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ヒュー!日向マッチング短歌FINALレポート(まさかの歌合わせ 編)
受賞作の紹介、交流会の模様は、こちらの記事をご覧ください。
美味しい日向の幸をいただき、おなかいっぱいになったところで、歌合わせが始まりました。
プログラムのなかに歌合わせがあるということ、私は日向市の記者発表資料で知りました。
知っていて良かった、と思う一方、準備の仕方もわかりませんから、流れに身を任せるしかありません。
受賞者どうし、
「歌合わせって何をするんでしょう?」
「しおりには歌合わせゲームって書いてあるから、天野慶さんの57577のカードゲームでしょうか」
なんてことを話していました。まぁ、ゲームだったら、多少はね。
ところが、発表されたルールは本気のものでした。
受賞者を二つのチームに分ける。
10分間で、お題をもとに短歌を詠み、チームの代表作品を決める。
3分間で、自チームのプレゼン、相手チームの指摘を行う。
天野さんの判定で勝利チームを決定、デザートGET
それでも、私たちのチームには、マッチング短歌連続入選の方、短歌甲子園経験者の方もおられます。
団体戦で良かった。
最初のお題は「日向のおいしいもの」。
うんうん、たくさん堪能しました。海のもの、山のもの。とっても美味しかった。
とはいえ、それが10分で短歌になるかというと、別物です。即詠なんてやったことないですし、そもそも私の短歌は、一晩寝かせてやっと完成するのです。
短歌の神様も何も降りてこないまま周りを眺めていると、あちこちでペンがすらすら走っています。
この感覚、高校以来かもしれません。まずい。
ようやくようやく、制限時間ぎりぎりに、なんとか1首搾りだしました。
おひさまと海と山とが出逢う街 あなたのレシピ教えてください
他の方の歌に目を通す余裕もないまま、タイムアップです。
私たちのチーム、相手チームに続いて、急遽参戦のチーム生産者の3チームで競います。
私たちチーム
若鶏もへべすの皮もやわらかくはじめましての声やわらかい
相手チーム
詠むために来たはずなのに食べて食べて呑んで呑んでいるきっと明日も
チーム生産者
庄手のお米で作る冷や汁に二人で絞るへべすのしずく
まず、私たちからプレゼンです。
3分間でマイクを廻し、自分たちの良いところをアピールしつつ、他のチームに戦いを挑みます。短歌だけじゃない、プレゼンも含めた戦い。
同様に、相手チーム、チーム生産者と進みます。チーム生産者のコメントは、実体験に基づく歌なだけに、言葉に重みがあります。
そして、天野さんの審査結果は…
勝者、チーム生産者!
庄手というのは、ちょうど今いただいているお米の産地だそうで、その説得力、そして下の句のシズル感が高く評価されました。
なるほど、歌合わせってこんな感じか。
次こそは、がんばろう。良い歌を、力あわせて。
目の色が変わったのは、私だけではありません。2回戦のテーマ「へべす」に、全員が真剣です。
日溜まりで音立て花が咲く手紙みつけたのです へべす畑で
天野さんの大好きな歌を本歌取りさせていただきました。雨に輝くへべす畑、それぐらい美しかったのです。
わずか10分で、複数の歌を詠んだ方もおられ、そのなかから選りすぐった候補作を囲んで、本気で推敲します。まるで火花が散るかのよう。
受賞者の名にかけて、連敗するわけにはいきません。
周りを見る間もありませんでしたが、おそらく相手チームも同じ状況だったことでしょう。
私たちチーム
手のひらをゆりかごとして悠美園のへべすにそそぐ愛のスコール
悠美園とは、へべす収穫体験をさせていただいた農園の名前。手のひらサイズのへべすにぴったりの歌です。
「愛のスコール」は、
1.収穫体験の直前、バスで遭遇した大雨
2.汗をかいた身体に染み入る、へべすを搾った飲み物のスコール
3.愛が降り注ぐ
そのトリプルミーニングとなっています。どうだ。
制限時間ぎりぎりまで意見を出し続ける受賞者をよそに、チーム生産者は悠々と作品を提出しています。
相手チーム
あれもまた恋だったのかふるさとの日向の川辺でへべす投げ合う
チーム生産者
へべす達今日は東京大阪へ自分も行きたい旅をたくして
……負けた。
見た瞬間、そう思いました。
相手チームの歌には、まだ意見を出せます。
実際、生産者の方から「へべすは、投げません」と言われていました。
それと比べて、チーム生産者の歌には、どう攻撃すればいいのでしょうか。宮崎の特産で、最近になってようやく全国に広まり始めたへべす。自分も行きたい旅、いいなぁ。
天野さんから、ジャブのポーズで促されても、叩きようがありません。
へべす達の「達」は平仮名の方がいい。
「今日は」ではなく「今日も」ではないか。
「たくして」は漢字だろう。
そんな指摘を続けていると、チーム生産者から「修正します!」と声が上がります。
へべすたち今日も東京大阪へ自分が行きたい旅を託して
完璧です。
特に、「自分が」としたことで、気軽には旅行に行けない農家の心情、丹精込めてへべすを育てている様子が鮮やかに描かれています。
天野さんの判定も、もちろんチーム生産者。
やはり、「自分も」が「自分が」となったのが決め手だったそうです。
まいりました。
生産者の皆様のご好意で、賞品のへべすシャーベットとフルーツサンドは受賞者たちに譲っていただきました。
シャーベット美味しかった。
余興の域を超えた歌合わせは、こうして幕を閉じたのでした。
生産者の皆様、いつかリベンジします。
そして、たくさんの美味を、ごちそうさまでした。
余談ですが、日向の最後に私が詠んだ歌は、このチーム生産者の歌への返歌にもなっています。
歌だけを手がかりにして十二人 また、それぞれの旅に託して
素敵な短歌、ありがとうございました。
歌合せゲーム pic.twitter.com/qGW3zRmD5C
— 外村ぽこ (@outvillage_poco) September 15, 2024
3回に分けてお送りした「ヒュー! 日向 マッチング短歌 FINAL レポート」本編は、以上で終了です。
濃密な、それでいてあっという間の2日間でした。
少しでも、ひとつでも、何かを吸収したい。大切な時間を過ごすことができました。
日向でお会いした皆さん、本当にありがとうございます。
短歌と同じくらい、素敵な人たちばかりでした。
これからも仲良くしてもらえるとうれしいです。
枡野さん、天野さんに短歌を読んでもらいたい、そんな気持ちで投稿したマッチング短歌。
短歌の世界に、踏み出して良かった。心から、そう思います。