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20年の中間決算 小説編

 生きてきて22年になろうとしてるけど、これは両親のおかげもあって「ものがたり」が常に身近にある人生だったんですね。小さいころの絵本から始まり、ゲーム、児童書、小説、舞台、アニメ、映画、と様々なエンタメを経た結果、ここに立っているわけで。それが近年摂取するエンタメに見境がなくなりもはやなにかしらエンタメを摂取してないと死んでしまう病に侵された哀しきエンタメモンスターに成り果てている。というわけで大学も最高学年になり、とりあえずここまでの人生の総決算をしようかなと思いまして。
 私の人生でこりゃー読んどいて(観といて)良かった!!まだ読んでない人羨ましい!!!!という作品を沢山書きたいと思う。
 とりあえず小説編!好きなフレーズを添えて書きます!ここには作品や作家さんに対する悪口は一切ありませんので安心して(?)読んでほしい。


【人生編】

・十二国記シリーズ

人が人であることは、こんなにも汚い。
(中略)
人は誰も何かしら異端だ。身体の欠けたもの、心の欠けたもの、そんなふうに誰もが異端だ。異端者は郷里の夢を見る。虚しい愚かな、甘い夢だ。

『魔性の子』p481~p483

国民の全員が蓬山に行けば、必ず王がいるはずよ。なのにそれはしないで、他人事の顔をして、窓に格子を塡めて格子の中から世を嘆いているのよ。
――ばかみたい!

『図南の翼』p371

 布教やあらすじの作品概要に関しては年始にツイートが大バズしたんでそちらを見てください!
 これはね~~、ジャンル不問で一番好きな作品を選べと言われたら、5分の熟考の末に私は十二国記を選ぶと思う。というくらいの私の「核」となる作品。
 正直これより面白い作品ってそうそうない。30年間という連載期間ながらも矛盾することなく描かれた本筋。時系列がバラバラに描かれながらもパズルのようにすべてが脳内で噛み合っていく爽快感。これを超える読書体験を未だにしたことがない。読んだことない人が本当に羨ましい。
 私は『魔性の子』『東の海神西の滄海』『図南の翼』『黄昏の岸暁の天』が特に好きです。陽子と嵩里の本筋よりは周りに生きる人たちのが好きなタイプ。昔は『図南の翼』一強だったんだけど大人になるにつれどんどん『魔性の子』が好きになるので不思議。十二国記に関してはもう面白い、とかの次元ではないんだよな。人間として生まれ落ちて「人」として生きていくにあたっての教科書です。

・香月日輪作品 

『妖怪アパートの幽雅な日常』『僕とおじいちゃんと魔法の塔』

勉強するっていうことの本当の意味は、「考えることにある」んだってわかったの。
一つのことは、一つだけじゃないって考えられる頭を作ること。目の前に見えることが、最初はどうだったのかとか、最後はどうなるかとか、そういう考えが出来るようになること。これが大切なの。

文庫版『妖怪アパートの幽雅な日常』7 p181 

「エスぺロスほど変わった者でなくても、人とはどんなものを背負っとるかわからんものだ。普通の者のように見えるからといって、その者に何の秘密もないと決めつけるのは、いかにも浅い。その者が、普通を装っている可能性は充分ある。」
(中略)
「そんなことをズケズケ言っちゃうのは「品性の問題」なんだ。下品じゃなくて、下劣、なんだよ」

