高額なサラダ専門店がNYの外食産業で革命。Sweetgreen(スイートグリーン)はコミュニティマーケティングで成功。
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日本ではサラダを食べる際に、イタリアンレストランなどのサラダバーで自分の好きな野菜を選んで自分でサラダを作り、パスタなどのサイドとして食べることが多いかと思います。しかし、ここアメリカでは違ったサラダの食べ方をします。実は、サラダを食事のメインとしてサラダだけをランチで食べるのです。その習慣を根付かせたのが、今NYのマンハッタンで外食産業に大きな革命が起こっている『サラダ革命』です。
サラダ革命でマンハッタンに様々なサラダ専門チェーン店が立ち並んでいる訳ですが、その中でもSweetgreen というお店は、なんと過去10年で$100 ミリオン($1=100円として100億円)の収益を上げ、2017年にはNYに、20店舗新しいお店をオープンさせたマンハッタンのフード産業のスーパースターと言われています。
今回は、NYのサラダ革命の中でも一目置かれているSweetgreen人気の秘密から、なぜ高額なサラダ専門店がNYのランチ産業を独占しつつあるのか紐解いていきたいと思います。
1.サラダ専門店の歴史:Sweetgreenの人気が確立されるまで
最近でこそ、アメリカではサラダ専門チェーン店で自分の好きなサラダにカスタマイズしたり、サラダをメインディッシュとして食べることに何の違和感も感じませんが、歴史的にアメリカではサラダと言うと「貧困」や「女性がダイエット中に食べるもの」というイメージがありました。
そのイメージを変えていったのが、90年代のステーキハウスチェーン店やファミレスのRuby TuesdayやSizzlerの自分で好きなサラダを作れるサラダバーだとと言われています。その頃アメリカでは、まだまだメインディッシュでサラダを食べるという認識はなく、デリなどの量り売り式バイキングの端にサラダバーを置き、サラダをファーストフードのカテゴリーに入れるよう試みました。結果的には、サラダはラザニアやバーベキューチキンといったカロリーの高い食べ物抜きでイメージすることはできず、カロリーの高いもののサイドとして食べられるものと認識されました。
現在のサラダ専門店のモデルとなったのが、アメリカで大成功を収めている大人気メキシカンフードのチェーン店のChipotleです。
このChipoteはファーストフードにも関わらず、ほとんどの野菜やたんぱく質をローカル産やオーガニックといった高品質の食材を提供し、すべてのメニューを列に並びながら個人のお好みでカスタマイズできるといったシステムを作りました。
そして、ビーガンやベジタリアンのオプションも付け加え、昨今のアメリカ大都市のヘルシー志向な若者とマッチしたのです。
(画像:cosmopolitan)
このChipotleのモデルをサラダのみで展開したのが、Choptだと言われています。
Choptが最初に店舗をオープンしたのは2001年で、
当時のアメリカではとても大きなリスクを負う挑戦だったと言われています。というのも、その当時まだ今のようにサラダ専門チェーン店がなかったからです。
ところが、このChoptがNYのユニオンスクエアにオープンしたあと、お店の外まで列ができるようになりました。
このChoptも『より良い材料を使うこと』をモットーかつマーケティングとして謳いました。
(画像:https://www.choptsalad.com/)
そして2007年、ワシントンDCでSweetgreenが誕生します。
2.コミュニティ・マーケティングで成功。Sweetgreenのマーケティング戦略とは
■「サラダ」をリブランディング
Sweetgreenは、エナジードリンクのRed BullのSNSに精通していて参加型・実体験型のイベントマーケティングが上手な点を真似たことで、サラダ専門店のライフスタイルブランド化を実現させることができたそうです。
共同創設者のNicolas Jammet、Nathaniel RuとJonathan NemanはSweetgreenを設立する上で『私たちが気づいた事は、イケてる!と思われている食べ物が全部不健康なものだったのだ。だから、サラダ専門店のブランド・会社を設立する上で大事にしたかったことは、その常識を覆してサラダが最もイケている食べ物だという新しい常識をつくりたかった。』
と言っています。
■ファン同士を繋げる音楽フェスの開催で熱量を上げる
(画像:bizjournals)
また、2010年から2017年にかけてSweetgreenは毎年Sweetlife Festival(スィートライフフェスティバル)というミュージックイベントを開催しています。
大人気アーティストのKendrick Lamarとコラボしてつくられた” Beets Don’t Kale My Vibe”というサラダは大ヒットしました。サラダの名前がKendrick Lamarの有名歌”Bitch, Don’t Kill My Vibe ”から由来しているのもおもしろいですね。
他にもニューヨークにあるBlue Hillというレストランのオーナー・セレブレィティシェフのDan Barberがパートナーシップを結び、フードウェイスト(食材の廃棄を出さないライフスタイルや活動のこと)をテーマとしたポップアップイベントを開催し、Sweetgreenの限定スペシャルサラダも作ったりしています。
Sweetgreenは始めのうちは、店舗の展開を東アメリカの主要都市フィラデルフィア、ニューヨーク、ボストンといった街に拡大していき、主に東海岸をベースにする予定でした。その後、ウェストハリウッドに進出してから、今ではカリフォルニアには15店舗を構えていて予想以上に西海岸でも注目されています。
■「コミュニティアンバサダー」主導で会員限定イベントの開催
(画像:edible)
