COMME des GARÇONS HOMME のブロード白シャツ【着る】
「白いブロードのシャツなんて、ユニクロも無印も、どれも同じだよ。」
と言われたら、確かに、そうなのかもしれない。少なくとも記号的にはそうだ。白ブロード、レギュラーカラー、胸ポケット、カジュアルシャツ。どれも同じだ。ユニクロや無印良品に限らず、白いシャツを着るとき、常にこの命題を突きつけられる。「白シャツなんて、どれも同じさ。」
でも私はCOMME des GARÇONSのシャツを着よう。それは他にはないシャツだから。自分の好きな要素を探していったら、このシャツに行き着いた。それだけのことだ。
デザインというのは、「選択」の集積によって、自ずと立ち上がってくるものだと思う。目につきやすい表層的な表現だけではなく、その服を作った人が何を選択してきたのか、その過程こそがデザインを生み出す。その軌跡がまさにプロダクトなのだ。(と、個人的には思っている。)
COMME des GARÇONSのメンズラインのシャツに多く見られる特徴。
小ぶりなレギュラーカラー(たまにワイド気味な襟やスタンドカラーも見受けられるが、一番多いのはおそらくレギュラーカラー。)
低い台襟
前見頃のボタンは6つ(HOMME DEUXのドレスシャツはどうなんだろう?)
第二ボタンは高い位置にある
裾はやや長い
ギャルソンのメンズラインは基本的に「ドレス」(スーツ)がベースにあるが、それを上手くカジュアルにずらす。例えばCOMME des GARÇONS SHIRT 2023SSのルックを見ると、シャツは全てタックアウトしている。第一ボタンは閉じたり開けたり。
ギャルソンのシャツは、第一ボタンを外し、タックアウトで着るとき最も美しいと思う。というか、好きだ。
先述したギャルソンメンズラインのシャツの特徴、低い台襟と第二ボタンが高い位置にあること、そして小襟なので、第一ボタンを外したとき控えめに開く。
ドレスシャツの第一ボタンを外すときとは印象が異なる。ドレスシャツは本来ネクタイを締めることが前提のパターンなので、第一ボタンを外すと「本来の用途と違って」しまうため、違和感を与えてしまう。つまり「だらしなく」見える。(スプレッドカラーなら大丈夫。)
ギャルソンのシャツは第一ボタンを閉めるのも好きだが、第一ボタンを外して着てもサマになる。計算されている。
だが、それだけではない。ギャルソンのバランス感覚がすごいところは、レギュラーカラーであること。
第一ボタンを外したとき控えめに開くことは先述したが、もしこれがスプレッドカラーなら。確かにカジュアルシャツではあるが、カジュアルに「寄りすぎて」しまうのではないか。ドレスシャツに多く用いられるレギュラーカラーであることによって、カジュアルにずらしつつ、ドレスの良さを残すことが可能になる。
更に、裾はやや長い。普通、カジュアルシャツは裾が短い。タックアウトが前提だから。だが短すぎるとカジュアル感が強くなる。ギャルソンは丈を長めに残すことを選択することで、あくまでベースはドレスであることを思い出させてくれる。また、スクエアヘムのアイテムはあまりなく、ラウンドされていることが多い。これもドレスシャツの特徴だ。
ギャルソンのベースはあくまでドレスだ。その良さを残しつつカジュアルに着ることができる。
このシャツは定番のアイテムだ。「パッカリングシャツ」と言われることが多い。薄い生地に太めの糸で縫製するので、生地にテンションがかかり、生地がつれる。これはカジュアルの要素。(特にワークの文脈。)
ドレスの要素はどこまで残すか。カジュアルな要素はどこまで入れるか。その選択の集積がこのシャツをこのシャツたらしめている。
ここで私はナチュラルという言葉を思い出した。そうだ、ギャルソンはナチュラルなんだ。
COMME des GARÇONSといえば、通常モードブランドとしての側面が取り上げられる。モードへの叛逆だったり自由といった言葉で。だが、その根底にあるものは。
初版が1987年なので、今のCOMME des GARÇONSと全く同じことはないだろう。だが、「ナチュラル」という言葉をこの本の中で見つけたとき、妙に合点がいった。ナチュラルであるから、既存のモードにとらわれない価値観を提示することができ、自由が永遠のテーマになる。
シャツは堅苦しくなくていい。ナチュラルに着よう。
でも、ドレスの魅力も忘れない、このバランス。だから私はCOMME des GARÇONSが好きだ。
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