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文学好きにどんぴしゃで刺さった宝塚作品たち

宝塚を好きになって何がいちばん驚いたって、自分の好きな文学作品を題材にした演目がたくさん上演されていることだった。

『ベルサイユのばら』のイメージはあるし、なんとなく少女漫画を題材にすることがあるのは知っていた。『ロミオとジュリエット』みたいな有名演劇作品も。でも、まさかドストエフスキーや三島由紀夫を上演しているとは! そういえばマーガレット・ミッチェルの『風と共に去りぬ』も宝塚の有名作品だった……!

私が宝塚を好きになった理由の4割くらいが「自分の既に好きなものがすごく美しい形で再現されている」だったので。筆頭が文学作品。なのでこの感動を共有すべく、見てて「えーー!! 好き!!!」となった作品をご紹介したい。

私が宝塚好きになった時「こんなに文学が題材になってるって誰か教えてよー!」と思ったので、どこかの宝塚未入門な文学好きの方に向けて……。


1.『黒い瞳』(原作はプーキシン『大尉の娘』)

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大好き!!!!! 舞台はエカチェリーナ二世治世のロシア、貴族と平民の対立が激化した時代。主人公の青年貴族ニコライは、コサック反乱軍の娘であるマーシャと出会う。そもそも私は革命時や革命前のロシアがかなり好きなのだけど、ロシアのどこか暗い雰囲気と貴族のしゃんとした空気感が、宝塚にはよく似合う。これについてはプーキシンの原作よりおすすめとすら感じる。

ロシア娘の星風まどかちゃん、ふわふわ衣装も含めてあまりに可愛いので見てほしい。そして私の贔屓の真風涼帆さんはよくロシアにいてくれて嬉しい(神々の土地黒い瞳アナスタシアって「また革命前後のロシアにおんのかい」とつっこみつつ、ロシアの大人っぽい空気が似合いすぎて好きです)。

2.『THE LAST PARTY ~S.Fitzgerald's last day~』フィッツジェラルド最後の一日(フィッツジェラルドの半生が元ネタだが『グレート・ギャッツビー』が下敷きになってる)

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これも本当に!!! 好き!!! いやこの記事、好きな作品しか紹介しないんですけど。録画して見て、「宝塚ってこんな作品やるんだ!」と驚いた舞台のひとつ。ミュージカルというより現代演劇ぽい作りなのだけど(宝塚の演劇は基本的にミュージカル形式が多い)、フィッツジェラルドの自暴自棄になっているときの切なさとか、時代の何かに飲み込まれて壊れていくゼルダとか、すごく丁寧に描かれ演じられていて、グッときてしまった。とくにラストで踊るところは美しすぎて「あああふたりとも時代や環境が違えば幸せになっただろうに」と泣きそうになった……。これよかったんだよねえ……。月組現トップの月城かなとさん海乃美月さんコンビを好きになった一作品。

3.『春の雪』(原作は三島由紀夫『春の雪』)

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貴族の青年の恋と葛藤の物語。「三島やるんだー!」と意外に思って観たのだけど、明日海りおさんがすっごく合ってて驚いた。むしろ三島由紀夫の描く恋に狂う青年像って、美しい女性が演じるのが最適解だったのかもと思うくらい。この時代の学生服がよく似合う……。三島は少女歌劇が嫌いだったらしいのだが同族嫌悪にしか思えん、という話を友人としたことがある。明治から昭和くらいの時代の物語、もっと宝塚で観たいなあ。

4.『カラマーゾフの兄弟』(原作はドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』)

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これも「宝塚でカラマーゾフて、ていうかあの長い話をどうやってまとめるんだよ」と思って観たのだが、めちゃくちゃきれいにまとまってて、歌もよくて、うわあ好き〜〜ってなったのだった。翻案がきれいで、イワンの大審問官のあたりとかばっさり切っている。なのでドミートリィとグルーシェンカの物語が主軸になっているのだけど、この主役二人がすっっごく良かったー! グルーシェンカ役の白羽ゆりさんが人間味溢れる貴族の娘をがっつり演じてて、迫力あった。ほんとよくまとまってて「なるほどね!」ときっと納得するので、ドストエフスキーファンには一度見てほしい。


5.『ピガール狂騒曲』(原作はシェイクスピア『十二夜』)

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最後はシェイクスピアの翻案モノ。これも好きだなあーー。枠組みは『十二夜』で、舞台をベルエポック時代のパリにうつした物語。主人公は訳あって男のふりをしてムーラン・ルージュで働くことになる女性。相手役は作家のコレット(ここで実在の作家を出してきているのも面白いよね)。なにより「そもそも女性が男装する宝塚で、男装する女性を演じる」仕組みがいいなと思う。面白い。『十二夜』のドタバタコメディでありつつ泣ける感じがそのままパリの華やかな物語になっててよかった。あとここでコレットが出てくるのも文学好きとしてはにこにこする。強い女性として描かれてて。舞台装置がすっっごく可愛くて、そこも好きだった!


というわけで5作品紹介してきたわけですが、まだまだみたい作品はたくさんある。最近だと美弥るりかさん目当てで『アンナカレーニナ』も見たいな〜とか(録画したまままだみれてない)、こんど『嵐が丘』が放送されるみたいだから楽しみだな〜とか『高慢と偏見』や『大いなる遺産』や『二都物語』も過去やってたみたいだから観たいなー!!! とかいろいろ目論んでおります。また面白い作品があったら書きます……。文学好きとしてはほんと、「この手があったか!!」みたいな気持ちになる作品ばかりなので(やっぱ「女性が演じる男性」って実写化のひとつのアンサーだと思うんだよな)、ぜひ、おすすめしたいところです。

ちなみに、なんでこれをいきなり書いたかというと、マシュマロで質問をいただいたからなのでした。おすすめ聞いてもらえるの嬉しいー!! 楽しんでもらえたらいいな。

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三宅香帆
いつもありがとうございます。たくさん本を読んでたくさんいい文章をお届けできるよう精進します!