家業と就活
私の家業は旅館だった。
「だった」というのは私の父の代で暖簾を下ろしたからである。
うちは倒産ではないため、今は古い建物を全て取り壊して更地にし、他の企業に貸し出している。あと50年は今の企業がいてくれる。
しかし、50年後には今ある建物を取り壊し、新しく企業を誘致する必要がある。その頃には私は70のおばさんである。
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※次のーーーまでは読み飛ばして頂いでも大丈夫です。
うちの旅館は有名観光地に立ち、周りの旅館よりも良い景色の場所に立っている。うちの旅館のウリはもっぱら景色だった。
だから、私の父は空っぽになった土地に企業を誘致する際、景色を活かし、景色を大切にしてくれる企業を誘致しようと努力し、結果、ブライダル専門の企業を誘致した。
ブライダルの企業にお声をかけてもらえるまでは、
ブライダルと思いきや最終的には葬儀場に変える企業、景色には目もくれおらず駅近のみを重視した企業、駐車場、マンション、土地自体の販売など色々な声がかかり、家族会議を何度もしたのを覚えている。
そこまで努力したのは私や家族が、旅館を愛していたし、そこから見える景色が大好きだったからである。
だから良い企業の誘致に努力できたのである。
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さて、前置きが長くなったが、上記で私が一族が守ってきたものを愛していることが分かると思う。
そして、ここからが本題である。
私は今、就活生である。
ここでキーポイントになるのは私が女であり、現状では私が子どもを産まなければ、せっかく家族で守った土地を守ってくれる人がいなくなるということである。
就活をしていて、見えてくるのは、子どもを産むことの肩身の狭さである。
夫が子どものために会社を早退してもらうことは難しい、産休育休の取得が難しい、復帰してから元の職に戻ることができない、そもそも子どもを産み育てるお金が無い…etc…
ライフプランを考える中で女性の肩身の狭さ、子どもを産むというハードルの高さを感じるばかりである。
しかし、私は私の一族が守ってきた土地があるのである。私はそれは守らなければいけないと考えている。
今を生きる人にとってはそれは古い考えかもしれない。
しかし、守ってきた土地に私は「誇り」を感じており、私のアイデンティティの一つとなっていると言っても過言ではないのである。
私は、この土地をこれからも守っていきたい。そのためには私の子どもにも私の一族の土地を大切に思い守って欲しいのである。
うちの土地は景色が良く、駅近で、横には小さいが国の施設がある。
敵は多い。うちの一族では、国に土地を取られそうになった過去の話が伝わっている。また今回、旅館を畳んだことで、893や銀行が土地をだまし取ろうとしてきた。後者は書面まで持ってくる次第である。
父の代でも景色を大切にしてくれる企業を見つけることは手間がかかった。
分かりやすく言えば、企業の誘致はめんどくさいのである。
私の子どもの代になって、誘致の交渉が面倒だから、土地を売り飛ばした、マンションにしたとなってしまうととても悲しいのである。
そうはならないそうに私は子育てはしっかりしたいと考えている。
仕事と育児両立させることは難しいことであるということは重々承知している。
でも私はまだ大学生である。少しくらい夢が見たい。
私は、私がやりたい仕事に就くことができ、育休、産休を取ることができ、子どもにできるだけ寂しい思いをさせない家族が作りたいのである。
今の時代では難しいことであると自覚している。
少子化の影響で私のように家を背負っている人は増えているだろう。そんな仲間が、末代のことまで考えることができる、世の中に変わってくれることを願うばかりである。
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追伸
願ってばかりでは変わらないため、私は私にできることを努力していきたい。
まずは、やりたい仕事ができる、産休育休が取れる企業の就職である。
就職してから、夫探し、就職した企業を更に働きやすい会社への改革していく。
できるかどうかは分からないが努力する価値はあると思う。
就活での私のPRポイントは向上心である。
私は、親に言われたわけでもないのに勝手に一族の背負って末代のことまで考え、かつ自分のやりたい仕事には就きたいという傲慢な人間である。
前向きに一歩一歩、傲慢な馬鹿は馬鹿らしく、自分なりに生きる道を模索していきたい。
もし、これを読んで頂いた人がいるならば、無駄に頑張ってる面白い馬鹿が居ると思って頂ければ幸いである。