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ビジネス書が嫌いだったけれど|独立日記 本屋への道064

2025.2.14(金)

出社前に、メルカリを確認して発送作業。めんどうくさいんじゃないかと心配していたけれど、慣れてしまえば苦でもなく、むしろこんなに楽しいとは意外だった。売っているのは、ビジネス書やハウツーが中心なのに……。

書店に勤めていた頃、私はビジネス書が嫌いだった。本というのは小説や芸術書のことだと思っていたからだ。ビジネス書や実用書は、本だと思っていなかった。20歳そこそこの頃。思えば若かったのだろう。本は自分の好き嫌いをはるかに超えて、裾野を広げていた。

今では実用系書籍も自分で買って読むぐらい好きになった。うん。好きというと、ちょっと違うかな。必要とする経験をしたのだ。教科書のようなものだと知ったというか。社会に出て闘うときの武器になったり、生活の可能性を広げてくれるものだと知った。

そしてビジネス書を売っていた時の感覚を思い出した。「このジャンル売れてたなぁ」とか「あのジャンルの専門書はヒットは出づらいけど、必ず棚の前で吟味しているお客さんがいたな」とか「毎朝来てくれたスーツ姿の2人連れのサラリーマンは、今どうしているだろうか」とか。

お客さんだけでなく、営業さんのことも。私が出会ったビジネス系版元の営業さんたちは、明るく元気でフレンドリーな方が多かった。気さくな雰囲気に、私はだいぶ救われていた。

どういう人が何を探していたか。誰がつくって売ろうとしていたか。読者や作り手の顔が、記憶の底からぼんやり浮かび上がってきた。ふとこの感情を思い出したときに気づいた。私はビジネス書を売ることに、心も体も慣れているということに。好き嫌いを越えた商売の感覚が、まだ自分のなかに残っていた。

少しずつ、本屋になっていく。いや、思い出していくような日々。

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