心理学とは何か?
心理学とは何か?
一般的に何々学という言葉が使えわれるのは、研究・観察の対象と、研究するための方法、およびその対象をどのように説明するかについての基準までもが意味している。
例えば、物理学では、対象は物質であり、科学的な観察や実験、測定が方法として用いられる。ニュートン力学などの様々な理論から因果的に物理現象を説明する様式が使われる。
では、心理学では、どうだろうか?心理学を精神の科学であると仮定すると、科学は客観性を重視するので、主体的体験としての精神は対象になり得ない。そこで、科学を志向する心理学では、観察の対象を「行動」とし、そのような行動がなぜ発生するのかを説明するために「精神」を想定するという立場をとる。すると、このアプローチでは、「精神」は仮説に過ぎないのである。なお行動とは、広義には、その時々の環境条件において示される生体の運動や反応、変化を意味している。
例えば、「クマ」という環境刺激に対して「クマとは反対方向に走る」という行動をとっている人がいるとする。この行動を説明するために、観察者からこの人はクマを見てそれがこの人にとって「恐怖」を引き起こして、このような行動が現れたと解釈する。「見る」も「恐怖」も主観的経験であり、私たちが日常に使う「心」というときは、この主観的体験を意味している。もちろん「恐怖」は様々な神経系の興奮の伝達としてならば観察可能である。したがって、主観的をより排除したいと思えば、主観的経験に言及することなしに、神経系の連鎖としてクマという刺激から「走る」までを因果的に結びつけることは可能かもしれない。
ところが、多くの人々が心理学に期待することは、「精神」事態を説明することである。なぜ、「恐怖」という主観的経験をするのかが知りたいわけである。実は、これは、心理学において最も解決が困難な問題である。「精神」は神経過程あるいは脳の過程である、しかし、この神経の興奮という物理的あるいは化学的な反応から、どのようにして私たちの主観的体験が生まれるかは永遠の謎なのである。