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#11 志を現実にする、論語と算盤のバランス
最近、社会性と事業性の両立を志す人が増えてきたと感じています。経営において、社会性は「論語」、事業性は「算盤」と言いかえることができるでしょう。
しかし、社会性を強く打ち出すあまりに、事業が伸びず、暗中模索している経営者を何度も目にしてきました。そこで、今回の記事では、論語と算盤を両立することの意義と、その根本にある考え方を解説します。
社会起業家やソーシャルビジネスに関わっている人、トップのビジョンを実現したいナンバー2に、ぜひ読んでもらいたいと思っています。
理論理屈よりも現実を見よ
事業の社会性に力を入れる人の中には、「お金儲けが下手で...」と話し、それを金看板にしていることがあります。見た目はキレイですが、結局は資金が回らず、小さな影響力に留まり、倒産する運命をたどることも少なくありません。
ここで考えてほしいのは、もし、あなたのパートナーや子どもなど、大切な人が病気になったら、どう行動するかということ。
「1000万円かかる手術をすれば確実に治る」
と言われたら、どうしますか?
銀行も融資してくれない、周りに頼る人もいない。そうだとしても、なんとかして助けたいはずです。「お金に縁がなくて」と諦める人はいませんよね。
お金や財力は、誰かを助けるためには必要なものです。「お金=汚い、ダメ」というのは間違ったとらえ方。優れたナンバー2は、お金は必要だと割り切って、仕事をしなければなりません。綺麗ごとだけでは生きていけないのです。
大切な人を守るためのお金は、しっかりと儲ける。そして、口だけではなく、いざという時に動く。それが、バランスのとれたナンバー2の生き方です。
「ほんまもん」は必ず伸びる
若手起業家のみなさんと話していると、すごくいいサービスを考えているなと思うことがよくあります。世の中に本当に求められているビジネスは、必ず広まっていく。これは普遍の法則だと思っています。
そして志が高くて、思いを貫く本物の側には、「その人を支えたい」と覚悟を決める有能なナンバー2がやってくるものです。
しかし、人はバランスを崩しやすい生きものでもあります。お金を重視した教育をうけてきた人は、事業でお金が入ってきた途端に、態度がガラッと変わってしまいやすい。そういう経営者からは、人も離れてしまいます。
私には、「この人を支えたい」と覚悟を決めた経験があります。その人は、社会のために、人のためにという高い志を持ち、将来トップになることを約束されていた人。ナンバー2を引き受けるとき、こう伝えました。
「私のノウハウで経営を軌道に乗せるけど、儲かった時に、無駄遣いしないと約束してほしい」と。
実際にその人は、どんなにお金が儲かっても、当初のビジョンから1ミリもブレることがありませんでした。
このように、ものごとは万事が人間力に帰結するのです。志が高く、限りなく社会や人のために動ける人が、最終的な成功者になります。そして、人間力のあるトップは、人を惹きつけ、経営や営業の力を持つナンバー2に恵まれる。
成功している会社では、トップの持ち続ける志と、ナンバー2が果たす算盤という役割のバランスがうまくとれています。
志は高くても、それを実現する実行力や組織、お金が無ければキレイ事で終わってしまいます。論語と算盤の両輪があってこそ、社会性と事業性は両立し、志は現実になるのです。