【陽だまり日記】瞬く。
マフラーを巻いても、随分と器用に北風が擦り寄って首筋に懐く。
僅かこの数日で、すっかり世界は冬の準備に着手したらしい。
朝、信号待ちの私の隣に立つ桜の木は、葉を落として沈黙している。
ねえ、あなた、この前まで花を咲かせようとしてなかったかしら。いつからそんな無口になったの。
私がこうしてネリリし、キルルし、ハララしてる間に、二十億光年の孤独がひとつ瞬いたらしい。
あの空の、あの青に、手をひたす。
あの日、こんなに美しい日本語があるのかと、はっとした。
今まで知らなかった「青」の色に、まるで身体が透明になる気がした。
真なる色は言葉の中にあるのだと本気で思った。
信号の色が変わる。
進む先は色褪せた青だが、きっと眩しい、いつもの今日でもある。
つん、と冷たい風に、くしゃみはひとつ。
滅びる気のない世界で、誰もがどこかへ向かっていく。
そんな朝。