水始涸(七十二候)と不老長年
10月3日頃、七十二候の「水始涸(みずはじめてかるる)」は、田畑の水を干し始める、という意味で、田んぼの水を抜いて稲刈りをする収穫に備える時です。
ところで、七十二候の言葉の由来は、中国漢時代の准南子や礼記に遡ります。秋分の頃については、
雷始收聲 蟄蟲坏戶
殺氣浸盛 陽氣日衰
水始涸
(雷は収まり、虫は姿を見かけなくなり、寒気が広がり、陽気や日が衰え、水が涸れる)
とあり、この頃の季節の描写で秋分の初候「雷始收聲」次候「蟄蟲坏戶」末候「水始涸」が出てきます。ここで「水始涸」が表しているのは、この時期になると川や井戸などの水が枯れることで、田んぼの水の事では無いようです。この言葉が日本に持ち込まれて後、農耕文化と結びついて今の意味合いになったのでしょう。外からの知識を日本の生活や文化と結びつけた先人の智恵を感じますね。
さて、この頃は蜜柑の実が育つ頃です。写真は松と実付きの蜜柑を取り合わせた文人華で雅題は「不老長年」です。松は不老や長寿を表し、老練さを表す松毬と今から色づく若い蜜柑の実が寄り添い、老若がお互いに大事にし合う気持ちを表しています。
令和2年の水始涸は2020年10月3日です