『僕とおじいちゃんと魔法の塔』6 p137

 「十二国記」に出会う前の私の道徳形成を担った児童書ですね。香月日輪先生の作品全部好きだけど、特に『妖怪アパートの幽雅な日常』『僕とおじいちゃんと魔法の塔』をずっと読み返していたのでこちらを。
 児童書とはいえ舐めてかかったら怪我をするくらい素晴らしい作品。今私が大学で民俗学をやることになった最初のトリガーでもある。
 妖アパでは、私は千晶が本当にずっと好きです。あと龍さん。(性癖が小学生時点で「完成」していたことを如実に表している2人)千晶の影響で、煙草を吸うことになったら左手で煙草吸いたいもんね。千晶が好きなので何回も何回も読み直したのは6巻、雪山修学旅行の回ですね。あと7巻『愛を知れども』も数えきれないくらい読み返した章です(7巻に関しては千晶も歌ってるしサービスシーンすぎるのもあるw) なんで勉強なんてしなきゃいけないんだろうって思うこともあったけど、それでも義務教育の間は好成績をキープ出来てたのは確実にこの2作品のおかげ。
 魔法の塔は、エスぺロスと雅美が特に好きでしたね。一色さんの親戚でもあるしw   人ではないものたちが、人間を見て沢山のことを教えてくれるのが嬉しくて愛おしくて、エスぺロスが学校にいたらいいのにって何度思ったことか。
 児童書って子ども騙しが通じないからこそ「本質」を突いたことが沢山かいてあるんですよね~。ちょっと愚痴れば自己啓発本とかその辺なんて「大人騙し」ですよ。大人騙しの焚火の役にしかたたなそうななんちゃって読書する前に原点回帰で児童書読めって感じ。自称読書家の選民思想は大嫌いだけど、同じくらい自己啓発本が嫌いです。妖アパと魔法の塔はその時の自分に必要なことが必ず書いてあるので今でも時たま読み返す。今読むと「この部分は私はこう思うけどなあ」って作者に批判的な読み方も出来るようになり、あの時とは見えるものは確かに変わってしまったけど、沢山の子供に読んでほしい作品だし、大人にこそ読んでほしい作品。

・彩雲国物語

「ボクは確かに中立が信条だ。だが判決は出す。中立は傍観の類義語じゃない」

彩雲国物語 黒蝶は檻に捕らわれる p42

「化粧は女の戦装束。戦いに赴くときには必ずしてきな。――そうすれば、絶対に泣けない。泣いたら化粧がくずれる。どんなに薄化粧でも、そりゃあみっともない顔になる。だからどんなにつらくても泣けなくなる」
認めてもらいたいのは、女性の部分を含めた秀麗自身。男と同じになるなんて、どだい無理だし、なるつもりもなかったはずなのに。
 けれど女性ということ自体を否定されつづけていると、簡単に忘れてしまう。忘れてはいけないことを。決して間違ってはいないこと。貶められる理由など何一つないということ。
『女であることを、忘れないで。』

彩雲国物語 花は紫宮に咲く p175~176

 これは妖アパと十二国記の間くらいに出会った作品。人として生きる、というよりは「女」としての生き方を教えて貰った作品かも。圧倒的男社会の中で秀麗ちゃんが考え、選び、歩く道を「私もこんな女性になりたい」ってずっと思わせてもらってる。女としてこの世を生きるにあたっての最初の力になってくれた本ですね。
 多分一番読み返した巻は『黒蝶は檻に捕らわれる』だけど、好きな巻といわれると『紫闇の玉座』も好きだし、『骸骨を乞う』も本当に本当に好きで……
 好きなキャラクターを列挙していった方がはやいかも?中学生の時は清雅と燕青と鳳珠の三強でした。悪夢の国試組も好きだった。今も全員好きですが、大人になってから好きだなあと改めて思うのは、旺季勢がね~本当に好きなんですよ。特に紫闇と骸骨を乞うの旺季勢のお話が本当に良くて……
 なので、旺季、悠舜、皇毅、(晏樹)が好きですね。でもでも、邵可と薔薇姫も黎深と百合、鳳珠、絳攸の話も好きだし、羽羽と瑠花の話も大大大好きです、本当に。
 お話としては、戸部バイト編と御史台編以降がとても好きですね。御史台編メンバーが基本的に大好きすぎるので、御史台で働いてる秀麗ちゃんが好き。私が打たれても打たれてもへこたれない性格になったのは確実に秀麗ちゃんと皇毅長官のおかげ。
 これも読めば読むほど味が出る作品でいろんな人に読んでほしいな~、本当に好き作品。私がもってるのはビーンズ文庫版で、ビーンズ文庫版ってアニメ絵だし多分男性とかも手に取りにくかったんだけど、新装版が出てるのでこちらをぜひ手に取ってほしい。シリーズ揃えると壮観です!

