短編小説#12 赤は止まれ。青は進め。黄色はアナタに口づけを
私の制服が色褪せていることに気が付いたのは卒業式の日のことだった。
つま先から舞台まで一直線に敷かれたレッドカーペット。端っこには園芸部が手塩をかけて育ててくれたパンジーの花壇がフットライトのように並べられていた。吹奏楽部が奏でるファンファーレを合図に私たちは軍隊のように列をなして歩いていく。塗装の剝がれた体育館の扉を名残惜しそうに指でなぞって私は歩きはじめた。
体育館を揺らすほどの盛大な拍手は今日が卒業式の本番であることを嫌でも実感させてくる。だからといって涙が出る