【10選】個人的に好きな村上春樹作品の作品名【前編】
村上春樹の素晴らしき作品名【Part.1】
おはようございます、こんにちは、こんばんは。村上春樹ソムリエのNumber.Nです。
勝手に村上春樹ソムリエを名乗ってすみません。でも、そのくらい村上春樹の作品が大好きなんですよ。一番繰り返し読んだ『ノルウェイの森』なんて、人生で30回以上読んでいます!
そのわりに、あまり好きでない『1Q84』は最後まで通読できなかったんですけれど……。
『源氏物語』の研究者を志す前は、村上春樹ソムリエになろうとしていました(←そんな職業ねえよ笑)。
今回は、そんな僕が素晴らしいと思った、村上春樹作品の作品名を十作品、ランキング形式で紹介したいと思います。
好きな作品やおすすめ作品ではありません。あくまで作品名だけを切り取って、素晴らしいものをピックアップしています。なので、ここに選ばれていない作品がイコール面白くない作品ではありません。なんなら、僕の最も好きな本は選外です。
完全に、圧倒的に、完膚なきまでに僕の独断と偏見に基づいてランキングを決定していますので、あしからず。
それでは、村上春樹の珠玉の作品タイトルの数々をお楽しみください。
・10位
『1Q84』
第十位にランクインしたのは『1Q84』です。
先ほどもちらっと述べましたが、実は僕は『1Q84』という作品が苦手です。村上春樹作品は総じて、浮世離れしながらのリアリティーを感じるのですが、『1Q84』は僕にとってリアリティーを感じにくかったんだと思います。もちろん、世界観の卓越した様はさすが村上春樹といったところなのですが。
作品としては苦手な部類に入りますが、『1Q84』の作品名の素晴らしさは、僕の作品の好みとは切り離して、純粋に味わいたいところです。
『1Q84』というタイトルには元ネタが存在します。それは、ジョージ・オーウェルの『1984』です。
オーウェルは1948年ごろにこの作品を執筆しました。『1984』という作品名が示しているように、近未来(1984年)に起こりうるディストピアを描いた作品になっています。
村上春樹は、この『1984』に着想を得て、21世紀に入ってから過去を振り返るような形で、異なる1984年の姿を描きました。起こり得た1984年、オーウェルの『1984』の亜種。
だからこそ、題名が『1Q84』となっているのです。
・9位
『女のいない男たち』
第九位は短編小説および短編小説集のタイトルである、『女のいない男たち』です。
同じく、短編小説集のタイトルである、『一人称単数』もランクインさせるか非常に悩んだところでした。
村上春樹の短編集としては新しい方の両作ですが、共通点があります。それは、一冊に収録された短編の共通点をもとに、作品名が考案されたことです。
以前の村上春樹の短編集では、軸となる一つの短編作品の名前が短編集のタイトルとして付けられていました。『女のいない男たち』は短編作品の一つの名前でもありますが、明らかに短編集の共通点を冠することを目的に付けられた題名となっています。
『女のいない男たち』の収録作品には、映画化され有名になった「ドライブ・マイ・カー」があります。同作品は妻を失った男性を描いた作品で、主人公の「喪失」というテーマを考えると、『女のいない男たち』という題名は、なるほどよくマッチしている、と感じます。
なお、短編集と題名としての『女のいない男たち』と、短編の作品名としての「女のいない男たち」では、ニュアンスが異なっている点も好きなポイントです。
・8位
『キャッチャー・イン・ザ・ライ』
第八位にランクインしたのは、J・Dサリンジャー『Catcher in the Rye』を村上春樹が翻訳した作品である、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』です。
翻訳作品を村上春樹作品として挙げるのはいかがなものか、とお𠮟りを受けそうにも思いますが、僕はこの作品名にしたところに、村上春樹の翻訳家としての姿勢が表れていると感じます。
『Catcher in the Rye』を日本語に直訳すれば『ライ麦畑にいる捕手』になるでしょう。ダサいですよね。野暮が過ぎますね。
もともと、英語の題名として美しいものを別言語に訳して、素晴らしい作品名になるかと言えば、そうではありません。『竹取物語』は『The Tales of the Bamboo Cutter』ですが、決して美しい題名だとは思えないじゃないですか……笑。
翻訳者たちはこの問題に向き合ってきました。
この格闘の痕跡、一つの答えが、野崎孝訳『ライ麦畑でつかまえて』です。すなわち、作品名の意味を変えてでも、日本語の響きを優先させるということです。
意味を変えるというのは、翻訳としてよくないのでは、という意見もわかりますし、僕も翻訳者の都合で作品を変質させることには反対です。とはいえ、この『ライ麦畑でつかまえて』は非常にキャッチ―で楽しい題名です。
僕の大好きな愛すべき名(迷)翻訳の一つです(ちなみに他には『Can't Take My Eyes Off Of You』を訳した『君の瞳に恋してる』が好きです』。
村上春樹訳に戻りましょう。
村上春樹は、『Catcher in the Rye』に適切な日本語を与えることができないと考えたのでしょう。少なくとも良い日本語として訳せない。
そこで村上春樹は『キャッチャー・イン・ザ・ライ』とあえてそのままにし、カタカナ表記にとどめることにした。ここに、村上春樹の翻訳者としての立場が表れていると考えます。
村上春樹は、英米文学の熱烈な愛好者です。自分の愛する作品の魅力をそのままに表現したいという村上春樹の思いが、この作品名から浮かび上がってきます。
今回紹介する作品名はここまでです。
中編後編あわせて、あと七作品紹介することになります。
どの作品がランクインするのか、皆さんの好きな作品はランクインしているのか?
乞うご期待です!中編でお会いしましょう!
それでは、また!