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【陽だまり日記】カラスプラス+

朝。
夜明けの前が一番暗い。
其れと同じように、春を目前とした今が、一番寒い。
は、と吐いた息が白く漂っては消える。
ここのところ、太陽が昇るのが早くなった。
睦月が、今日、終わる。


坂道を歩いていると、ひょこ、とカラスが脇道から姿を見せた。
嘴に何かを咥えながら真っ直ぐ私を見ているものだから、白い息で笑ってしまった。
直ぐに飛び立つかと思えば、私を見上げながら反復横跳びのように付いてくる。
黒い羽根は、朝日に照らされると緑がかったり青みがかったりしていた。
少しカーブのようになっている角のところで、カラスは、咥えていた何かを飲み込む。
くり、と小首をかしげ足を止めたから、私も立ち止まる。

どうしたの、と小声で尋ねると、カァ、とひとつ鳴いて、東の空の方へ飛んでいった。



不意に、背後から、おはよう、と声がした。
同期の女の子がそこに居た。
気心の知れた彼女になら、「今、カラスがね、」なんて言っても大丈夫。
一通り私のヘンテコな話を聞いてくれて、その後、彼女はこういった。

「かわいいじゃん。いいことあるかもよ。」
「あ、そうそう、私の旦那もさ、頭にカラスが止まったことあるよ。」

そんなことあるの、って二人で笑い合う。
カラスは、人にとって、種を隔てただけの隣人なのだ。
案外、みんな、カラスのネタのひとつやふたつ、持ってるのかしらね。



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