そして、Sweetgreenはサラダ専門店として今までにないマーケティング戦略に取り掛かります。それは各都市でブランドをプロモーションする『地域のコミュニティを代表する人・コミュニティーアンバサダー』を必ず雇用するのです。
そのコミュニティーアンバサダーたちは、ブランドプロモーションとしてどういった活動をするかというと、ファンのためにフィットネスクラスやファーマーズマーケットなどのイベントの運営に携わります。
Sweegreenでは会員制度を導入しており、年間購入額に応じて特典があり、割引以外にもステータスに応じて様々な会員限定イベントに参加することが可能です。
こうして、コミュニティーアンバサダーたちにインフルエンサーのような役割を担ってもらうことで、ライフスタイルブランドとしてのファンを着実に増やしています。このようなイベント開催によって、Sweetgreenの「食事と運動でヘルシーな毎日を送ろう」というコンセプトをより理解してもらうことに繋がります。
■インスタグラムは世界観訴求
そして、もう一つ忘れてはいけないのがSweetgreenのインスタグラムのアカウントです。ただの野菜サラダの写真のアカウントにならないのは、先ほど示したようにSweetgreenがイベントに力を入れたり、コミュニテイーアンバサダーたちに協力してもらっているおかげで、向上心のあるライフスタイルブランドとしてSweetgreenがそのブランドコンセプトに沿ったインスタ映えする写真を投稿しているからです。
実際にSweetgreenのインスタグラムのアカウントを見てみると、商品以外の写真が多いこともわかります。
このようなユニークで斬新なマーケティング方法によって、多くの人達が通常のデスクランチより高額な$9~$15のサラダを買って食べるようになったのです。
3.Sweetgreenのアプリで混雑緩和・リピートアップ
では、ここでSweetgreenのブランド背景を理解したところで、実際にSweetgreenのお店に行ってみました。私がSweetgreenのお店に行って驚いたのが、サラダバー特有の長蛇の列がなかったことです。
その代わりに、ドアを開いて入ってすぐの所の大きな棚にイニシャルと番号が書いてある札が置いてあり、大量のサラダがセットアップされていました。これはどういう仕組みかと言うと、事前にアプリでオンラインオーダーでサラダを注文し、サラダを持ち帰るだけなんです。
アプリやオンラインオーダーで事前に注文して決済もすでに済んでいるサラダを棚からピックアップして持ち帰るだけ。
もちろんWalk-inで店頭で列に並んで直接サラダをカスタマイズしてサラダを購入することも可能です。
もちろん支払いもすでにアプリ上で済ませてあるのでキャッシャーにもほとんど人は並んでいません。
Sweetgreenのアプリをダウンロードすれば、自分のサラダを好きなようにカスタマイズできて、支払いもアプリ上で済ませ、ピックアップの時間の指定もできます。アプリで事前にオーダーしても店頭に並んでサラダを購入しても値段は変わらないので、忙しいニューヨーカーたちにとっては、並ぶ時間を節約できスピーディーで機能的なシステムを利用する価値が十分にあります。
また、自分好みのサラダを一度オーダーすると"re-order"というボタンで簡単に同じものを再び注文できます。
支払い方法もアプリに連携しているカードで済ませることもできますし、店頭でのお支払いを選ぶこともできます。
私は店頭で支払いをしましたが、キャッシュは受け付けていませんでした。
そして、頻繁にランチでSweetgreenを利用する人には嬉しい特典もあります。
120日以内に$99以上の利用で$9のクレジットが返還されるようになっています。
キャッシャーの後ろにあるチョークボードには食材一つ一つの原産地が表示されています。
筆者がオーダーしたサラダは、ベースのグリーンはケールとアルグラの2種類を混ぜてもらいました。その他トッピング(野菜のトッピングは4種類選べます)トマト、人参、赤キャベツ、オニオンで、チキンのトッピングをして税込みで$13くらいでした。
嬉しいのが、パンを一切れ自由につけられるのと、ドレッシングを選んでかけてもらう時は量の指定ができます。私はMediumと伝え、最後にトングでサラダをドレッシングと満遍なく和えてくれて完成。この最後に和えてくれるサービスは個人的にとても嬉しい!!
まとめ
アッパーイーストサイドのエリアでは、『2ブロック歩いてサラダ専門チェーン店がない事がない!』と言われるほど、沢山のサラダ専門チェーン店が軒を並べています。
ランチのラッシュアワーはどこのお店も長蛇の列ができています。
そして、道に出れば持ち帰り用の大きなサラダボールを持って、オフィスへそそくさと歩いていくオフィスワーカー達で溢れ返っています。
ニューヨークをはじめとするアメリカ全土で、こうしたサラダ専門チェーン店の人気に伴う増加で、多少高くてもささっと食べられる食事として、ある意味ファーストフードにカテゴライズされています。
従来のファーストフード=安いが不健康という概念も、Sweetgreenを始めとするサラダ専門チェーン店のおかげで、その定義も変わっていくのではないでしょうか。Sweetgreenのようにただのサラダバーではなくライフスタイルブランドとして上手くマーケティングしたこともあり、ベジタリアンやビーガンの人のみならず健康志向のある人を惹きつけ、他にもそのライフスタイルブランドとしてのSweetgreenの「かっこいい」グループに入りたいという人を巻き込むことに成功しました。レストランだからメニューや味だけにフォーカスするというマーケティング方法では、サラダ専門店のような新しいコンセプトを受け入れてもらうのは難しいです。
アプリやオンラインオーダーのような「機能性」、ライフスタイルブランドとしての「コミュニティ意識」など他の強みも意識することが大事と言えるでしょう。
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