応援しているよ、君の人生を
「それではお姉様に出てきていただきましょう」
突然の司会者の一声。
会場の視線が一気に私へ向かう。
「どんな弟さんでしたか?」
しどろもどろで答えながら、
私はやっと、お色直しで退場する弟の付添いを頼まれたのだとを理解した。
小さい頃からの夢のためコツコツ努力し、
夢を叶えて愛知に根を下ろした弟。
そんな弟が今日、名古屋駅前のとんでもない高さのレストランで、はれの日を迎えている。
心から祝いたいのに、月並みな言葉しか出てこない。
すると次に、弟にマイクが向かった。
「自慢の姉です」
どんな姉かと聞く司会者に、迷いなく言ってくれる弟。
彼は、いつの間にか立派な大人になっていた。
この彼に、どんな餞の言葉がいいだろう?
周りに拍手されながら、弟と手を取り会場をあとにする。
「ありがとね」
そう言って控え室に向かう、彼の背中を見て思った。
「ありがとう」はこっちのセリフ。
応援しているよ、君の人生を。
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