
「猫でトラブらない街づくり」第1回セミナーに参加して来ました(後編)
セミナー最後の講師は、元新宿区の保健所職員でありNPO法人アナイス理事の高木優治さんによる講演です。
地域猫活動に向けての対策と管理についてのお話がありました。
最初に一番印象深かったお話を。
猫にまつわるトラブルでの殺人事件が5件あった
外で暮らす猫に餌あげを行う方は昔から大勢居ます。環境省・都道府県・市町村のガイドラインに沿って正しく給餌と管理を行うのでしたら問題は起きづらいですがほとんどの方はただ餌をあげるだけです。
外で生きる猫の命を大事にする方、外で生きる猫により被害を受けている住人、両方の想いやその人の正義の元に衝突が起きる訳ですが、今まで殺人事件にまで発展した5件のうち4件は、餌やりをして居た方が文句を言って来た人を殺傷した事件です。高木さんがお話してくれた事件は、それら4件では無く、餌やりをして居た方が殺傷された事件でした。
被害者は60代の女性で近所に住む猫の給餌や面倒を看て居た方で、加害者はお庭の植木の手入れを大事にしている80代の男性でした。
精魂込めて土を耕し植物のお世話をするのを趣味にしていた男性は、外で暮らす猫により糞尿をされたり爪とぎをされるのを嫌い、殺虫剤を撒いたりしていたのを、60代の餌やりの女性がクレームを言いに行く事がトラブルの元となり、日本刀で殺害されました。
80代の男性の家に警察官が到着した場で、その男性は日本刀で自決して亡くなりました。この男性は元警察官で、警視まで登りつめた方です。
今の時代、近所付き合いや地域のコミュニケーションが薄くなり、互いに話し合いや話を聞いてくれる環境が無いため、問題がここまで煮詰まった結果だそうです。
60代女性は自分が正しいと思い正義感から苦情を言いに行く、80代男性も自分が正しいと思い正義感と溜まりに溜まった憎しみの憎悪から一刀両断する。
人の数だけ正義はあるのです。たかが猫の問題と思ってはいけません。地域猫活動を通して見えて来るのはその地域に渦巻く住民の感情や環境なのです。
今の時代、当事者同士はトラブルに発展しやすいので、交通事故を起こした場合も被害者との話し合いは保険会社や弁護士が行います。当事者同士で話し合っても喧嘩に発展しやすいのです。
しかし、自治会も取り合わない、保健所も対応が曖昧な所がほとんどである現状、庭に被害を受け続けて俺の怒りが有頂天!の状態の激昂した人間がやってくるのです。
本来でしたら苦情を聞くのは役所の仕事です。国が政策として野良猫を減らすボランティア活動を民間の住民に委ねているのですから、そこに生じた苦情を聞くのは行政の仕事です。しかし現状、地域猫活動を行っている方に矛先が向かっています。行政の言い訳として、地域猫活動に賛成してる方と反対してる方が居るので、役所としては中立を保つと言い訳をする所がほとんどですが、政策として打ち出してる以上そこで逃げてはいけないのです。逃げるなら地域猫活動を行政が行って下さい。
私も6年前から地域猫活動を始め、当時は毎日戦場に赴く戦士の気持ちでした。毎晩高齢者が10m間隔で並びこちらを睨みつけて来る事も数ヶ月ありました。
それら住人を指揮していたのはその地域の有力者でして、そこのお婆さんはクレゾールの原液を授乳中の母猫子猫にぶっかけて殺害するのを常習としていました。
なんでそんな事が分かるのか?というと、得意そうに私にその話をしてきたからです。私は住人との話し合いの際は、Apple Watchで全部録音していますので証拠のデータもあります。ですので、大阪府警の生活安全課の刑事さんと連携してその住民を摘発した所、高齢の住民が10m間隔で監視するのも無くなり、その家の周辺の市道から漂うクレゾール臭も無くなりました。
