死者とつながり、未だ生まれぬ者とつながる

キリスト教についてまったく知らないか、あるいはわずかに知ってはいるがほぼ初めてという方が教会に来られた場合、わたしは以下のようなお話をすることにしている。

「例えば学校や病院や役所は、日々多くの人々の役に立っています。それらの施設は生活の一部です。しかし、そこに死者はいません。病院も、死んだら出ていかなければなりません。たとえどんなに多くの人が集まる施設であったとしても、それは生きている人だけが利用することのできる場所なのです。しかし教会はそうではありません。教会ももちろん、今を生きる人々のための施設ではありますが、その一方で死者と共にある場所でもあるのです。そしてこれも大切なことですが、教会はこれから生まれてくる、まだこの世界に存在しない人とも共にあります。それが、教会が神の家であるということなのです。」

行ったこともない教会に初めて行き、その建物の中に入るには、それなりの勇気が要る。そんな勇気を振り絞ってわざわざ教会に足を運んでくださるからには、そういう方はたいてい何か超越的な次元に関心を持っておられる。なので、わたしの上記のような説明に対しては納得してくださる方も多い。教会に初めて来られた方が皆、死人がそこにいるとか、まだ生まれてもいない人間が実在するといったことを信じるという意味ではない。たとえ信じてはいなくても「なるほど、そういう理屈は腑に落ちるものがある」という、ほのかな共感は持ってくださるということである。

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