The Beatles 全曲解説 Vol.70 〜Everybody’s Trying To Be My Baby
野性味ある訛りが階級をも超える! “Everybody’s Trying To Be My Baby”
『Beatles For Sale』14曲目(B面7曲目)。
ジョージがリードボーカルを務めるカバー曲です。
オリジナルは、カール・パーキンスによる1957年のナンバー。
パーキンスの楽曲は、これまで “Matchbox” “Honey Don’t” とリンゴがカバーしてきましたが、この曲ではジョージがアルバムのトリを飾る形で歌います。
歌詞の内容はビートルズのレパートリーでも珍しい、いわゆる「モテ自慢」。
とりわけ自分をサゲてしまうような、しょんぼりした内容の楽曲が多い『Beatles For Sale』としては異色の選曲と言えます。
やはりライブと同様に、派手に楽しく締める!というのが流儀だったのでしょうか。
ところでこの曲では、「ビートルズがなぜこれだけ多くの人に受け入れられたのか」という問いの、一つの答えを見出すことができます。
この曲のサビ「♪Everybody’s trying to be my baby〜」の繰り返しを聴いてみると、「Trying」を「サー」と発音していることがわかりますよね。
これはパーキンスのオリジナルでは聴かれません。
ライブ音源を聴いてみても同様なので、これはひとつの「訛り」であることがわかります。
実はこの「訛り」こそが、ビートルズの人気獲得の要因の一つであると言われています。
階級意識の強かった当時のイギリスのショービジネスの世界では、公の場で話す俳優や司会者などは、上流階級の英語を話すことが普通でした。
ところが、労働者階級出身のビートルズの4人は、そんなトレーニングを受ける間もなくデビューしたため、生まれ育ったリバプールの訛りをお構いなく使い倒します。
当時のイギリスの若者達には、それが新鮮で、また親しみやすく映ったそうです。
ちょうど現代の日本でいうと、お笑いの千鳥やミュージシャンの藤井風などの影響で、岡山弁が全国区になるといった感じでしょうか。
当時のイギリスでは階級という壁もあった訳ですから、衝撃度はそれ以上だったことでしょう。
ここから世界に「愛」のメッセージを届けることになるビートルズですが、音楽だけでなく、言葉でもボーダーを打ち破っていったことがよく分かります。
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