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「方程式の解」「軌跡」は同値変形か真理集合か

 高校数学の習慣で「条件とその真理集合を同一視する」というものがあります.例えば「方程式  $${x^2=x}$$ の解」は,条件 $${x^2=x}$$ の真理集合のことなので,本来なら集合 $${\{0, 1\}}$$ や $${\{x | x=0 \lor x=1\}}$$ なんですが, $${x=0,1}$$ のように $${x}$$ の条件で表す習慣になっています.これは,「条件 $${x=0,1}$$ がわかっていれば,その真理集合 $${\{0, 1\}}$$ は直ちにわかるよね? 実際,$${x^2>x}$$ の解を $${(-\infty,0) \cup (1,\infty)}$$ と書くよりは,その真理集合がただちに導かれるような条件 $${x<0,1< x }$$ を書くほうが楽でしょ?」という意図だと解釈できます.

 首尾一貫しないのは軌跡の指導です.「〇〇の軌跡を求めよ」という問題は,$${x^2+y^2=1}$$ だと減点する指導が多く,「中心が原点で,半径 1 の円」が好ましいとされます.つまり,ここでは条件=方程式と,真理集合=軌跡が明確に区別されています.でも先ほどのロジックでいけば,真理集合がただちに導かれる条件 $${x^2+y^2=1}$$ でも正解になる気がしませんか? あと,そもそも論でいえば「〇〇の軌跡を求めよ」というのは問題が悪いんですよ.「〇〇の軌跡を図示せよ」または「〇〇の軌跡の方程式を求めよ」でしょう.出題者が反省しなくてはいけないところを,生徒を責めるのは筋違いです.

 このあたりを話しているとき,「教科書の表現がこうなっているから…」という後輩が多いんですよね.教科書の表現に寄せておいたほうが無難,それは授業の板書やテキスト作成の方向性としては間違ってはいないんですが,だからといって,ロジカルでない理由で生徒の答案を減点するのは違うんですよ.方程式を解くのは同値変形で,そして軌跡を得るのも同値変形なのに,片方は条件が結論で,片方が真理集合が結論という指導に違和感を持ってほしいところなんですよね.で,こう言うと「じゃあどう指導したらいいんですか」という反応が返ってくるんですが,授業は教科書通りの習慣で教えて構わないわけで,条件とか真理集合とかの話をする必要もありません.ただ,生徒がどちらで答えても減点しない.ただそれだけのシンプルな話です.

 あとよくある話題で,「方程式  $${x^2=x}$$ の解の $${x=0 ,1}$$ のカンマは ∧ か ∨ か?」というのがあります.条件 $${x^2=x}$$ の同値変形ならば

$$
x=0 \lor x=1
$$

ですし, 条件 $${x^2=x}$$ の真理集合を $${P}$$ とすれば

$$
0\in P \land 1\in P
$$

なので,どちらも誤りとはいえません.

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