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久しぶりの読書。「世界でいちばん透きとおった物語」
久しぶりの読書だった。
5年程まともに小説を読んでいなかった。
読めなかった、と言う方が正しいかもしれない。
その年私は祖母と親友を、空へ見送った。
まさか1年の間に喪服を二度着る事になるなんて思ってもみなかった。
そして、幼い頃から本が好きだった私は本が読めなくなってしまった。
どんな言葉に出会っても、祖母と親友がちらついて悲しくなってしまいそうだったから。
しかし今年の夏、久しぶりに本を一冊買ってみようと思い、学生時代に気になっていた本を買うことにした。
そんな風に思えるようになったのも、なんだか嬉しかった。
しかし書店に並んでいたその本は、どれも綺麗な状態のものではなかった。
落胆して他の本を見ていると、ふと一冊の本が目に入った。
「世界でいちばん透きとおった物語」
季節はもう夏だったけれど、春限定カバーのものが二冊だけ平積みにされていた。販促物に書かれた文字が目に入る。
「電子書籍化不可能!?
紙の本でしか体験できない感動!」
限定や特別感のあるものに弱い私は、
気がつけばその本を手に取ってレジへ向かっていた。
久しぶりの小説にワクワクしながら、とある場所に向かった。
その日は花火大会の日だった。
買ったばかりの本と、花火。
特別な1日になった。
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夏が過ぎ、秋になった。
そして今日、土曜日の午前9時、本を読み終えた。
通勤時間や昼休みの楽しみとして少しずつ読み進めていたのに、早く目が覚めてしまったことを言い訳にして自宅で読み終えてしまった。
noteに公開している以上ネタバレになることは書けないが、読み進めていくなかで販促物に書かれていた言葉の意味を理解した時、思わず声が出てしまうほど驚き、感動し、鳥肌がたった。
なんて気持ちのいい朝。
久しぶりの読書がこの本で良かったと心底思った。
本に出会ってから読み終わるまでの全ての過程を含めて。
ものごとには全て意味がある、なんて言うけれど、あの日目当ての本を諦めたのはこの本に出会うためのものだったのだろうか。
電子書籍が普及し紙の本の売れ行きが落ちているという話を聞いたことがあるが、紙の本でしか得られない感動がある。
私はやはり紙の本が好きだなと思った。
ーーー
私は自分の読んでいる本について話すことがない。
何読んでるの?と聞かれても「ミステリ」などと誤魔化すことが多かった。
本棚は自己紹介になると思っている。
その人がどんなことを考えていて、何が好きなのか。
読んでいる本でその人の一部が垣間見えると思っているから、自ら「この本を読んでいます!」と見せる事に若干の抵抗があるのだ。
でもここには私を知っている人はいない。
思うがままに書きたいことが書ける。
だから今日は、久しぶりに小説を読んだ記念も兼ねて、感動した読書体験の話をここに。
私の備忘録でもあるけれど、もし読んでくださった方がいたのなら、昂った気持ちのまま描いた拙い文章を最後まで読んでくださりありがとうございます。
さて、次の本を探しに書店にでも行こうかな。
あの日諦めた本も読まなくては。