・茅田砂胡作品 

 手元に!!!!茅田砂胡作品が一作も!!!ない!!出払っている!!!!というわけで好きなフレーズは後程追加させていただきます。
 というわけで【人生編】ラストを飾るのは茅田砂胡作品。これはですね、シリーズ名を諳んじられるくらいには好き。
 初めて読んだのは高1だったんですけど、授業中、休み時間、学校のすべての時間を友人の呼びかけにも応じずに読みふけっていたら担任が心配して親を学校に呼び出したほどでした。(後に呼び出されていたことを知ってめっちゃ笑った。)それもあって、高2では国語の先生が担任になって、三者面談で「僕は読書をしている人を無条件に応援しています」って言ってくれてちょっと泣きそうになったのも後日談。
 好きなキャラクターはですね、ファロット一族ですね。みんな好きだけどヴァンツァーが一番好きかな。ルウも好き。デルフィニアならナシアスが好きですね。分かりやすいww    でもシリーズ全体なら普通に海賊と女王も好きだし!それで言うならグランドセヴンとダイアナも好きです!!グランドセヴンいいよね。ラナートがダントツで好きです(分かりやすすぎる)
 ラー一族もいいですよね~みんなお耽美で圧倒的力の持ち主なので好きです。
 『デルフィニア戦記』で好きなのはやっぱり第一部 放浪の戦士かな~、首都コーラル奪還までの物語、素晴らしすぎる。エンタメとしての完成度が高い。でも第4部 伝説の終焉も好きです!王妃になってからのリィが好き!周りを取り巻く人たちが温かすぎて、シリーズ全体を読んでからデルフィニアに戻るとルウの言っていた「ここがリィにとって生きやすい場所なんじゃないか」ってことがよくわかる。
 『スカーレット・ウィザード』はですね、私が初めて本を読んでて声を出して笑った作品です。ダニエル奪還作戦でガーディアンに風穴開けた時、グランドセヴンを呼んだじゃないですか、その時にジャスミンがテンパる連邦警察に吐いた「あれはな、エキストラの皆さんだ」って台詞が本当に本当に好きで(笑) 腹抱えて笑ったし「やったよこいつらマジで……w」って本と初めて会話した。あれは本当に一本取られた。
 『暁の天使たち』で好きなのはやっぱりブチギレルーファでしょう!天使の舞闘会だけで何回読んだか分からないし、天使の舞闘会という副題にふさわしくないレベルの表紙の「魔王」感が凄い。さすが本気を出せば共和宇宙を滅ぼせる男。
 『クラッシュ・ブレイズ』は「スペシャリストの誇り」「パンドラの檻」「ファロットの休日」が特に好きですね、大峡谷のパピヨンと嘆きのサイレンも好き。最初に書いたようにファロットが好きで、しかも特にファロットが「本領」を発揮する瞬間が大好物なので「スペシャリストの誇り」「パンドラの檻」「ファロットの休日」は私得でしかない3作品でした。
 ついでに、ケリーとかが海賊として人を殺すことに躊躇がないこともとても好きなので、あっさり人殺ししてると「フゥ~(口笛)」の気持ちになる。
 「スペシャリストの誇り」はシリーズ全体を見渡しても特に好きな巻かも。一貫して語られるレティの「やるならルール内でやる」という精神がプロフェッショナルでいい。
 『天使たちの課外活動』では「テオの日替り料理店」かなあ?ヴァンツァー推しとしては「極光城の魔法使い」も捨てがたいけど。読んでるときに「絶対にこれは茅田先生がステアラで舞台観に行ってかいたやつやんww」と思ったらあとがきで予想通りのことが書いてあって笑ってしまった。
 テオとアンヌも好きなんですよね~、一度でいいからテオの味噌汁が飲みたい。
 『トゥルークの海賊』はブルーライトニングが合流したあたりが凄い好きですね。グランドセヴン好きが出ている。あそこ、僧侶が撃ち落としてるの想像してちょっとシュールで笑っちゃったのもあって結構好き。
 そしてお弁当箱!!!!ならぬ『茅田砂胡全仕事 1993~2013』
 これ初めて読んだ時は泣いた!!!シェアードユニバース作品としての全ての願望が実になってて、でももうきっとデルフィニアの面々が見られないことが悲しかったなあ、すごく好きです。