今年の初夏の頃も、公園の近くに住む90代近い女性が文句を言いに来ました。こちらも500件近くの住人とお話し合いをし、関係各所とも懇談をして手札は揃ってるのでご理解いただける様お話をしましたが、最初から喧嘩腰なのです。夜8時近いのに信じられないくらい大きい声で目の前で怒鳴られます。ご近所にも迷惑ですしこれだけ近くでお話してるのですから声を小さくして頂けますか?と何度もお願いしましたが怒りが止まりません。その方も大きな家とお庭に住んでる方で、植物を育てるのが生きがいとなってる方です。自治会にも話を通してますし、自治会長と同じ公園を管理してるので毎日連絡を取り合ってますし、自治会掲示板にもポスターを貼り各家庭にポスティングもしてます。それでも激昂しながらあんたが猫を増やしてる!と怒鳴り込んで来ます。この地域の外で暮らす猫は不妊去勢率100%なので物理的に増える事が出来ないのですが・・・。
お話合いというより、一方的に剛速球を投げて来るだけで会話のキャッチボールが出来ません。「人間と猫どっちが大事なの?!」と何度も言って来られたのですが、多分猫と答える事で相手を言い負かす策でも用意してるんだろうなぁと見え見えだったので「どちらも大事だから同じ地域で人も猫も仲良く暮らして行くためのボランティア活動を国・大阪府・市と一緒にしているんですよ」と繰り返しお答えしました。最後には「私は買い物に行く所なのよ!忙しいんだから」とすごい速さで立ち去られて行きました。90近いのに元気だなーと思いました。
高木先生のお話の中に、地域猫活動というのはTNRをして終わるものではない。TNRM(マネージメント)が大事だというお話もありました。TNRした猫を管理していくという事です。私は以前からTNRL(ライフ)と言っていましたが、これは地域猫となった子の生活を守るという意味です。
TNRをしただけでは地域の猫の問題が解決する訳ではないので、その後の管理が大事であるという事。非常に私の考え方とも同じで嬉しかったです。
ほとんどの保護猫団体やTNRをお手伝いしてくれる会や個人は、TNRをしたらそこで終了です。それは次の現場が差し迫っているというのと、地域猫の管理をするというのは、そこの住民のご理解が重要になるので、そこまで時間をかけてあげられないという所が大きいです。
しかし私の活動範囲は一学区ですので、6つの町の管理という範囲ですのでそれをほぼ1人で行っています。本来なら4,5人は必要な範囲ですが、手伝って下さる方が居ないので仕方ありません。
地域猫活動をする上で大事なのは、
自治会(町内会)に説明し賛同を得て、個人で行って居ない事にする
自治会掲示板やチラシの配布など、周辺住民への情報を提供し続ける
活動を行う時は1人ではなく2人以上で行う
周辺の掃除なども猫のお世話と共に行う
餌やりだけをしてる方に正しい給餌の仕方や連絡を取れる様話し合う
長年猫を嫌ってる方の考え方を変えるのは困難なので、まずは味方を増やす
給餌を行うのは公園などの公共の場所が望ましい
だと思っています。高木先生も概ね同じ内容の説明をされていました。
まず自治会ですが、うちは毎年この地域の地図が配布されます。そこにはその年の自治会長のお宅には印がついていますので、お話し合いに行っています。
自治会や老人会の活動にも積極的に参加していますので、ご高齢の方にスマホの使い方の説明をしたり、雑談をした上で猫さんのお話もします。皆さん猫嫌いな方、猫が好きな方を良くご存知なので情報収集に繋がります。
朝6時に起きて公園で周辺のご高齢の方とラジオ体操をし、老人会の方と一緒に掃除をし、夜は毎日公園の掃除と周辺道路の清掃と一緒に地域猫のお世話をしています。すべては地域の猫さんが少しでも安全に暮らしていけるための布石です。
自治会掲示板には日本広告機構のハローキティちゃんの地域猫ポスターとこの地域に住む野生動物に関してのポスターを貼っています。庭を荒らす敵を分散させる事で目立つ猫単体への負の感情をタヌキ・アライグマ・ハクビシン・イタチ・キツネにも担ってもらいます。周辺に棲む野生動物に関しては、近くの高校の生物教師の先生と一緒に定期調査を行っています。
活動を行う時は1人で行うと標的になりやすいので、2人以上が望ましいです。と言ってますが私も母も1人で自分のエリアを担当しています。うちは人数が居ませんので。良く宗教の勧誘で家にピンポン鳴らしてくるおばさんは皆2人組でしょう?
