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Chlorkalk、Clynelish

 この間、生まれて初めて製氷器を買った。快挙である。

 以前から製氷器というプロダクトが好きではなかった。
 製氷器に水道水を溜めて作られた氷が嫌いだった。小さくて、白いカルキが矢鱈と入っていて、すぐに溶けるのが嫌いだった。
 社会人になって初めて冷蔵庫を買った時も、冷凍庫に標準で入っていた製氷器はすぐに捨てた(厳密には実家に送った)。自宅で氷を作った事は一度もなかった。以前住んでいたアパートには近所に氷屋があったのでそこで氷を買ってきて、包丁とアイスピックで割って使っていた。

 学生の頃、バイト先の居酒屋にあったホシザキの製氷機の氷にカルキが入ってない事を不思議に思った事があった。あれには実は秘密がある。冷凍庫に入った水は、純水の部分から先に凍り、カルキの成分が後に残るのだが、一般家庭の製氷皿は、冷気を四方から当てて氷を作る構造であるため、凍った純水部分に押されたカルキが中央で固まってしまうのだ。それであんなに白い氷が出来上がる。ホシザキの製氷機は水を出す機構が公園の噴水蛇口のようになっていて、その噴水口から水を噴射し純水部分のみを凍らせ、凍らなかったカルキ成分を排水口に逃す構造になっている。だからホシザキの氷は透明で、中に小さい穴が空いている……という話を、ホシザキの事務所で聞いた。

 上記リンクの製氷器、実際買ってみたがこれは良かった。
 この商品、原理は凄く単純で、製氷器自体を発泡スチロールの箱に嵌め込む。これをやられるとどうなるかというと、スチロールに覆われた部分は凍らないため、上の部分から少しずつ凍っていく事になる。カルキは少しずつ下へ下へと押されていき、最終的に下層部に集まって凝固する。この下に溜まったカルキを最後に捨てるだけで、透明な氷が水道水で作れる訳である。 

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とても綺麗な氷が出来る。気持ちが良い。氷はこうでなくては。

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一回の製氷の工程で生ずるカルキの塊。たかだか数百ccの水道水にこれほどのカルキが含まれている事に逆にビビる。

 これまで一貫400円近く払っていた透明な氷が水道水だけで作れる。値段も千円代なので、すぐに元が取れるだろう。

 上記の商品では氷が2つしか作れないではないか、と、一般人は言うのかも知らん。が、俺はそもそも平日に氷を殆ど使わないので不都合ない。

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 と言う訳でもう、酒を飲む。今夜はクライヌリッシュにする。
 今年はアラックだの米焼酎だのカルヴァドスだの蜂蜜酒だの、色々飲んでみたが、そうやって見ると、ハイランドのウィスキーの、酒としてのポテンシャルの高さに驚かされる。

 水が流れる所には人が居て、人が居る所には酒がある。
 この世界には実に沢山の酒があって、その酒の一本一本に、それが生まれた土と水と穀物と果物と人の歴史が詰まっているのに、今生きている殆どの人が、そんな事には目も向けず、どこで作られたのかも知らない、コンビニの酒ばかりを飲んでいる。分からん。

 英語にすると、カルキとクライヌリッシュは良く似ている。

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