シンプルという強さ
#TooMuch
仕事で、既存の文章を書き変えるタイプの依頼を受けることがある。
「今のものでは伝えることができていない」と。
つまりは、“必要な物が足りない”という趣旨の相談である。
でも本当は足りていないのではない。
補足や装飾をしすぎて主題が埋もれている。
整理されずに分散してアチコチに書かれまくっている。
大切なところにボールドをかける。
ボールドだらけになったら、アンダーラインをひく。
アンダーラインだらけになったら、赤文字に変える。
どこが重要かわからないので、まとめページを作る。
新たにまとめたページの大切なところにボールドをかける…。
言わばこんな感じ。
むしろToo Much。
人は、そして僕も、何かをやり続けるとこんな結果になる。
逆を返せば誰だって最初から埋もれさせたかったわけじゃない。
そんな時、僕はそれらを全て読み返して正確に理解する。
理解したあと、一度全てを消してしまう。
大切なところだけを残そうとすると、結局何も消せない。
全部大切なような錯覚に飲まれる。
冷静に軸を抽出し、一度全部消して、再構築する。
#良かれの暴走を止める
大小あれど、“良かれ”は暴走する。
良かれと思って追加したり説明したり修正したり。
結果、トップページで詳細や背景を説明してしまったりする。
初見の人に細部まで全てを知らせる必要はないのに。
物事には時としてシンプルさを見つめ直す行為が必要で、
それをするのは、人でも機能でも構わない。
人の場合、最も簡単で有効なのは、時間をあけて見直すこと。
一度作ったものを後から見返すとシンプルさを保てる。
すぐにリリースすると夜中のラブレターみたいになる。
(もしくは昨日の僕のnoteみたいになる。苦笑)
機能であれば、敢えて高機能にしないよう心がけることで、
いつまでもシンプルな、本来のあるべき姿が保てる。
その点において、noteは良くできていると思う。
文字の色や大きさ、背景の画像などが変えられない。
noteを書くような人は、文体で自己表現したい人、
ビジュアルは二の次が良いと置いたのだろう。
見た目にこだわりすぎず、文章の内容だけを考えれば良いので、
個人的にはとてもありがたい。このまま変えないでほしい。
#シンプルは強い
書き換えるタイプの仕事の原稿は、
大抵の場合が既存よりシンプルに仕上がる。
状況ごとに大切なことを考え抜いて研ぎ澄ませ、
最適な場所に1つずつまとめ直したからだ。
しっかり理解していないとシンプルに説明できない。
シンプルに説明できないのは、分かっていないのと近い。
分かっていると無駄が削がれ、よりシンプルになっていく。
シンプルになるほど、説明もたやすくできる。
たやすく説明できる内容は分かりやすい。
分かりやすいものは広まりやすい。
広まりやすいものは認知されてファンが増えるので、強い。
特化したシンプルなものは強い。
非を打つ隙もないし、高機能化の要望すら下品に思えてくる。
高機能品は便利だが、壊れやすく、さらに上を期待される。
強いものは、大抵シンプルである。
・・・・・
おまけです。
最近買った文庫はまさにシンプルがゆえに奥深く、美しいものでした。
タイトルも帯も何もかも100文字ぴったりのSFショートショート集。
おすすめです。
「100文字SF」北野 勇作 著(2020年)
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