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【激怒】あのスポーツの扱いに大いに怒る【水球】

俺は今、猛烈に怒っている。

某スポーツに対するメディアの扱いに対してだ。

10月12日から14日にかけて新潟県柏崎市にて開催された、水球の日本選手権
3日間、男女合わせて16チームが鎬を削り、最終日には1000人近くが会場に詰めかけるなど、熱気あふれる雰囲気の中閉幕した本大会。
さぞかし翌日は各報道がこの盛り上がりをこぞって伝えてくれるだろう。
そう思って俺も家観戦を終えた。

ところが、だ。

は????????????????

4行????????????

ごめん、4行?????????????????

さらにスマホをスクロールして気づいたのだが、

この共同通信の報道はまだ良心的な方で、
他スポーツ紙は、本大会の結果にも試合内容にも、一切触れていない。
新潟日報などのローカル紙が多少触れた程度だ。

五輪に3大会連続出場中。アジア大会では53年ぶりの優勝。
さらには世界大会で優秀選手選出常連のエースがいる。
そんな競技のトップゲームたる日本選手権をほぼ全無視とは、
ええ度胸しよるのうお前ら!!

ということで自分自身経験していたこともあり、多少この競技に思い入れのある自分が、現在の日本水球の魅力を語ってみたい。

残念ながらよく知らない方が多いのが現実だとは思うが、水球はヨーロッパでは「King of Sports」と呼ばれ、Jリーグやプロ野球に匹敵する人気を誇り、歴としたプロリーグも存在する。

深さ2mを超えるプールで常に立ち泳ぎをし、
鍛え抜いた身体で華麗に水を舞いながらボールを運び、
ポジション争いでは激しいぶつかり合いも展開される。

スポーツに必要な心技体を全て極めなければプレーすることすら覚束ない、そんな途方もない競技なのだ。

ご覧の通り、ひとたびプールに目をやれば、そこに人間はいないということがわかるだろう。
いるのはただ、遺伝子レベルで「ゴール」という瞬間に飢えた、血みどろの野獣たちのみである。

ヨーロッパのプロ選手たちは体格が大きく、2mを超えることもザラだ。
ボールはバレーボール大と小さくはないが、彼らはモノともせず80km/h近くの猛スピードでゴールに叩き込む。
ルール上、片手でしかボールを扱えないにも関わらずだ。
プレーもアグレッシブで、プールサイドで笛を吹く審判に見えないよう蹴ったり殴ったり、果ては噛みついたりなど日常茶飯事である。

そんなヨーロッパの豪傑たちに、近年の日本代表は文字通り対等に渡り合っている。
世界大会では、目標としているベスト8こそ届いていないものの、リーグ戦ではメダル常連のチームと接戦を展開し、度々勝利を収めてもいる。
2000年代までは同じアジアの中国やカザフスタンにすら歯がたたない状態だったと言えば、日本水球の急速なレベルの上がり方がわかるだろう。

躍進のきっかけは、ヨーロッパへ武者修行に出る日本人選手が増えたと共に、日本ならではのスピードを生かした戦術「パスライン・ディフェンス」を生み出したことだ。
体格で勝る相手のラフなプレーに付き合わず、いち早く身体を乗り出してボールを奪いカウンターで一点をもぎ取る。
「1-0」で勝つのではなく「14-13」で勝つ、肉を切らせて骨を断つ点の取り合いに持ち込む戦法だ。

(Numberはよく水球を取り上げてくれるが、それでも少ない方だ)

この戦術を確立させてから、日本は2015年に32年ぶりの五輪出場を決め、2018年には五輪や世界水泳と並んで権威のある「ワールドリーグスーパーファイナル」で初のベスト4となった。
2019年にはラグビーがワールドカップで注目を浴びたが、ラグビー日本代表よりも前に、さらにすごいことを彼らはやってのけているのである。

パリ五輪では、優勝したセルビアに1点差まで肉薄するほどの白熱したゲームを披露し、現地は興奮の坩堝と化した。
今や水球日本代表は、本気で世界の頂=金メダルを目指して研鑽を積んでいる。
そんなチームの面々が一年に一度、一堂に会するのが日本選手権の場なのである。

