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看護師教育の課題と未来への提案:実践力とアセスメント能力の育成

看護師として現場に出る際、看護学校での教育だけでは不十分であると感じることが多くあります。

これは、看護学校では国家試験合格に向けた理論学習が重視され、侵襲的な処置の練習や現場での実践経験が限られているからです。

しかし、看護師の仕事は「本番環境」で患者の命を預かることが主であり、失敗が許されない厳しい現実があります。

今回は、私自身の経験をもとに、看護師教育における現状と、必要な改善点について考察します。

1. 看護学校での実技練習の限界

看護学校では、侵襲的な処置(例:注射や導尿)の練習が限られており、初めての実践は現場で患者を相手に行うことが多いです。

これは、初めのうちは先輩看護師の見守りの下で行われるため、評価を受けながら自分の課題を見つけやすく、事故につながりにくいという側面があります。

しかし、これだけでは十分ではなく、看護師になる前にもっと身につけるべき能力があります。

2. 患者状態のアセスメント能力の重要性

看護師になってから最も大きな課題の一つが、患者の状態を正確に把握し、次に取るべき行動を理解する能力です。

異常値と正常値の区別は看護学校でも学びますが、その背景にある理論や、なぜその値が異常なのか、またなぜその値が正常なのかといった判断が現場で非常に重要です。

異常値に気づくだけでなく、正常値であっても患者の状態が変化していないかを見極める「違和感を感じ取る」能力が不可欠です。この違和感を見逃すことが、大きな事故につながるケースも多いため、基礎的な知識と現場での経験の両方を持つことが必要です。

私は看護師になってから、患者のバイタルサインや症状から次にどう行動すべきかが全くわからない状況に直面しました。

看護師は、患者の状態を基にアセスメントを行い、適切なケアを提供しなければなりませんが、現場ではそれがすぐにできるようになるわけではなく、時間をかけて経験を積んでいくことが必要です。

3. 看護実習でのギャップ

看護実習では、アセスメントの重要性が強調されますが、実際の現場で通用するかどうかには課題があります。

看護実習は、患者とのコミュニケーションや精神的なサポートに多くの時間を割くことが多く、名目上は急性期や慢性期、精神といった領域で分かれていても、実際の学びは主に精神的なサポートに偏りがちです。

そのため、身体的な異常に対する判断力や、生理学的な知識をもとにした行動計画を立てる能力が不足してしまいます。

4. 学習方法の提案:エビデンスとガイドラインの理解

看護師には膨大な医学知識が求められるため、全てを学校教育で網羅することは不可能です。

しかし、命に関わるリスクの大きい問題に絞り、エビデンスやガイドラインの理解の仕方、学習の進め方を教えることが非常に効果的だと考えます。

これは、釣りの仕方を教えて魚を取らせるように、自己学習を効率的に進められる能力を育むことです。

看護実習でこのようなアプローチが行われている部分もありますが、個人の自己学習に頼る部分が大きく、実習で得た知識が現場で十分に活かされないケースが多いです。

5. ケーススタディとフィードバックによる学習強化

看護実習で学んだことを補完するためには、ケーススタディが有効です。

実際の症例をもとにアセスメントし、フィードバックを通じて知識を整理し、行動計画を確認することで、実際の現場で即座に適用できる力が身に付きます。

ケーススタディは、実際の現場でのシナリオをシミュレートし、アセスメントを行う良い機会を提供します。ケーススタディを通じて、現場で直面するさまざまな状況に対する対応策を学ぶことは、新人看護師にとって非常に有益です。看護師として現場に出る前にこのようなケースを多く経験することで、実際の患者に対してもより自信を持ってアプローチできるようになると考えています。

また、ケーススタディを行うことで、エビデンスやガイドラインをどのように現場で適用するかを学べるのも大きな利点です。看護技術だけでなく、判断力を養うことが患者の安全を確保する上で重要です。

また、「自己学習しなければならない」というプレッシャーを与えるのではなく、患者の命を預かる立場として、命のために知識を身につけてもらうという意識を持った教育が重要です。

6. 楽しさを感じられる学習へのアプローチ

学習は理解が進まなければ苦しいものですが、理解できれば楽しくなるものです。

看護師としてのキャリアを通じて、自己学習が楽しくなるのは時間が経ってからのことが多いですが、初めからしっかりと理解を深め、楽しさを感じられるようになる教育体制が必要です。

看護師の仕事は非常にプレッシャーの多い職業ですが、学習が楽しくなれば自己学習も進みやすくなります。これは他の職業でも同様で、「理解することが楽しい」と感じられるようになれば、学習意欲が自然と湧き、自己学習が習慣化するはずです。

現場に出る前に基礎をしっかりと固め、学びが楽しいと感じる段階まで指導を行えば、その後の自己学習もスムーズに進むと考えています。


今すぐできること:オンライン学習プラットフォームの提案

看護学校のカリキュラムは、すぐに変わるものではありません。

そこで、私は現場で必要とされるアセスメント能力や知識を補完するためのオンライン学習プラットフォームの提供を考えています。

このプラットフォームでは、実際のケーススタディを通じて、アセスメント能力を養い、フィードバックを得られる仕組みを提供します。

看護師が現場に出る前に、より自信を持って患者の状態をアセスメントし、適切な行動を取るための学習環境を整えることで、看護師の成長をサポートし、ひいては患者の命を守ることができると信じています。

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