 すごい長くなってしまった。しょうがない、茅田砂胡シリーズ全体で70巻あるらしい 今初めて数えてきたけど笑うしかない なんで私全部覚えてるんだろうww 長すぎるってのも人に勧めずらい要因ではあるけど、とりあえずデルフィニア、もしくはスカーレットウィザードだけでも読んでもらえればいいので…… よろしくお願いします。

ここまでですでに124冊です。長編シリーズってすげ~。

【物語小説編】

 ここからはちゃっちゃと行きます~!好きフレーズは付けたり付けなかったり。好き/面白かった読んどけ!な作品を語ったり語らなかったりでばっと思い出せる限り列挙していく。

・妖奇庵夜話

だから、ほら、笑ったらどうだい。

妖奇庵夜話 ラストシーン p281

榎田尤利名義も榎田ユウリ名義もどちらもたくさん読んでる作家さんではあるのですが、ここではあえて妖奇庵夜話一本で勝負したい。ちなみに先生の作品で初めて読んだのは『カブキブ!』でした。あのあと歌舞伎にハマって大変だった。妖奇庵夜話はすごくドラマチックに情景が浮かぶ作品なのでいつか実写されるんじゃないかな~と思っているのだがどうだろう。あと、小説の終わり方が本当にきれいです。ラストシーンという副題のラストシーンのセリフが「だから、ほら、笑ったらどうだい」なのは綺麗な幕引き過ぎて本当に鳥肌が立った。

・蒼月海里作品

 蒼月さんは多分9割方の作品を終えているので作者名で推します。ただ筆が早すぎるので最近はちょっと積読気味。
 オススメは『水上博物館アケローンの夜』『幽落町シリーズ』『華舞鬼町シリーズ』『深海カフェシリーズ』『咎人の刻印シリーズ』かな。
 やっぱり水脈さんが好きで…!あ、でも都築も好きだし忍も好きだし。幽落町・華舞鬼町シリーズ読むと羊羹が食べたくてしかたなくなるし、実際に読んでるときはすごい羊羹食べてた。影響されやすい。路地に入る時に、ああここに入口があったらいいのになって何回思ったか知れない作品。

・澤村御影作品

 高校の時に読んで、最終的に私を「民俗学」を学ぶ大学生にした理由の小説。当時、興味・関心の民俗学に進むか、将来の実用性を考えた法学にするかって言うのを悩んでいて、そんなときに受験生だからと取っておいた澤村先生の『准教授・高槻彰良の推察』を読んで民俗学にしよっておもったわけですね。ちなみに良すぎて後先考えずにそのままTwitterのDMで突撃して感想を送り付けた。行動力だけはすさまじい自負がある。ドラマ化もし、超売れっ子作家さんです(古参ムーブ)というのも、澤村先生の作品自体は中学の時に読んでいて。というかどちらかといえば私は初めて読んだ方の『憧れの作家は人間じゃありませんでした』のファンなんですよね。衝撃が強くて。いや~どっちも好きだし悩むけど。悩むけど。
 澤村先生の描くキャラクター性が好きです。関係性とか、表情とか、澤村先生の描く世界って優しくて。描かれるキャラクターたちも澤村先生が好きなんだろうな~って伝わる感じ。作者とキャラクターとの信頼関係というか、めちゃくちゃ環境の良い牧場で放し飼いされている感じというか。空気がいい。何回も読み返す好き作品です。

