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2000年代純愛ブームとは何だったのか? -地方の『恋空』、六本木のホリエモン

連載資料のために『電車男』の原作をはじめて読んだ。本当にスレを載せてるだけであることに驚いたり、アスキーアートって誰が作ってたんだろうっていうかあれ何だったんだろう誰かまとめてそうだけど……と古のアスキーアートに思いを馳せたり、文庫特典巻末の座談会でひろゆき氏が今とキャラ違っていてしみじみしたり、面白い読書体験ではあったのだが。それにしても、『電車男』って今読むと、ただの「2ちゃんねる純愛物語」なのである。階級差を超えた恋の成就。笑ってしまうくらい、古典的な純愛物語をインターネットで繰り広げている。

そして考えてみると、たしかに2000年代中盤とは世にも不思議な純愛ブーム全盛期であった。

・『冬のソナタ』(2002年放映、「冬ソナ」流行語大賞ノミネートは2004年)
・『世界の中心で愛を叫ぶ』(2001年刊行、映画は2004年)
・『電車男』(2004年刊行、映画・ドラマは2005年)
・『恋空―切ナイ恋物語』(2006年刊行)

何がすごいって、どれも爆当たりしているところである。『恋空』なんて、ご存じでしょうか、なんとシリーズ累計760万部突破の爆売れ小説なのである。信じられん。

どうでもいいが私が高知県の中学一年生だった頃(2006年)、「本読むのが好き」とクラスメイトに言われて「え! 私も!」と胸をときめかせ、本好きの友達ができるかも? とわくわくしていたところ、クラスメイトから「おすすめの本貸したげる! これ!」と言われた本が『恋空』だったというハートブロークンな思い出がある(ちなみに全編土佐弁ですが標準語に改編しています)。いや『恋空』は悪くないんですよ。私もクラスメイトからそのまま借りて読みましたよ。そして翌年公開の映画を部活の友人に誘われ見に行きましたよ(ガッキーがかわいかった)。だがしかし『恋空』を見るたび「本好き……って『恋空』!!!」とハートブロークンしていた思い出が私にはよぎるのであった……。こうして私は本が好きな友人を求めてインターネットをさまようことになるのだが、まあそれは別の話である。

で、純愛ブームである。すごくないですかこの2000年代中盤、というか2004~2006年に集中している様子。

これってなぜ流行ったのだろう? 純愛ブームとは何だったのだろう? と今更考えていたのだが、今日『ファスト教養 10分で答えが欲しい人たち 』(レジ―、集英社新書、2022年)を読み返していて合点がいったので書き記しておく。

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