日本代表選手の主な所属先は、以下にあげる2チームである。

<IKAI・Kingfisher74>

日本選手権6連覇中の最強チームである。
日本体育大学のOBチームである「全日体大」を前身とし、現在は他大学出身者も受け入れているものの、なお同大出身者が多い。

過去に日本代表キャプテンも務めた大川慶悟を筆頭に、現代表キャプテンの鈴木透生、強豪国ギリシャでプレー経験のある高田充・荒木健太、天才的なシュートセンスを持つ足立聖弥、競泳トップ選手も顔負けのスプリンター・渡邉太陽など、若手からベテランまで多彩な特徴を持つ選手が顔を揃える。

とにかく国内では圧倒的。
日本選手権は水球日本トップレベルの大会であるにも関わらず、初戦では20点以上の差をつけて勝利を収めることなど朝飯前。
面白いように点を決めていく様が、見ている側からも気持ちがいい。
水球の爽快でスピード感あふれる側面を、存分に見せてくれるチームである。

<ブルボンウォーターポロクラブ柏崎>

新潟県柏崎市は、1961年に水球の国体会場となったことをきっかけに、「水球のまち」として街ぐるみで競技をバックアップしている。
そんな柏崎に2010年に立ち上がったのが同チームで、現在では男女問わず、小学生から社会人まで一丸となって日本水球の礎を支えている。

日本選手権では2012年と2018年の2回優勝しており、Kingfisherに唯一対抗できる国内水球チームとして有名だ。
近年の五輪3大会全てでメインキーパーを張る、髭がトレードマークの棚村克行、同じくリオ・東京の2大会でセンターフォワードとしてチームを引っ張った志水裕介、パリで初代表選出の新田一景といった個性的な選手が多い。

何より大きいのは、日本代表でもエースとして活躍する稲場悠介の存在だ。

稲場こそ日本水球の至宝、大谷翔平・井上尚弥と全く同じ次元で語られるべき存在である。

現在は世界の水球界でも各国からトップ選手が集まる最高峰のプロリーグ、イタリア・セリエAのチームでプレーする稲場。
今年の日本選手権は、最終日の決勝戦に出るためだけに、12時間のみ滞在の強行スケジュールで凱旋し、素晴らしいプレーを見せてくれた。

18歳で代表入りした稲場は、代表一年目からモンスター級の暴れっぷりを見せる。
代表入り直後の2018年、ワールドリーグスーパーファイナルでいきなり得点王に輝き、そこから3年連続でその座を維持した。
19年にはFINA世界ジュニア選手権でMVP。その時日本チームは8位だったのだが、優勝チームのメンバーを差し置いてのMVPだ。

今年のパリ五輪では、予選リーグ突破こそならなかったものの、メディア関係者の選ぶベスト7に抜擢され、得点ランキングでも3位に食い込んだ(決勝トーナメントも戦った国を含めてである)

ヨーロッパ系の競技でアジア人がここまでの評価を受けることなど、これまでの水球界ではあり得なかったことだ。
それほど稲場の傑出度はとんでもないものなのだ。

20歳の頃、小学生時代の稲場の試合を見たことがある。
大阪で開かれたJOC主催の水球の全国大会で、俺はアルバイトスタッフとして試合の記録係の席にいた。
そこで、目の前で稲場がプレーしていた。

蝶のようにプールを舞い、蜂のようにゴールへボールを突き刺す。
モハメド・アリのような戦いぶりは、彼の小学生時代から際立っていた。
小学生の中に一人だけ高校生の、しかもトップ選手が混じっているような様子。

「こんな凄え子がいるんだ…」
あまりの衝撃に記録シートを書く手も止まり見入っていた。
大学生のくせに、あれをお手本にしたいと思わされたのはここだけの話。

20代に入り、世界のトップ選手となった今も、プールを泳ぐ稲場はまるで少年のように目を輝かせている。
大谷や井上もそうだが、現代の一流とは、とことん「純粋」であり続けることなのではないか。
そう思わされる屈託のなさで、観るものを魅了し続けている。

そんな稲場をはじめ、上記に挙げたチームの他にも、魅力的なチーム・選手の活躍を存分に楽しめるのが、一年に一度の日本選手権。
水球がマイナースポーツなどという偏見は一度綺麗に捨て去って、スポーツが好きな人は全員観るべきだ。
これまで見てこなかった悔しさに、地団駄を踏むほどの興奮を味わえるはずだ。


とまあ、専業記者でもない俺がここまで熱く書けるのに、なんでスポーツ記者の皆さんは「スウジ」の取れる競技ばっかり追っちゃうのかなー。
日本選手権、せっかくライブ配信の動画も残ってんのになー。

あぁーあ、もーったいないなーーーー!!


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