シェア
number
2020年1月26日 21:39
初めての一人旅は、関西から九州へ、ひたすら鈍行列車に揺られて、車窓から外を眺める旅だった。朝早く起きてこの時間に乗る、この時間に乗り換える、と計画していた電車の時刻にはことごとく遅れ、まあそれもいいかと一人旅の気楽さで電車に揺れる。カタンコトンと線路の感触を感じるくらいの鈍行の速さは、人間らしい呼吸になじむ。人の少ないローカル線のボックス席に腰を落ち着け、本を読む。時折目をあげると、窓から
2017年12月10日 20:45
旅の帰路、山間を走る電車の車窓から、黄昏を追う。夕日が沈むと、山々は次第に暗くなり、ガラス窓を挟んだ闇の向こうに姿を消していく。昼間は圧倒的だった自然の大きさが、徐々に遠のいていく。木々の輪郭や山々の境界が曖昧になり、一緒くたになって、代わりに民家の光がぽうと灯りはじめる。人間の生活が、遠慮がちに、光を灯して浮き出してくる。時折、カーテンを開け放したままの民家や、高架沿いの小さな企業ビル