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小学生「太陽の塔」に入る
乳歯
あれは僕が小学五年の頃。歯並びが悪かった僕は、今日も席で母親と診察が始まるのを待っていた。
「あんた、太陽の塔って知ってる?」
(知らないわけない。僕を何度もそこへ連れて行ったのは、お母さんだったでしょ。)
「知ってるけど、何?」
苛立ちを背にアンサーをする、そんな“クソガキ”に母親は答えた。
「なんか、予約したら中に入れるらしいで」
(え、太陽の塔って中身あったの…?)
「あ、でも予約半年待ちやわぁ」
母親の追撃に、僕は身を潜めて言った。
「予約して」
生え変わり
唐突にその日は訪れた。
僕は、父親と“目的地”に足を運んだ。
「父さん、楽しみだね」
「そうだな」
青々と広がる草花、そんな美しい“演出”の上に反り立つのは、あの『太陽の塔』である。
高度経済成長真っ只中に作られた、この“キョゾウ”は昨今話題の“調和と共生”とは程遠いものであった。
「ほら、行くで」
「うん」
父に連れられ地下に入ると、真っ先に目に入ったのは、忙しく色を変える、第四の“顔面”であった。
無機物のはずの“顔面”それは、淡い心のような、何か神秘的な輝きを放っていた。
この彼との”再会“のおかげで、僕はその後の『生命の樹』などには目もくれなかった。
永久歯
僕はまた診察のために一人、席に座る。
歯医者に行く度、あの頃の記憶が蘇る。
なぜなのか…あの、建造物に、思わず自分を照らし合わせてしまうのだ。
もう一度、彼に会いたい。
あとがき
カッコつけて、恥ずかしい…なのに投稿する。これは、立派な“黒歴史”である!あゝ!嗚呼!
挑戦も必要。そう思う事にする!