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2024年とは、AI登場による「動画」時代の幕開けである

2024年、本当にありがとうございました……!!

今年あったこと、は動画で振り返ったのでこちらもぜひ。


noteの方ではもう少し「今年を経ていま考えてること」という内容で書いてみたい。

今年は自分の本の反響もあるけれど、世の中としても「インターネットも動画の世界になっていくんだな」としみじみ感じた年だった。いや、もちろん今までだってテキストより動画のほうが影響力はあったのだろう。TikTokや配信ドラマやYouTuberの影響が語られるのは、今年に始まったことではない。ショート動画の影響力も今更だ。

だけど、流行による影響力ではなく、今年は伝達による影響力を感じたのだ。

それは、AIによって得た変化だ。

つまりーーインターネットの登場とは畢竟、メディアの民主化だった。

掲示板によって、ブログによって、SNSによって、これまで一部のプロに閉ざされていた「大勢の人に情報を伝達する手段」を、大衆が得た。なかでもiPhoneという技術革新によって、「プロじゃない一般の人々」が、テキストや画像を投稿できるようになった。それが2000〜2010年代の最も大きな変化だった。そのなかでフェイクニュースやポストトゥルースの時代なんて唱えられてきた。

しかし、2020年代以降、AI技術が民主化された。そしてAIによって、「誰もが動画を作る時代」になったのだ。

これはあまり言われていないことだが、私はとてもとても大きな変化だったと思う。動画編集を齧ったことがある方ならわかるだろうけれど、動画編集をAIなしでやるのはめちゃくちゃ大変だ。だからテレビはお金がかかる。しかし、AIがあれば、字幕も、動画編集も、アニメ生成も、嘘の動画生成も、可能になる。

iPhoneが一般人にテキストと画像をひらいたように。AIは一般人に動画をひらいたのだ。

そしてTwitterやInstagramが、新聞や本や雑誌の影響力に取って代わったのと同様に。PodcastやYouTubeは、ラジオやテレビ並の影響力に、なろうとしている。

それを象徴するのが、今年の日本とアメリカの選挙だった。

だからアメリカでフェイク動画も作成されるし、あるいは日本の選挙の推し動画も生成される。PodcastやYouTubeで選挙の対談番組が組まれる。それはもう、避けられない流れなのだろう。インターネットにも、動画がやってきたのだ。なぜなら専門家じゃなくて、一般人がAIで動画編集できるようになるから。


……というのが今年の実感の総括だ。

が、こんなふうに書くと世界への不安を嘆いているように見えるが、私はこの状況を決してネガティブなものだと思っていない。

なぜなら私は、自分こそが、「インターネットから出てきた本の書き手」だからだ。笑

そう、編集や生成の技術が民主化されることはいいことだ。だってチャンスが増えるんだから。だって私はインターネットでバズって、本を出せて、本を売ることができたんだから。きっと動画の変化も、いいものであるはずだ。たくさんこれから才能が出てくるだろう。Youtube編集のスターも生まれるだろう。もっともっと。今よりずっと。そして楽しいエンタメが増えていくはずだ。

問題は、インターネットも動画が主戦場になることで、テキストを読み慣れている人が減り、テキスト文化が衰退していくことである。それは困る。私は人の文章を読みたいのだ。他人の言葉を読みたいのだ。聞きたいけどそれよりもっと、読みたいのだ。この世の、書かれた言葉が減ってはこまる。

だけど嘆いていても状況は変わらない。

来年はもっともっと、読んで書く人を増やす活動をしていきたい。


自分が批評を好きなのは、批評がある世界が好きだからだ。

共同体に飲み込まれない、ひとりの言葉。私にとって、批評とはそれである。批評がある世界とは、ひとりの言葉を綴っても、共同体にいられる社会のことである。

働きながら、本を読む。そういうことだ。

ファンダムのなかにいても好きを言葉にしたり、家族のなかにいても娘が母と異なる欲望をもったり、平安時代の宮中にいても女性が男性の罪悪感の物語を書いたりする。それはすべて、共同体のなかにいながら、ひとりの言葉を発見する行為だ。

社会に読んで書く人を増やすとは、そういうことだ。

私にとっては。

とはいえ、みんな私と同じくらいひとりでいるのが好きじゃないのも知っている。みんなでいるほうが楽しい人がたくさんいる。それはそれで良いと思う。でも、みんなでいるとつらくなるタイミングもあるんじゃないか、とも、思ってしまう。

だから本がこの世にある。

私はそう、信じている。

別に本じゃなくてもいい。救われるなら何だっていい。でも私は本や漫画でしか、書かれたひとりの言葉によってしか、救われなかったから。だからまあ、文芸評論家をやっているのだ。

そういうことを再確認した一年だった。


有料部分は来年の抱負について!

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いつもありがとうございます。たくさん本を読んでたくさんいい文章をお届けできるよう精進します!