寂寞と福音
初めてひとり旅に出ようと思ったのは、24歳の時。
『世界で1番タフな24歳になる』と決めたからである。行き先は東北。鉄路で行くことのできる北限を目指した。
春はすぐそこと考えていた3月半ば。私が甘かった。私は生まれて初めて背丈以上の雪を目にした。
本州の北限・三厩駅を目指す。北へ北へ。雪降りしきる真白な世界、灰色の海、車内から眺める景色、心細さに寂寞という言葉が浮かんだ。そして、この真白と灰色の世界で死にたいと願った。
列車は北限に着き、海を見るため近くの港へ。灰色の海を眺めていると、その瞬間は訪れた。
分厚い雲の隙間から、ほんの少し太陽が覗いた。
その瞬間、それまで刺さるような寒さが少し柔らかみを帯びた。それはまるで、福音が訪れたようだった。キミはキミのまま生き続けろと。
寂寞を抱え、たどり着いた世界。
旅に出る度思い出す。そして、今日も生きる理由を探すだろう。