ヘヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル
ダサさのアイコンとして使われがちなヘヴィメタル。
みなさんはヘヴィメタルにどんな印象をお持ちでしょうか? 肩まで伸ばした長髪、鋲付きの革ジャン、グロいイラストの黒Tシャツ……。
女ウケどころか、大多数の人たちから敬遠されがちなファッションです。
人の多い都会であれば目だたないのかもしれませんが、フィンランドのド田舎が舞台のこの作品、いかにもヘヴィメタルをやってます風な主人公は地元の若者から「ホモ野郎」呼ばわりされています(髪が長いから)
●眩しすぎる主人公が苦手な僕には。
個人的な意見なんですが、ぼくは青春部活ものって苦手なんですよ。キラキラしすぎていて。バスケやサッカーなどのメジャーなスポーツで友情を深めあい、勝利する物語なんて目を背けてしまいます。マイナー競技の百人一首を扱った「ちはやふる」ですら、主人公やまわりの人たちが眩しすぎて直視できません。
澱んだ目をした長髪のヘヴィメタル然としたアラサーくらいが主人公でちょうどいいんですよ。
抑圧された若者たちの魂のシャウト
主人公たちはメンバーの家に集まって練習をするだけで、ライブをしたことがないんですよ。それも十年間。
メンバーたちはそれぞれ介護施設、図書館、トナカイの屠殺場などで仕事をしていて、くすぶっている感じがします。
演奏技術はちょっとしたものなのですが、オリジナル曲すら作ったことがない彼らは一曲だけ完成させます。ひょんなことからノルウェーでフェスをやっているプロデューサーにテープを渡すのですが、なぜか村中にその話が伝わり、ノルウェーでフェスに出るという話になります。
ノルウェーにたいして畏敬の念があるのか村人たちの手のひら返しも凄いのですが、プロデューサーからは「曲はイカしていたけど枠はなかったから今年は無理」と言われ、村人たちの前のライブでも大失態をおかします。
バイキングの末裔たるバカさ加減。
失意の底、とりあえずメンバーたちはノルウェーへ向かうことにするのですが……。
後半はドタバタロードムービーになり、スピード感とバカさ加減が素晴らしい。そして北欧の景色が無駄に美しい。森と崖ばっかりで素晴らしい。
ふつう、こういう音楽映画って、ちょっと感動的な歌詞とかが字幕で出たりするのですが、それすらもなかった。北欧メタルというからイングヴェイやヨーロッパみたいなメロディアスな音楽を想像していたのですが、もっとゴリゴリのメタルというか、低音のデス声で唸っていました。
こんな人におすすめ。
エミネムの『8Mile』よりも『SRサイタマノラッパー』が好きな人。
クイーンの『ボヘミアンラプソディ』よりも『スクール・オブ・ロック』が好きな人におすすめです。
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