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3. 門番

少年はその出会った男の子に肩を持たれながら、男の子の家があるだろう城下町へと歩いた。

「ここまで来るのに大変だったね。僕の家は門をくぐって直ぐだからね、頑張って。」

少年は申し訳ない気持ちだった。こんなに汚れている自分を担いでくれるなんて。普通の人は触りたくないだろうに。いや、近付くことすら嫌だろうに。

けれどその男の子は何の躊躇もなしに駆け寄ってきてくれて、自分の家で手当てしてくれようとしている。どんな家族と暮らしているんだろう。こんなに寛大な人間が存在するなんて。

やっと城下町の門の前へたどり着いた。鎧と槍を装備した門番が門の脇に立っていて、少年と男の子に気が付いた。

「セルク、彼は誰なんだ?見たことない顔だぞ。街に住んでいないやつは許可なしには入れないことぐらい知っているだろう。」

この男の子の名前はセルクだった。セルクが言う。

「知ってるけど、こんなになっている人を助けないなんて出来ないよ。助けずに見捨ててその場を立ち去ってしまったら、僕は一生自分をカッコ悪い人間だと思うだろう。」

「けどな、これはルールなんだ!ルールがあるから街の民はみんな安全に暮らせるんだ!ルールがなかったらどうなる?色んな悪いやつが入ってくる。そして街中で悪事を働く。街の治安は悪くなり、住民は怯えて毎日を暮らすんだ。そんなところにお前は住みたいのか?」門番が反論した。

暫くセルクが門番の言ったことを考えてこう言った。
「うん、そんなところには住みたくないね。分かった。」

少年は驚いてセルクの顔を見た。セルクは無表情だった。

「さぁ、行くよ。」

そうセルクに言われて、セルクに連れられてその門の前を離れた。

こんなにあっけなく見捨てられてしまうなんて。心からいい人なんてやっぱりこの世にはいないんだ。少年は思った。

続く。



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