見出し画像

短歌とわたしの、10年

前回のnote「ヒュー!日向 マッチング短歌 Final」の振り返りでは、
短歌を考えはじめておよそ10年、と書きました。


現在が令和6年なので、10年前は平成26年。
確かに、その頃です。

今回、マッチング短歌をきっかけに、枡野浩一さんの「かんたん短歌の作り方」を改めて読みました。

単行本の出版が2000年、文庫化が2014年とあります。
2014年といえば、ちょうど10年前、まさに私が短歌に足を踏み入れかけた頃。

初めて短歌をつくったのと、この本を読んだタイミングの前後関係はもはや記憶していません。
ただ、私はこの本を読んで「短歌をつくりたい」と思ったわけではなく、当時はやむにやまれず、短歌をつくろうとしていました。
俳句や川柳では駄目なことは学習済でした。

そう考えると、自分を吐き出す手段として短歌を見出したことと、ほぼ時を同じくしてこの本に出あったのは本当に幸運なことでした。

作品集を読んで、
 西尾綾さんの孤独さも、
 天野慶さんの朗らかさも、
 加藤千恵さんの前向きさも、
 柳澤真実さんの切なさも、
どれも、まるで乾いた布に染み込むようでした。もちろん皆さん、ただそれだけの歌人ではありません。

佐藤真由美さんの艶やかさや脇川飛鳥さんの強さばかりは身につけることはなりませんでしたが、名前を挙げなかった方も含めて、これらの歌を知ることができ、幸せでした。
短歌とは生きる糧、だと思います。

ただ、こう書くと、ずいぶん長く短歌を詠んでいるかのようですが、短歌をつくる必要性を時間が解決してからは、意識するでもなく作歌からは離れてしまいました。


巻末、宇都宮敦さんの解説に、

現代書き言葉で切れ目のない57577をつくると、(略)
短調でかつデクレッシェンドがかかっているような旋律になる

とあるのはどきっとしました。
まさにそういう音楽、そういう短歌が好きだから。

最後にはわかったんです 最初から投げ返す気のない人だって/西尾綾
約束はやぶっていいよ ゆびきりがただしたかっただけなんだから/天野慶

いいですよね。


私がこの「かんたん短歌の作り方」を愛するのは、脇川飛鳥さんに宛てた次の一文があったからです。

日常生活ではとても生きづらい思いをしているかもしれませんが、それが物を書く才能というものなのだと、あきらめて精進してください。

この文章があったから、巻末で加藤千恵さんが、枡野さんを「すごく優しい人です」と書かれていることに、まったく違和感を持ちませんでした。

優しい人には、優しい人が集まるのだと思います。


※ 引用部分はいずれも、枡野浩一著「かんたん短歌の作り方」(ちくま文庫)から。

いいなと思ったら応援しよう!