・英雄の書

「物語とは、さて何でございますかな。”印を戴く者”よ」
百合子が答える前に、大僧正は凛とした声音で言い切った。「嘘にございますよ」
(中略)
「有りもしない出来事を作り上げる。そして語る。記録に残し、記憶をばらまく。嘘でございます」
その目で見たこともない昔の出来事を、残された記録の断片をつなぎ合わせて物語にする。それも嘘だ。
「そうした嘘がなかりせば、人間は生きられぬ。人の世は成り立ちませぬ。物語は人間に必要とされる、人間を人間たらしめる必須の嘘なのでございます。しかし、嘘は嘘。罪にございます」

英雄の書 上 p356~p357

 初めて読んだ時の衝撃たるや。ブレイブストーリーとか宮部みゆきも割と読んでる作家さんではあるんだけど、英雄の書が私の中で一強で。
 これは本読んでるときの感覚の話なんだけど、私小説読んでるときに一番鮮明に残るのがその本の匂い、なんですよ。その本そのものの匂いじゃなくて、世界観の匂い。英雄の書は今まで読んだ本の中でも本当に匂いが強かった。
 物語を読むものとして、物語を生きるものとして、物語とともに生きるものとして、ひいては「物語」の持つ意味に対して、このすべてが「罪」なのかもしれないというこの考えが芽生えただけで私にとって糧となる本。

・家守綺譚

――サルスベリのやつが、おまえに懸想をしている。
――……ふむ。木に惚れられたのは初めてだ。

 むちゃくちゃ好み。この一言に尽きる。梨木さんは『裏庭』も好きだし、もちろん『西の魔女が死んだ』も好きだし、これから『勾玉三部作』を読むところなんですけど、特に家守綺譚は好みでしたね~。別にここは梨木果歩さん自身の名前として出しちゃってもよかった、くらいには好み。裏庭の入れ子構造も本当にすごかったし良かった。

・ほんとうの花を見せにきた

私たちは無知に殺されようとしているの。

ほんとうの花を見せにきた p305

 桜庭一樹~!!感想については別にnote書いたから参照してください。
 桜庭一樹さんは『砂糖菓子の弾丸は打ち抜けない』も『伏』もよかった。

・全部ゆるせたらいいのに

呑みたい吞みたいどうしても呑みたい。吞まなけらばならない。呑まなければ狂う死んでしまう。
でも飲んだらやられる。このままじゃ全部だめになる。
丸々坂のたこ焼き屋を素通りしてコンビニに入る。自動ドアのメロディが鳴ると同時に引き返す。額を拭う。冬なのにひどい汗をかいている。やっぱりたこ焼きを買って帰る。千映の笑顔が見たくてたこ焼きだけを買って帰る。

全部ゆるせたらいいのに p112

 一木けいですよ。「大学生が好きなやつね」とか舐めてかかると怪我しますよ。小説がうめ~~と大感動してしまった。別記事でどうぞ。

・小川糸作品

 小川さんの作品はなんだか熟れたりんごみたいだなと思っている。人間としての皮を剥がれて魂だけになったみたいな感覚で世界に放り込まれる感じ。恥ずかしくて、でもあったかくて、そんな世界観が大好きです。
 わたしはエッセイを読むのが苦手で、だからいつか読めるようになったら小川さんのエッセイはたくさん読みたい。

・愛なき世界

 三浦しをん~~、作品ほとんど読んでるんじゃないかな?『風が強く吹いている』『舟を編む』『神去なあなあ日常』『ののはな通信』『天国旅行』『きみはポラリス』が特に好きです。が、あえてここは『愛なき世界』を推させていただく。

・有川ひろ作品

「あんたらここにある皿とフォークの立場はっ!」
思わず抗議する堂上に、先輩隊員たちは「そんなもん、女子分だけでよかったろうがよ」などと歯牙にもかけない。
「まあまあ、俺は使ってあげるよ」
「俺も使わせてもらいますから」
小牧と手塚に明らかにフォローされたところへ、玄田の遠慮なしの声が飛んだ。
「一口サイズだな、こりゃ」
「それは隊長だけです!少しは味わって食べて頂けませんかね!」
堂上の文句に、
「味わった味わった、苺らしき味がした」
暴君もいいところなあしらいである。

