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ときには読書の話を #名刺代わりの小説10選から

「#名刺代わりの小説10選」をX(旧Twitter)に投稿してみました。


10作くらい簡単だろうと思っていましたが、同じ作者の作品は選ばない、というコンセプトで臨んだため、意外に苦労しました。

Xの文字数では、書名と著者を記すのがやっとでしたので、主なものについて、noteで紹介したいと思います。




ローマ人の物語 塩野七生

古代ローマの建国から衰亡までを描いた大作(ハードカバー全15巻)です。

以前にnoteで注目ポイントを紹介しました。

カルタゴの名将ハンニバルとの第二次ポエニ戦争を描いた第2巻(単行本)は屈指の名作です。

内乱の一世紀を経て、英雄カエサルの登場、後継者オクタウィアヌスによる事実上の帝政開始、五賢帝と華々しい時代が続きます。

しかしながら繁栄は永続せず、マルクス・アウレリウスの治世に蛮族が勢力を伸ばすと、キリスト教の伸長とあわせて、帝国がきしみ始めます。

その後のたどる道は世界史に明らかですが、興亡を描き切った本作は読み継がれるべきものと思っています。

歴史エッセイだから小説ではないよ、という指摘もあるかもしれませんが、許してください。

塩野七生さんの作品では、他に、

  • コンスタンティノープルの陥落

  • チェーザレ・ボルジア あるいは優雅なる冷酷

  • 海の都の物語 ヴェネツィア共和国の一千年

これらを愛読しました。「コンスタンティノープルの陥落」は、トルコに旅行する際は必読です。


坂の上の雲 司馬遼太郎

人生で最も多くの時間を費やした本です。
ハードカバーで全6巻のボリュームですが、読み返した数は二桁にのぼります。

初めて読んだのは中学生のとき。
とりわけ、日露戦争に突入する第3巻以降を繰り返し読んだものです。

大人になってから振り返ると、正岡子規をはじめとして第1巻、第2巻が味わい深いのですから、年齢というのは不思議です。

2009年から2011年にかけてNHKで放送されたテレビドラマも印象的でした。

「まことに小さな国が、開化期をむかえようとしている」のナレーション、
秋山好古を演じる阿部寛さん、正岡子規を演じる香川照之さんの熱演は、今でも鮮明に覚えています。

折しも、2024年9月から、NHKで再放送が始まりました。

司馬作品のなかでも屈指の傑作でありながら、長年埋もれたイメージでしたが、認知度が上がったことを嬉しく思います。


指輪物語 J.R.R.トールキン

ファンタジーの原点にして頂点、トールキンの大作です。

日本では、2001年から2003年にかけて公開された映画「ロード・オブ・ザ・リング」でご存じの方が多いと思います。
話題としては、同時期に公開された「ハリー・ポッター」に席捲されてしまいましたが、「葬送のフリーレン」をはじめ現在に連なるファンタジーの祖です。

原作の「指輪物語」が執筆されたのは第二次世界大戦の頃。
架空の人工言語の研究から、神話、そして世界を創造するに至ったトールキンの偉業には敬服するしかありません。

持っているのは追補編含め全10巻の文庫本ですが、冒頭30ページくらいのホビットの解説さえ乗り越えられれば、あとは何とかなります。


漱石と倫敦ミイラ殺人事件 島田荘司

島田作品を挙げることは決まっていました。
問題は、どれにするか。

候補としては、御手洗潔シリーズから、

  • 占星術殺人事件

  • 斜め屋敷の犯罪

  • 水晶のピラミッド

  • 御手洗潔のダンス(短編集)

それ以外にも、

  • 奇想、天を動かす

  • 嘘でもいいから殺人事件

  • 毒を売る女(短編集)

これらも捨てがたいですが、あえて1冊と選んだのが「漱石と倫敦ミイラ殺人事件」です。

イギリス留学時代の夏目漱石の下宿先が、シャーロック・ホームズのベーカー街221Bと近いことに着想を得た作品で、漱石とワトスン博士が交互に語るスタイルです。

漱石がホームズに会っていたらこう書くだろうな、という文章が魅力の一冊です。


途上 谷崎潤一郎

芸術的なイメージがある谷崎潤一郎のなかで、「プロバビリティーの犯罪」を扱った、探偵小説の先駆けのような作品です。

その先進性といえば、江戸川乱歩が高く評価し、明智小五郎のデビュー作「D坂の殺人事件」で名前を挙げて議論させるほど。

「○○かもしれない」
を積み上げていったとき、その結果、誰かが命を落としたとき、それは不幸な事故と扱われるのではないか、
何度か失敗したとしても露見せず、回数を重ねれば、望む結果に至るのではないか、
乱歩が「D坂の殺人事件」を書く5年前に世に出した功績は大だと考えています。

短い作品ですし、青空文庫で読めますので、是非。




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