失敗ばかりの人生だったからこそ伝えられるものがある、 「がんばれ」と応援するのではなくそっと寄り添える人に。
人との出会いって不思議だなと思う。
振り返ると少なからず出会った人たちの影響を受けて今があるのではないだろうか。今回お話をお伺いしたのは、座間市にあるカフェでコミュニティづくりに関わっていた時にお会いした方をご紹介いたします。
当時カフェのイベントの一つに読書会という、最近読んだ本をおすすめし合う会を開催していました。見様見真似でなんとなくやっていたけれども、なかなか人が集まらず1人で実施するこもしばしば。でも開催を続けていたのは本を通して意見を言い合う感じが楽しく、続けていればそのうち参加してくれる人がきてくれると思いつつも集客せねばと何か手がかりを探していた。
そんな時、町田あたりで本に関わる人を増やしたり、本を通じてコミュニティ活動をしている人がいるという情報を聞きつけ、藁をもつかむ思いで連絡をとったのが始まりでした。
金城さんの第一印象は柔らかい雰囲気なのに、ちょっとおっちょこちょい。(初対面でもわかるくらい。笑)だけど本を読む人を増やしたり、本にまつわる活動のことを楽しそうに語る姿をみて、ついつい何か手伝いたくなってしまう方だった。
普段は町田のまちライブラリーで働きつつ、傍でカフェや美容室などのお店に私設の本棚を設置し、本を通した小さな交流を生み出す 「きんじょの本棚」 や、絵本を旅させるプロジェクト 「まちだ旅する絵本」 など本にまつわる活動を行っている。(きんじょの本棚は今では約20カ所に展開。)
そんな本好きの金城さんに 「きんじょの本棚」 を始めたきっかけや、本に感じている魅力などをお伺いしました。
本を読むことが、
現実世界の辛さを忘れる時間になっていた
──どんなきっかけで 「きんじょの本棚」 を始められたのですか?
金城:1店舗目は、オンソコーヒーさんから始まりました。前に働いていた職場の近くにあったコーヒー屋さんで、 「ブックカフェができたらいいな」 と店主によく話をしていました。
その頃、心がとても疲れていててオンソコーヒーさんが駆け込み寺みたいな存在だった。仕事が終わって家に帰っても思い出して落ち込んだりして……なんか、切り替えが苦手なんです、とっても。それでも、本読んでる時間は忘れられたんです。
何かを探すつもりで本を読んでたわけではないけど、本を読むとその時に合った答えがいつも本にあったんですよね。その経験を他の人にも教えてあげたいというのがすごくあって、本で何かしたいなって思ってました。
──その何かが、ブックカフェだったんですね。
金城:そう、本をきっかけに人と話ができる場があったらいいだろうなって考えていたけど、性格的にお店の経営のことも考えてやっていくのは楽しめないと思って、一歩踏み出せずにいたんです。そんな時にオンソコーヒーさんに 「ここで本を置いてみたら?」 と言われて置いてみたのが始まり。
今まで目標を立ててやり始めたことはたくさんあったのですが、目標を達成できなかったり、目標と現実との差が激しすぎて落ち込んだりしていた。だから、今回は目標なしで始めてみました。なったとこ勝負で 『行き当たりバッチリ』 がテーマ。(笑) こうならなきゃいけないというゴールを設定してないことが、続けられてる理由かもしれませんね。
本を読んでいる人が好き から始まった、本への興味
──昔から本はよく読んでいたのですか?
金城:昔は全然本を読んでいなくて、むしろ国語とか苦手でした。いつも国語のテストとかでありえないことを答えていたので、毎回先生に怒られていて、もう国語大っ嫌いと思ってました。(笑)
本は高校すぎた頃から読み始めたかな。自分が読んでなかったから本を読む人に憧れがあったのかも。本を読む人の奥深さとか、この人は何考えてるんだろうっていうのが気になっていて、だから初めは本を読んでいる人に興味がありました。その人を知りたくて、その人が読んでいる本を読み始めたのがきっかけかな。
──本を読んでいる人が気になるのって、その人に好意があったとかですか?
金城:そういうわけではないんですけど、言葉数が少ないけどちょっといいこと言う人っているじゃないですか。そういうのがなんか頭いいなぁとか思っていて、自分の考えを言える人というのに憧れがあったんですよね。私はあまり考えないで行動してよく転ぶから、そういう思慮深いっていう人に憧れているのかもしれないですね。
たくさん失敗しているから、その経験が少しは役に立つのかも
本を通して何か活動を始めたいと思ったのには1冊の本との出会いがあったそう。本業界では出会うべきして出会った本は「本が光って見える」ことがあるらしい。金城さんにとっての光る本はとはどんな本だったのでしょうか。
──金城さんの好きな本はありますか?
金城:「マカン・マラン (古内 一絵)」 っていう本で、ドラッグクイーンのシャールがやっている隠れ家的カフェに課題を抱えた人が訪れ、シャールが癒しの食事と一言二言その人が自分で立ち直るきっかけになる言葉を投げてあげるっていう話で、この本を読んだ時、そういう存在っていいなって思いました。
大丈夫だよっていうわけじゃなくて、なんかこう「この本読んでみれば」ていうそういう距離感で、何かヒントをこそっと差し出すみたいなことができたらいいなと、そのモデルがここに書いてあるんです。
私は他の読書家の人からすると飛び抜けてたくさん本を読んでいるわけではないし、偏りがあったりするんだけど、読んだ本と、今まで失敗したことや感動したこととかが誰かの役に立てられたらいいなと思ってる。
人の失敗談って必ず役に立つんですよ。こうするとダメなんだなっていうのは誰でも共通で、だから私の失敗も売れるかもって思った。私が経験したことでよければ参考にどうぞって、失敗談をお話できるとすごい楽しいでしょうね。失敗だらけの人生だったので。(笑)
[撮影場所]まちライブラリー
〈プロフィール〉
きんじょう みゆき
ブックコーディネーター / 本等(ほんとう)のプロ
本が好き。本を読むのが好き。本を読む人が好き。本を通じて人と出会いたい。
「きんじょの読書会」を時々開催。推し本紹介型のゆるい居場所づくりが得意。町田市在住。民間図書館勤務。市内のカフェや美容院、飲食店などを中心に「きんじょの本棚」という街の本棚を約20カ所で展開中。また、2020年5月の緊急事態宣言時中の図書館閉館時に、本が手に取れる場の提供を行った。
インスタでは本の紹介を行っている。@32bookcafe_goodday
〈きんじょの本棚とは〉
きんじょの本棚は、どこで借りて、どこで返してもいいまちの本棚です。
この取り組みを面白がって、本棚を開設する人、本を借りる人、本を寄付する人で、本を通じた人との交流の場を作るささやかな活動です。
https://kinjonohondana.studio.site/
後編に続く↓
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