があったら見てみてね。

あ、アタシは大学のデータベースからみれたんだけど普通の人はサブスクライブしないとみれないのか。

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