【脚本】こころの旅の途中で
テーマが【旅】というので書いてみました
原稿用紙400字詰め10枚分です
こころの旅の途中で
たらお
【登場人物】
弥生(30) 俳優 祐実とは幼なじみ
祐実(30) 会社員 弥生とは幼なじみ
○弥生の部屋(夜)
弥生(30)ベッドにうつ伏せスマホを見ている。
祐実(30)からメッセージが届く。
○スマホのメッセージ画面
弥生「明日、オケ?」
祐実「うん、作るから」
弥生「やったー。んじゃ明日」
○電車内(翌朝)
キャップ帽を被った弥生、三人座りの端に座りスマホを見ている。
○スマホのメッセージ画面
祐実「何両目に乗った?」
弥生、見回し車両番号を見つける。
弥生「三両目の前のほうにいる」
祐実「り」
○光の島駅のホーム(同刻)
祐実、駅のホームに立っている。
電車がホームに入ってくる。
ドアが開くと乗り込む。
○電車内(同刻)
弥生、膝の上に乗せたリュックを抱きしめながら爆睡している。上半身が少し傾く。
祐実、そうっと近づき寝顔を写す。
シャッター音で起きない弥生。
祐実、そうっと隣に座る。
○車窓(同刻)
住宅街から森林の景色に映り変わっていく。
○電車内(同刻)
電車の緩やかな動きに弥生の上半身が揺れ祐実のほうにもたれかかる。
車内アナウンス「次は〜澤野川〜澤野川」
祐実、弥生の肩をポンポン叩く。
弥生「(驚く)え!あれ?いつ乗ったの?わからなかったよぉ」
祐実「めっちゃ爆睡してたね。夢の中という旅に出てたかな?ヨダレ出して」
弥生「え?まじで!」
弥生、急いで袖で口元を拭く。
祐実「うっそー」
弥生「このー」
弥生、祐実の横腹を人差し指でつつく、ビクッとよがる祐実。
祐実「アヒャっそこ、まじ勘弁」
弥生「君の急所、あとは、背中を真っ直ぐにこう引くのもね(笑)」
正面向いて人差し指を上から下へと一本線を引く。
祐実「そんな事言うんなら、この写真売るからね」
祐実、さっき撮った弥生の寝顔写真を見せる。
弥生「うわっ!こんなの撮ってる!」
祐実「そうっと盗撮(笑)」
弥生「もー、君ってやつは」
電車のドアが開く。
弥生「開いたよぉ」
先に出る弥生、その後ろから祐実が降りる。
○澤野川駅(同刻)
カードをかざして改札を出る2人。
○清流ガーデン澤野川園(同刻)
2人、あちこち見渡す。
テーブルをみつけ横並びに座る。
祐実「弥生さ」
弥生「うん?」
祐実「ちゃんと寝てる?」
弥生「うん、寝てるよ。いつも爆睡!」
祐実「いや、それって疲れ切って気絶の爆睡でしょ。映画にドラマに出ずっぱりだし、片手分も寝てないんじゃないの」
弥生「あはははは、君の顔見ると力抜ける」
祐実「そうですかぁ、そりゃよかった」
弥生「おなかすいたぁ」
祐実、リュックからお握りをだす。
祐実「梅と卵焼き、どっちを御所望で?」
弥生「卵焼き!」
お握りを手に取る、弥生。
祐実「素直でよろし」
弥生「これ美味しすぎるもん」
祐実「そりゃあ、だって愛情たっぷり入ってるからね」
弥生「毎日食べたいよ、家政婦で雇いたい」
祐実「えーヤダよ。家政婦なんて」
2人、会話が止まらない。
○河原(同刻)
2人、石を持ち水切り遊びを始める。
弥生「ほら、やっぱ僕の方が上手いじゃん」
祐実「私だって!ほら!いい感じじゃん」
祐実、次の石を拾いに行く。
大きな石の裏に靴を履いた足がある。
祐実、そのまま向きを変え、弥生の方に戻ってくる。
祐実「ねぇ、弥生」
弥生「なに、え?顔色悪いよ?大丈夫?」
祐実「大丈夫じゃないわ」
弥生「え、こっちおいで」
弥生、祐実を抱きしめる。
弥生「どうした、凄い震えてるよ」
祐実「人がね、いるんだよ」
弥生「え?人!」
祐実「倒れてる。死んでんのかも」
弥生「え!」
祐実「と、とりあえず見て」
弥生「わかったけど、君の震えが止まってからね」
弥生に優しく背中をさすられ落ち着いてくる、祐実。
祐実「ありがと、もう大丈夫」
弥生「じゃ行こうか」
○大きな石(同刻)
2人、歩いてくる。
大きな石の向こう側に靴。先が上を向いている。
祐実「(指差し)あそこ、見えるよね」
弥生「あ、うん」
祐実「怖くないの?」
弥生「死体役の人かもって思ってたら、まだ大丈夫かな」
祐実「弥生、たくましくなったなぁ」
弥生「撮影現場で色んな人と会って何か度胸ついたのかも」
祐実「そしたらさ1人で見に行ってきてよ」
一歩後ろに下がる、祐実。
弥生「え?1人で」
祐実「私もう、怖いから行きたくないもん」
弥生「仕方ないなぁ」
弥生、1人で歩いて行く。
祐実、その姿を心配そうに見ている。
○河原・現場(同刻)
覗き込む、弥生。
両手を口元に当てその場に膝から崩れ落ちる。祐実、弥生のほうに駆け寄る。
祐実「大丈夫?」
祐実、靴の方を見る。
祐実「うわっ」
流木の先に靴が引っかかっている。
弥生、クスクス笑い出す。
弥生「あはははは、もうダメ」
祐実「演技だったか(苦笑)」
弥生「僕も見る前はめちゃくちゃ怖かったよ。けどコレじゃん」
2人、靴の横にしゃがみ込む。
祐実「どっから来たんだろうね?流れてきた感じだよね」
弥生、靴を拾いあげる。
弥生「君はどこから来たんだい?ここに来るまで君はどんな旅をしてきたのか教えてくれないかな?君を履いていた人はどんな人?今度僕に教えて……」
祐実「本当どうやってここに着いたんだろ」
弥生、再度流木に靴を履かせる。
弥生「僕はさ、生きてるって事はいつも心の旅をしてると思ってるんだ」
祐実「えっ?」
弥生「何処か遠くに出かけなくても、現実とは違う、素直な優しい気持ちなった時、こころが旅してるなって思うんだよね」
祐実「こころの旅、ねぇ」
弥生「こうゆう自然の音しか聴こえない場所も、心がスーッとなるし、好きな食べ物を食べてる時も他の事考えなくなるし」
祐実「私もこうゆう所好き……食べる時それしか頭に浮かばないわ(笑)」
弥生「現実の生活に戻ったとしても、ほんの少し先の事すら何が起こるかわからないよね。急に死ぬかもしれないしさ、人生って先がわからないから旅とか冒険とかしてるなって」
祐実「突然死ぬは、それだけは勘弁して」
弥生「うん、それはお互い気をつけなきゃだよね」
弥生、スマホで時間を見る。
祐実「そろそろ帰る時間?」
弥生「だね」
祐実「これからウチで……」
弥生「その先は言わない事」
2人、河原から緑道へ緑道の掲示板を通り過ぎる。
掲示板に人探しのポスター、さっき見た靴の写真つき。
(おわり)