ガルージン露大使の離任・TV出演で考えた「質問」
BSフジLIVE プライムニュースで11月4日(金)にロシアのガルージン大使が11月の離任ということもあっての出演あり、非常に興味深かった。
筆者の立場としては、今回の「ウクライナ侵攻」(特別軍事作戦)は認められず、大使とは見解を異にする。しかし、流暢な日本語で本国の外交方針を伝えようとする熱意に敬意を払うべきと感じた。
https://tokyo.mid.ru/web/tokyo-ja/welcome-message-of-the-ambassador
モスクワに駐在する日本のロシア大使は北方領土問題についてロシアのテレビに生出演したことがあるだろうか。それだけに、ガルージン大使の活躍に敬意と同時に、日本の外交の弱さを思い知った。
出演された東野篤子筑波大学教授も冷静にコメントし、また大使が一つ一つメモして的確に反論する姿には印象に残った。日本でのTV映りのイメージの計算しての所作には見えなかった。この誠実さは何にも代替できないロシアにとっての外交資産でもある。
東野篤子氏自身もツイッターで大使への敬意を述べるなど、議論の作法を踏まえた点は高い評価が与えられてしかるべきと思う。
一方で、東郷和彦氏については、番組内で自著の宣伝等、本題のガルージン大使離任での出演に水を差すような形で感心しなかった。あえて書籍のリンクはしない。
また、筆者自身はロシアとは少なからず縁をいただき、ロシア語も少しながら学び、好きな国と言われれば迷わずロシアをあげる。それだけにこの年初来、苦しい苦しい想いが続いている。
ロシア関連の拙稿
一方で、番組を見てもし自分が大使に質問の機会があるとするなら、どういうことを質問したいのか、これを考える契機になった。もし可能であれば、大使に聞いてみたいことを考え、好き勝手に書いてみた。
もちろん立場柄、大使はロシアの公式見解の必要があり、職務上も踏み込んだ発言もされないと思う。筆者としてはメディアが「ウクライナ―ロシア」「日ロ関係」に関心が絞り込まれているが、この2点だと大使としても公式見解の説明の反復にとどまるだろう。日ロ関係でも領土問題やサハリン1・2開発の件など質問したいことは多いがここでは保留し、それ以外の質問を考えてみた。
特にロシアから見た国際関係や歴史や文化の質問をしてみたいところだ「質問力」とはよく言ったもので質問を考えてみることは自分の考えを整理したり、勉強にもなる。大使に改めて自分のロシアへの関心を刺激して頂いた点は感謝したいところだ。
【国際関係に関する質問】
書いてみたらあれやこれやで多くなり過ぎた。最も聞いてみたいのは対中観③④⑤と①
①北朝鮮の核開発・ミサイル開発について
ミサイルについてはロシア側に向けて発射し着弾させているのではないか?この点どうか?また核開発にロシアは協力していないか?ウクライナの協力は確認されている点もあるがどう考えるか?
②北朝鮮関連
日本では北朝鮮の拉致問題が非常に関心が高い。これについてどのように考えるか?拉致の問題で仮にロシアの協力が結実すれば日本のロシアイメージが劇的に変わる可能性もある。ロシアとして可能な協力はされるのか?
③台湾関連
中国による「台湾有事」が指摘されている。これについての考えはどうか?
米国はじめ西側が煽っているという考えか?「実力による現状変更を認めない」ことに同意するか?
④中国関連
ウイグルにおける中国の「人権侵害」が取りざたされている。他にも南モンゴルでの人権侵害の報道もある。これについての考えはどうか?これも同様に西側の煽りという認識なのか?
⑤中国から見たロシア
中国だと「ウラジオストク」を海参崴hǎishēnwǎiと呼んでいる。同様に、ウラジオストクは中国だと言う人が普通にいる。おかしいと思うがどうか。
⑥「インド太平洋」
ロシアも太平洋に面している。安倍総理の「自由で開かれたアジア太平洋」についての考えはどうか?
⑦「一帯一路」
中国の「一帯一路」について。ロシアとウクライナを通過する列車「中欧班列」トランス=ユーラシア・ロジスティクス」が、「特別軍事作戦」以降止まっている。一帯一路を止めているのは特別軍事作戦ではないか?
⑧トルコ
今回の特別軍事作戦にトルコ仲介の話も出ている。歴史的にはトルコとは難しい関係にあると思うし、汎トルコ主義、トルキスタン民族主義というような指摘もあるが、どのように感じているか?
⑨エネルギー
シェールオイルや再エネなど原油そのものが大きく変革とも言える時代とも言われているが、原油大国として、今後のエネルギー分野の「変革」についての考え、また二酸化炭素・地球温暖化は疑問に思うが、それらを踏まえて西側の原油価格操作といった印象などを持っているか?
【ロシアについての質問】
①ロシアはヨーロッパなのか。
西欧には属さないがその周辺で西欧文化や制度に憧憬を持ち、影響を受けた大国が3か国ある。ロシアとトルコ、そして日本。西欧と向き合ってきたロシアの「自画像」について大使の考え如何。この問いがほとんど全部。筆者の知人のロシア人に聞いたとき「うーん」と唸って時間クレと言われた。そののちの答えも含蓄があった。
一方でプーチン大統領はヨーロッパとひとつの文明との見解を示している。現状の危機は、ヨーロッパとの溝そのものでなないかと思う。
②「ソ連」の崩壊
ソ連の崩壊を大使自身は当時どのような思いで見ていたか、現在はどのように感じているか?(これは定式回答があるのだろうが、今回の「特別軍事作戦」を観る上での重要な問いかけでもある。)
③日本語で書かれたロシアについての本は何?
これを勧めたいというのがあれば希望。さすがにこれは無いと思うが。
④ロシア史の中で、重要と思う人物や出来事はなんですか?
【日本についての質問】
ロシアの日本研究のレベルは非常に高い。世界で初めて日本語学校を作ったのはロシアなのだ。歴史的にも日本に対しての関心の高さは侮れない。政治的な質問も本来はしたいところだが、歴史や文化をロシアの日本語使いに語らせると面白い答えが来て考えさせられることが多い。
①日本史で関心のある人物や出来事は何ですか?
実はこれについてロシアの知人から非常にレベルが高い回答があり、良い議論をした。忘れられない良き思い出だ。彼らが挙げた事例を列挙しよう。三島由紀夫、秀吉の朝鮮出兵、菅原道真、江戸から明治の変動。
②日本はアジアだと思いますか?
これは、ロシアに対し「ヨーロッパなのか」の問いの逆でもある。(これもロシア人の知人は面白い回答があった。そして日本人自身が考える「自画像」の問題でもある。)
③少子化・人口減少
ロシアも日本も人口減少で社会課題がある。ロシアから見た日本の少子高齢化についての印象はどうか。
改めて帰任する大使の健康と日ロ善隣友好を願う。