あれにはトラブルを回避する意味合いがあるのです。
周辺の掃除をするのは良いが、ゴミの分別やゴミを持ち帰るのが嫌だと思います。そういう時は、公園の管理人になると市の専用のゴミ袋が使い放題なので、そこに燃えるゴミと燃えないゴミだけ分別して、管理は公園の用具入れに入れて収集日にゴミで出すと良いです。公園周辺のゴミ清掃も公園管理人の管轄ですので。
猫さんにご飯をあげてる方のほとんどが、他人の家の玄関近くとか道路にカリカリを盛って行きます。現場を見つけたら友好的にまずは話しかけましょう。猫さんに優しくして下さりありがとうございますなどの感謝の言葉が効果が高いです。
そういった方は怒鳴られたり罵倒される事は多けれど、褒められた経験は少ないので、自分のやってる正義が認められるとすぐコロっと落ちます。チョロイです。
少しずつ仲良くなって餌の上げ方を置き餌放置ではなく、100均のお皿で良いので皿に盛って与えるのと、お皿を回収する事を伝えましょう。これからの管理やお手伝いも踏まえて連絡先を聞き出せたらナイスです。
猫を嫌って怒鳴り込んで来たり、窓から監視していて餌やりを見つけたら飛び出てくる暇人はご高齢の方が99.9%です。他人の考え方を他人が変える難しさは、ある程度社会に揉まれたら誰しも理解出来るでしょう。人の考え方はなかなか変わりません。話し合いが出来るだけでもマシで、話し合いすら出来ない方がほとんどです。ですので、地域住民への説明は必要ですが、全員のご理解は必要ありません。
それが出来るなら世の中からとっくに戦争なんて無くなってますよ。
無理難題をなんとかしようと時間を取られるのではなく、外の猫を気遣う人間を探しましょう。そして上手い事取り込んで仲間を増やすんです。別に地域猫活動に参加してくれなくても構いません。猫好きの知り合いを増やして下さい。
それは自治会で発言する時にでも、この活動を地域住民◯十人の方が賛同してくれていますという後ろ盾になります。
公園管理人についてですが、ほぼ全ての公園は既に管理人が居ます。何故なら市からお金がいただけるからです。毎月2回の掃除でうちの市では4000円頂けます。ですので、毎年48000円の副収入と考えるとそれを放って置く住人や自治会老人会は無いのです。
私は公園管理人の申請をしましたが助成金は1円も頂いていません。365日毎日掃除していますが頂いていません。公園の備品も全て自腹で新調してますが貰ってません。元々管理していた老人会の方に振り込まれています。
なぜなら私はお金のためにやってる訳ではなく、地域猫をお世話してる公園がゴミ1つ無く草花の手入れも行き届いてる公園にする事で、地域猫さんの立場が向上するからです。
何度も言ってますが、私は人間が好きじゃないです。むしろ嫌いです。
猫ならなんでも好きかというと、初めて猫さんを飼ったのはアラフォーになってからですし、自分の唯一の大切な家族の猫はぶーにゃんです。
でも、ぶーにゃんと同じ猫さんが外で過酷な暮らしをしている、同じ猫なのに大切にされる命と、簡単に踏みにじれる命がある現状を変えたいのです。
猫を溺愛してる訳ではなく、猫を通して自分の人生観や信条に関わる問題にも繋がってるので、それを解決・もしくは向上していく事に人生を費やしています。
外で暮らす猫に関する政策リンク
環境省ガイドライン
環境省の飼い主のいない猫対策:地域猫活動
大阪府 人と猫との共生を考えるために
大阪市「公園猫適正管理推進サポーター制度」実施要綱