労働

久しぶりに外で働くことになった。
コロナ禍のあいだ引きこもっていたので、私はどうやら丸3年外で働いていなかったらしい。(在宅の仕事は少ししていた)

業務はとある店舗のごく簡単な清掃で、簡単すぎてマニュアルすら存在しない。特殊な道具も使わないし、掃いて拭いて掃除機をかけるだけ。制服もないし服装規程もない。ネイルも自由。
お金の計算などもしなくていいし、1人で黙々と作業をして日報を書いて帰るだけ。研修で簡単に説明を受けたが、先輩2人とも優しく、とにかく「楽な仕事である」ことを強調された。
「自分の好きなやり方でやっていい」「終わったら決められた時間になってなくても帰って良い」「何なら途中で休んでてもいい」などなど。

しかし、楽な仕事であることを強調されればされるほど、私は不安になっていった。
疑り深い私は、楽なのに人手不足ということは何か罠があるのではないか?と考え始めたのである。
1人で作業をするのは気楽だが、何かわからないことがあってもその場で誰かに質問できないということでもある。1人でいるときにとんでもない失敗をしたらどうしよう、それを後で偉い人に怒られたらどうしよう……。

採用が決まったその瞬間から冷や汗と腹痛と不安発作に襲われた私は、研修してくれたギャルの先輩に不安をそのまま伝えた。するとギャル先輩は「怒られないっす、大丈夫っす」とフォローしてくれた。ギャル先輩はとても優しかったが、今月いっぱいで辞めてしまうらしい。ギャル先輩のリラックスした佇まい(コンビニにフラッと買い物に来たような部屋着で仕事をしていた)は私を大いに励ましてくれたので、できれば辞めないでほしかったが、こればかりは仕方ない。そもそも彼女が辞めるから人員を補充するために私が雇われたのである。

ともかく、労働である。
久しぶりの労働で胸がドキドキする。あまりにドキドキするので、病院で抗不安薬を少し強めのやつに変えてもらった。
皆が口を揃えて「楽」と言う仕事なのに、薬を飲まないとできないのは一体どうしてだろう。それは自分がメンタルを病んでるからです、ハイ。
短時間なのでさほど稼げないが、それでも収入は収入、労働は労働である。
一瞬でクビになったり、一瞬で音を上げてバックレたりしたら、このnoteに書くネタにしようと思っている。

どうでも良いことだが、研修で一番嬉しかったのは「トイレがずっと壊れたままなのでトイレ掃除はしなくていい」と言われたことである。

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