EP08 幸せになる目標の種類
このnoteは2020年6月15日に収録した音声を文字起こししたものです。
こんにちは! ニューヨークから松村亜里です。
幸せを科学的に研究するポジティブ心理学やウェルビーイングを分かりやすく伝えています。
今日は目標の3つの種類についてお伝えしたいと思います。
目標には3つの型がある
エリオット(アンドリュー J. エリオット/心理学者)さんたちが提唱する「達成目標理論」という研究があるのですが、その中で、目標には3つの型があると言っています。
1つは「熟達目標」または「マスタリーゴール」というのですが、これは個人の能力を高めて、課題を熟達していくことに焦点を当てるものです。前より自分が上手くなっていくというそのプロセスを楽しむためのゴールですね。
2つ目の型は、「遂行接近目標」というのですけど、英語では「パフォーマンスアプローチゴール」です。これは、他者と自分を比較して、”能力を獲得”することに焦点を当てるんですね。勝つことが大事と思うゴールです。
3つ目は「遂行回避目標」、英語では「パフォーマンスアボイダンスゴール」です。これは、他者と比較して(ここは一緒ですけど)、”劣っていないこと”を確認することを目標としたゴールです。
1つ目は「自分が上手くなっていくことのためのゴール」。2つ目は「人に勝つための目標」。3つ目は「人より劣っていないということを確認するための目標」ということですね。
評価社会で生きてきて
1つ目のゴールができる人は幸せだなと思うんですよね。そのことが上手くなっていきますから。今、私は養成講座を2つ企画しているんですね。「ポジティブ心理学コンサルタント養成講座」というのと「ニューヨークライフバランス研究所(NYLB)認定講師養成講座」です。その中で、認定要件というものがあります。
評価社会ではありますから、私たちは評価されるためにいろいろやってきたわけですよね。でも、私がこのプロセス(例えばクラスには何回以上出席して、欠席回は録画を見てレポートを書くとか、セッションをやってみるとかプレゼンをやってみるとか、テストもあるんですけど)を準備していたときに、評価しようという気持ちは全くないんです。
ここまで知っていた方が「ポジティブ心理学コンサルタント」または「NYLB認定講師」として活動するときに本人もきっと幸せだし、関わる人たちも幸せになるというレベル・基準で設けています。この辺を目標として取り組んでもらいたいなという思いで立てています。
なので、こちらからセットするときには「熟達目標」です。今できなければ、次できるようになればいいんですよね。今できなかったと思えば、練習して次にできるようになればいいといいうだけの、本当にそれだけの話です。人によってスピードが違いますし、どれだけ学んできたかも違いますし、どれだけ時間が使えるかも違います。今もし満足でなければ、それを練習して次できるようになればいいだけです。だけど、「やっぱりプレゼンは緊張する」とか、「人と比べてしまって上手くできない」とか、「人より下手なんじゃないか」とか、そういうことに対して緊張するということを聞きます。難しいですけどね。
本当に私たちというのは、評価されて生きてきました。そういうことがない世界ってどんなんだろうなって。つまり、自分が好きなことを、そのことを上手くやりたいとか、そのことを通して上手になることを通して、人の役に立ちたいとか、それだけで生きていく世界ってどんな世界なのだろうと思ったりします。こちらには評価する気は全くなくても、そういうのに慣れてしまっていて、評価されると思ってしまうというような自動的な考え方をするのを見て、日本の教育について考えたりしました。
「目標」と「パッション」の関係
3つの目標があるということで、この中で実際に心理的に健康にいいのは1つ目のゴールです。3つ目のゴール(人より劣ってないことを証明するために)というのは、確か心の健康にはあまりよくなかったような気がします。
2つのパッションについて紹介したことがあります。1つが調和的な「ハーモニーアスパッション(harmonious passion)」、もう1つが強迫的な「オブセッシブパッション(obsessive passion)」。調和的な方は、「自分が好きなことが他の自分の人生と調和されている」「辞めたいときに辞められるっていう状態」で、強迫的な方は、そのことにのめり込みすぎて辞めたくても辞めた方が良くても辞められず、他のことに支障が出ます。ワーカホリックなどがそうですね。そして、この2つのパッションと目標の3つの型というのは関係しあっているみたいなんですね。
