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日本DX考;JAAF-STARTのリニューアルに寄せて

陸上競技の登録システム「JAAF-STARTは2023年度にリニューアルされ、会員登録に加えて大会エントリーや料金決済ができるなど、多機能となり生まれ変わりました。

陸上競技の団体・選手を対象として、全国約40万人が利用するサービスです。2024年度の運用が、3月1日から始まりました。

国はDX;デジタルトランスフォーメーションの推進を掲げ、様々な取組を進めています。その目的は「デジタル技術で便利な社会にする」「経済を活性化させる」ことにあるといいます。

しかし、2023年「IMD世界デジタル競争力ランキング」による国際順位をみると、10位以内に香港・台湾・韓国といった東アジア諸国が含まれている中、日本は総合32位であり、集計開始後の過去最低順位とのこと。

JAAF‐STARTも、DX推進の方針に合致する取組といえますが、利用者の立場からみて不具合が多い・操作がわかりにくい・設定が現場ニーズにそぐわないなど、マイナス点が多いと感じます。今後アップデートを重ねることで、現場が便利に利用できる形に整うことを願うところです。

この記事では、他の国内諸サービスを含め、日本でDX化がなかなか捗らないことについて、思うところを記しました。


手書きの紙書類にうんざり

昨年2月に親族が他界した際、行政・金融機関における様々な手続きをした時のこと。平日の17時;金融関係は15時までに、窓口対面で済ませなければならない。手書きの紙媒体書類を用い、同じことを何度も書く。あまりの効率の悪さ、面倒さに本当に辟易しました。

2月末、単純な書類の発行を求めて役所に訪れると、たくさんの人が窓口に殺到していたため長時間待つことになりました。原因は、マイナンバーカード作成によるキャッシュバック・キャンペーンの期限が近づいていたためでした。

マイナンバーをつくろうとする人が押し寄せて窓口が殺到し、他の手続きで来た私が長時間待たされるという状況。そもそも私の手続きが、マイナンバーを利用してオンラインで出来さえれば何も問題ないはずなのに… そんな出来事がありました。 

マイナンバーカードの普及停滞

そのマイナンバーは、2016年に開始されました。スタートして8年が経過した現在、普及率は7割半程度。国民の4人にひとりは、マイナンバーカードをまだ所有していないことになります。

保険証代わりに利用できたり、コンビニで印鑑証明書や住民票など取得できたりと、用途は徐々に広がりつつあります。しかし総じて見ると、良い仕組みとはいえない。自治体レベルでは、他人の個人情報と紐付けられたりするなど、本来あってはならないミスも発生しています。

マイナンバーカードとの連携サービスで、確定申告などで活用できる、マイナポータルも極めて使い勝手が悪いと感じます。

Googleをはじめとする各種ウェブサービスが、基本無料でありながら直感的操作ができ、多機能で不具合が少なく、高い信頼性のもと利用できます。そうしたものに慣れているため、マイナポータルの使い勝手の悪さが一層際立って感じられるのだと思います。

GIGAスクールPCのスペックは十分か

GIGAスクール構想は、2019年「全国の児童・生徒1人に1台のコンピューターと高速ネットワークを整備する文部科学省の取り組み」として始められました。社会がコロナ禍に見舞われていたことと重なり、その活用が大いに期待されたところでした。

しかし栃木県で2020年、県立高校生に支給されたPCは、WindowsタブレットでCeleron・4GBといった低スペック機。生徒が持つスマホに比べ、動作感がはるかに遅いはず。県では早期に「高校生1人1台100%」を実現したといいますが、恐らく現場では使い勝手の悪さに不満を持ったことと思います。

ちなみに全国の教育委員会「指導主事」を対象とし、1,135自治体からの有効回答を得たという電話調査結果では、Celeron・4GBを「十分なスペック」と結論づけており、興味深いところです。

学校現場に対し指導的立場にある指導主事は、このスペックが「国が示す基準」に基づくものであることを知っています。もし、スペック不足と表明すれば、現場から「自治体で予算をつけて高スペックに替えろ」と要求され、自分の首を絞めかねません。立場上「十分」と答えるのは当然といえます。

このほか栃木県では初年度、クラス40名の生徒がに一斉ネットワークに参加するだけで、学校の回線がパンクしてしまい使えないなど、不備・不具合も多々あったと聞きます。こうした環境で、IT分野の優れた人材を本気で育てようというのでしょうか… 甚だ疑問です。

迷走に至るプロセス

DX推進の目的のうち「経済を活性化させる」ことについては現状、サービスの関連企業が潤うなど成果を得ているのかもしれません。しかし「デジタル技術で便利な社会にする」ことについては、実現できているとはいえないでしょう。そのことが、先に示した国際順位に反映されていると思います。

マイナンバーもGIGAスクールも、莫大な費用が投じられているはず。しかしその成果、対費用効果は、世にある様々な民間サービスなどに比べ、極めて貧弱です。明らかに、手段だけが一人歩きしており、目的=利用者の利便性を高めることが疎かになっています。私がレビューするなら、星1つです。

DXが進まない理由については諸機関が様々な要因を掲げています。そうした要因に加え、マイナンバーやGIGAスクール構想といった、国が主体となり取り組むサービスが迷走に至るプロセスについて、私は次のように想像します。

  1. 主宰組織においては当該DXサービスの展開にあたり、組織の重要ステークホルダー;(時として、いわゆる利権議員・御用学者・これらと関係を持つ企業スポンサーなど)が委員を務める検討委員会を開催。関連業者がプレゼンをして承認を受け、組織の理事会等で、DX導入の方針が定められていく。

  2. 主宰組織は「正当なプロセスを経てサービスを導入した」と説明できれば良い。関連業者は自社に儲けがでれば良い。組織の担当者は、自分の立場に沿った役割を果たせれば良い。現場の声よりも、組織や業者に都合の良いロジックが優先され、サービスが構築される。

  3. 利用者は、そのようにしてできあがった「不完全」で「非効率」なサービスを押しつけられても、同じような事態がこれまで繰り返されてきたため慣れ過ぎており、呆れはするが今更ながらに反発することはない。

あくまでも個人の想像ではありますが、サービスを提供する側と現場が乖離し、連動できていない状況があるものと考えます。

結びとして

一般には、マイナンバー、GIGAスクール構想、そしてJAAF‐STARTなどについて、例え不満があっても表面に出さず、黙って「大人の対応」に努めるのが賢明であると思います。

ただ、私は日本でDXが進まない要因のひとつに、利用者がはっきりと不満の声を上げないこと同調圧力を感じるなどにより現場の声を表に出さないこと なども、大いに影響があると考えます。加えて、以下に示す私個人の信条を踏まえ、今回、DXについて考えるところを記事に起こした次第です。

最後に;JAAF‐START のサービス改善・充実を、心より祈念いたします。