お酒は悪くない
何度目かの緊急事態宣言、そして蔓延防止対策と終わりの見えないコロナ対策。自粛や時短を迫られていた飲食店に、酒類提供禁止という、更なる一撃が加わりました。
かつて200年にもわたるペストの流行に耐えてきたヨーロッパは、現在に至るまで、酒類の提供禁止などしたことがありません。キリスト教のミサにおいて、赤ワインが重要な役目を担っていることも関係しているでしょう。
日本でも神道と日本酒には、深いつながりがあります。結婚式での三々九度も、神前に奉納した日本酒を頂戴しての直会も、日本酒あってのものです。結婚式でいきなり、水杯だなんで縁起が悪すぎますよね。任侠映画でよくあるように、「別れの水盃」ですから。
かつて禁酒法を実施したアメリカは、そのために密造・密売が盛んになり、アル・カポネなどのマフィアの資金源になったのは、皆さんご承知のとおりです。禁じられると、飲みたくなるというのは、人間の性のひとつですね。アダムとイブだって、禁じられたりんごに手を伸ばして、楽園を追放されたわけですから。
ジャガイモを普及させたフランスの農学者パルマンティエさんは、ジャガイモを植えた畑に見張りを立たせ、夜になると撤退させたそうです。「あんな見張りが立つ位だから、よほど美味しいものを育てているに違いない」と、近所の住民が、見張りのいない時に盗みに入り、味を広めていったそうです。これも禁じられると、氣になるという心理を利用したものです。
今、酒類の提供を禁じていると、飲酒に好奇心を持つ青少年が増えたり、反社会組織の収入源になってしまう恐れもあります。
飲食店を顧客にした酒問屋や、食品の卸会社、農業関係者や漁業関係者等、影響を受ける業者や産業は、本当に沢山あるのです。そこで働いている人達の生活も脅かされているのです。
日本の飲酒人口は1988年には50.6%、2017年には42.7%と年々減少しており、当然酒類の販売総量も落ちています。ビールの飲用者の5割が50代以降というデータもあります。飲めるけれど、飲まない人も17%から35%に増えています。お酒を日常的に飲む人は、減っているのです。一部のマナーを知らない人達の為に、酒類がやり玉に挙がってしまったということなのでしょうね。
お酒は、紀元前4000年前から作られ、ピラミッド建築の時の報酬として支払われたビール、紀元前8000年には飲まれていたらしく、文献には紀元前5000年位から残っているワインなど、人間の歴史と深くかかわっています。ローマ帝国が、放牧民だった人々を定住させる為の政策として、ワインとワイン造りを広めたのも、有名な話です。
ワインの美味しさを知った人々は、ワインを作るために葡萄を育て、葡萄を育てるために、生活様式を変えてまで定住するようになったのですから、恐るべし、ワインの力です。
疲れた心を癒し、明日への活力源となってくれたり、亡くした恋で傷ついた心を慰めてくれたり、適量を守れば、お酒は人の生活に寄り添ってくれるものです。
お酒は悪くないのです。一部のマナーの悪い人達の為に、すべてのお酒を禁じてしまう必要はあるのでしょうか?マナーを守らない人達を取り締まればいいだけのことではないですか?
もう一度言います。お酒は悪くないのです。お酒を提供する店舗と、その店舗への納品業者、皆が困っているのです。
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