研究を読んでいたら、こういうことを言っていました。まず、「強迫的パッション」の方は、「熟達目標」「接近目標」「回避目標」、この3つすべてと影響しています。強迫的パッションを持っている人は、この3つどれをも持っている可能性があります。調和的パッションを持っている人は、熟達目標とだけ関係があったということです。つまり、「調和的パッション」を持っている人は、熟達目標を持つ可能性が高いということです。そのプロセス自体を楽しむということです。
「熟達目標」を持つ人はパフォーマンスが良くなる
スポーツ選手が練習した時の、練習の質と「目標」と「パッション」の関係を調べた研究もあります。これは、ジュニアのシンクロの国の代表の子たちがどのパッションを持っていて、どの目標を持っているかっていうのを調べたものです。すると、「熟達目標」を持っている場合だけ、練習の質がよくなって、そしてそれが結果的にパフォーマンスに影響していたというのがわかっています。健康も熟達目標を持っている人たちがいいということです。
ちょっと話がわかりにくくなってしまったかもしれませんが、目標を立てる時には、「誰かに勝つため」「比較して誰かより優位になるため」「誰かに負けないようにするため」などの目標ではなくて、「自分がそのことを上手になっていく」という目標を持つという方が、一番ウェルビーイングであるということです。そして以前話した調和的なパッションというのが、この目標とも関係があるという話でした。
では、どういう時に、調和的パッションや強迫的パッションが育つのだろうというのも、疑問に思うところです。パッションについて今いろいろ勉強したので、それは今年の2ヶ月後、私のオンラインサロンAri's Academiaの8月の公開講義で、で、「恋人関係のパッション」「いいパッション・悪いパッション」「自分の趣味・勉強・スポーツに関するパッション」の種類と目標についてなどもお話したいなと思います。
子どもの「熟達目標」に寄り添う
私の子どもたちのお話です。
私は今まで子どもたちに対して、嫌がることは継続させないできました。ピアノもやって、すごく上手になったのですが、「もう嫌だ」というので辞めました。嫌だということを無理矢理継続させることをやってこなかったのです。バイオリンも2人とも上手になったのですが、クラッシックには興味がないというので辞めました。学校で、息子はサックス、娘はクラリネットを学び始めました。そうすると、学校の授業はすごく適当で、そんなに上手になっているかちょっと分からないですけど、楽しそうにやっているので続けさせてきました。
今、娘が歌うこととウクレレにハマっていて。2日前くらいからやりだしています。私はこういうことを勉強しているのもあって、この子たちがパッションを持っているもの(それも、熟達目標ですよね)、誰かより上手くなるとか下手ではなくて、「それ自体が楽しい」「もっと上手くなりたい」と思っているものをよく観察して、そういう機会を与えてあげたいなと思っています。
今までは忙しすぎて(私は本当に「強迫的パッション」で仕事をするようなところがあると思うのです)、ワーカーホリックになり、他のことをいろいろ置き去りにしてきました。英語で情報が分からないから、夫にやってほしいと思っていて。そして、夫がやってくれないとグダグダ言ったりしていました。そういうところから抜け出して、子どもたちの興味とか強みにもう少し寄り添おうと思います。
コロナ明け、サマーキャンプやいろいろがキャンセルされた夏、子どもたちのパッションを伸ばしてあげたいなと思います。皆さんはどうでしょうか。ぜひ、何かをする時に勝ち負けではなく、自分が前よりも少しでも成長するとかよくなるということを目的にしてみてはいかがでしょうか。
そのためには何ができるでしょうか。
ニューヨークから松村亜里でした。素敵な1日をお送りください。
※「ニューヨークライフバランス研究所」では、幸せを科学するポジティブ心理学やウェルビーイング研究を日本語で分かりやすく伝える活動をしています。オンラインサロン、講師養成、各種講座やイベント、メディア配信などを行っています。
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