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subarasikiai
その⑮『マリオブラザーズ』
あまり(睡眠中の)夢を人に話すものではない、と心理学の本でよんだことがある。だから最小限にとどめよう。筆者が記憶している人生初の夢は、幼稚園時代より前のこと、サンタクロースにまつわるものであった。なぜこのような話をするかというと、後につらい少年時代の苦しみを紛らわせてくれたのが他でもないファミコンで、クリスマスに手に入れたからである。そしてそのとき最初にプレイしたのが本作、『マリオブラザーズ』であった。
もともとゲームセンターで見かけて憧れていた本作が、家で遊べる! そのころ家庭用ゲーム機市場は未発達だったから、ファミコンが他機種を蹴散らすことは筆者には明らかだった。ゲーム審美眼(?)だけは達者だったのだ。誰もそんな予測はしていなかったけれど、案外ほかの子どもたちもその辺は見抜いていたのではなかったか。
小学五年のクリスマス。「RFスイッチ」という器械をテレビの裏側につけて、試行錯誤。画面になにも映らない。端子をさしなおしたり、電源を入れ直したりで十数分は経っただろうか。息を呑む。映った! マリオと弟のルイージが、画面を走っている。ボタンを押せば、ジャンプする。コンピュータ的なBGMも特徴的だ。そしてそのとき、気がついた。外の闇に、雪がちらついていたのだ。どうしてカメやカニ、ハエを蹴散らすのだろうと考えていると、一緒にプレイしていた姉が言った。
「ホワイトクリスマスやねえ」
いま思えば本作もファミコン自体も雪のクリスマスも、やさしいサンタクロースのプレゼントだったような気がする。
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