#10 社長が経営でこだわる「存続すること」
弊社代表のヌマオは38歳のときに大企業の会社員を辞め、オンラインショップのNUTSを立ち上げました。それから25年間、自らの会社を経営しています。
中小企業庁のデータによれば、ベンチャー企業の20年後の生存率は0.3%だそう。20年以上会社を守り抜いてきたヌマオの、“経営哲学”たるものはどのようなものなんでしょう。
今回は、NUTSの経営でヌマオが意識してきたことについてうかがいました。どんな想いが吹き込まれ、お店が続いてきたのかを知ると、ものを買うという行為もまた違ったものになりそう。
<話し手:NUTS代表 ヌマオ/聞き手&考察:note編集担当 カタヒラ>
●こんな人におすすめ!
・経営に興味がある人
・お買い物が好きな人
・NUTSでお買い物をしたことがある人
経営で大切にしてきたのは「存続すること」
まだオンラインが浸透していなかった90年代から25年間。 ヌマオさんはNUTSとしてECを経営してきました。すでに連載でもお届けしてきた通り、会社にとって逆風が吹く、苦しい時期もありました。それでも諦めずに経営を続けてきた背後には、どのような想いがあったのでしょうか。
「有名な経営学者のピーター・F・ドラッガーの名言に、“企業にとって第一の責任は存続することである”というのがあります。僕は会社の経営において、これを一番意識してきました。何よりも、存続し続けること。
やっぱり“会社”というものには、色々な人が関わるじゃない 。お客さん、従業員、取引先、あるいは生産者がいる。規模により程度はあっても、どんな会社も人との関係が不可欠です。
この関わり合いの中で、もしも企業がぽんと潰れてしまうことがあれば多大な影響がある。だから、第一に『存続し続けること』だと思ってここまできました。
爆発的な成長で富を得ることより、業績が悪くなったとしても、会社が残る方法を探していた。
存続を第一優先にしたとき、例えば代表が退いた方が良いと判断できるなら退くことも正しいと僕は思います。
知り合いに父親の建設会社を継いだ友人がいるんです。従業員が100人規模の会社。建設業界って浮き沈みが激しいでしょ。それで、去年から今年にかけてはコロナで他の建設会社が厳しい状況に陥ってしまうのをみて、自分の会社の将来を見つめ直したんだって。
それで、どうすれば会社を存続できるのか考えた。その結論は、もっと大きな会社の傘下に入るということ。つまりM&Aだね。
大きい会社は当然、資金力が膨大にある。コロナ禍で先が見通せなくても、ある期間は生き延びることができるじゃない。だからその大企業の下に入れば、会社としては残ると考えたんです。
まあ、傘下に入ったことで“雇われ社長”になったから、それはそれで大変らしいけど(笑)」
存続させることの意味と難しさ
「会社を続けていると、自分が想像している以上にNUTSを知ってくれてるお客さんが沢山います。もう、20年以上も続けているしね。NUTSでお買い物をして覚えてくれてるお客さんは、実はすごい人数いるんです。
まあ、会社が無くなってしまうこと自体が寂しいのは当然のことだし、そもそも長く続いているものが好きなんだよね、何にせよ。長く続くものって大変な局面をいくつも乗り越えてきた背景が必ずあるじゃない。そんな歴史みたいなものが、僕には魅力的に映る。
要するに、長く受け継がれてきたものが好きなんだと思う。今回、NUTSの店名を少し変えたじゃない。正式名称を『物語のある雑貨店NUTS』に。物語があるってことは歴史があることだから、そういったことを示す名前にしたかったんだよね。」
このヌマオさんの経営哲学については、何も言うことがないというか、いち労働者や消費者から見た経営者の理想像のようなお話で、何度読み返しても尊敬の念しかありません。
唯一ここで考えたのは、“存続を意識した経営”って難しいのではないかということ。
前に何かで『人生とは自分自身を経営することだ』という表現を目にしたことがあります。経営経験がない私は、そんな角度から少し考えてみました。
人生を成功させたいと考えるとき、何をもって成功かという話はさておき、切っても切り離せないものはお金だと思います。お金がなくても楽しめることはたくさんありますが、やっぱり何かに挑戦するときはお金とのバランスが重要だと思うのです。
例えばスキルアップのために、資格を取ることを考えたとします。試験に向けて、高額な講座を受けているのに全く身に入らない。それで試験に落ちてしまっては高額な受講料が無駄になってしまい、それで何回も試験に挑戦できるかといえば難しい場合もあります。
そんな風に何かに挑戦するとき、手段とお金を天秤にかける必要があると思います。お金がなくなっては、自分で決めたプランの継続を諦めることになるかもしれません。
人生の経営をするときに、どうお金を配分すればやりたいことを続けられるのか。どうしたら自分のライフプランを存続させられるのか。そんなことがすぐに判断できるなら、多くの人は生き方に悩んでいないはず。
こう考えていくと、ヌマオさんの存続させる経営の体現力は簡単に真似できるものではないのがよく分かります。そして9割が中小企業の日本で、老舗と名乗れるほど長く続く企業があるのって本当にすごいことなんですよね。
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