図書館革命 p199~200

 まあ、挙げないわけにはいかなかった。読破率10割。児童書から一般文芸に移行するにあたってのとっかかりになってくれた人。この人の作品からはやっぱり離れられなくて。ここでは特に好きな作品を。
『図書館戦争』『ストーリーセラー』『キケン』

・本日は、お日柄もよく

 原田マハ!原田マハ先生は読破率6割くらいだと思う。『あなたは、誰かの大切な人』『ロマンシエ』が特に好きです。

・魔法使いと刑事シリーズ

 東川篤哉~!読破率4割程度。『謎解きはディナーのあとで』シリーズ好きですよ、勿論。でもここでは『魔法使いと刑事』シリーズを推させてほしい。特に『魔法使いと刑事たちの夏』は何回読んだかしれない。

・博士の愛した数式

 小川洋子さん!読破率は4割くらい。私的には刺さりまくる作品と全く分からない作品でぱっかり分かれる作者さんです。みんなに刺さりまくってる『猫を抱いて象と泳ぐ』がよく分からなかったのでいつか分かるといいなと思っている。

・凪良ゆう作品

「なあ、今度一緒に買い物いく?」
「え、いいの?」
「おお、じゃあ今度渋谷でも——」
服だというと、平良は怯えた顔をした。
「いいよ、俺、今ので十分だし。渋谷とか怖いし」
「なんも怖くない。俺がついていって、もっと似合うやつ選んでやる。ついでにサロンも」
「貴族?」
「死ね。ヘアサロンに決まってるだろ」

美しい彼 p237

 凪良ゆうさんの読破率は9割超えてるんじゃないかな。疲れたときによく読む。凪良さんの「結局何も変わってない世界」に安心できる。
 でも、純文学よりもBL作家出身なだけあってやっぱりBLがめちゃくちゃに上手い。ここでは特に好き作品を。ただ、ゴリゴリのベッドシーンも含まれるので読もうと思ってる人はそこだけ注意。
『美しい彼』『恋愛前夜』

・一穂ミチ

 BL出身作家繋がりで一穂ミチさんも。この前初めてライトノベル出身作家からの直木賞受賞されてましたね、めでたい。凄い。
 読破率7割程度ですかね、純文学もとても好みですが、やっぱり原点回帰の作品がとても上手いように感じる。特に好きなシリーズを。

 本当は夢枕獏とか神永学とか松岡圭祐とか東野圭吾とかもお世話になったので挙げたほうがいいと思うのだけど、この辺を挙げつづけると少しお世話になった程度の湊かなえとか村上春樹とかのゾーンに入って枚挙に暇がなくなるのでこの辺で!

【名作編】

・春昼・春昼後刻

渚の砂は、崩しても、積る、くぼめば、たまる、音もせぬ。ただ美しい骨が出る。貝の色は、日の紅、渚の雪、浪の緑。

春昼後刻

 文豪で好きな人を挙げろと言われたら泉鏡花と江戸川乱歩を挙げます。
幻想文学が好きです。とかいいながら耽美派が全体的に凄く苦手で、でもでも新思潮派はまあまあ好きだから反自然主義全体が嫌いなわけじゃないんですよ。耽美派だけなんか無理で。江戸川乱歩だけ大丈夫なのは何かの特異点です。幻想文学という括りに入れてるからかもしれない。私は谷崎を幻想文学の括りに入れているのを許容しない(過激派w)
 特に泉鏡花は『春昼・春昼後刻』の美しさが際立ってますよね。これ以上に終わりが綺麗な小説を読んだことがない。お話の幻想的世界観も好きだけど、なによりも泉鏡花の語彙の使い方がやっぱりその幻想世界を作り上げていてスゲ~しか言えない。素晴らしい小説です。泉鏡花で他に好きな作品は以下に。『高野聖』『照葉狂言』『遠野の奇聞』

・百年の孤独

 マジックリアリズムなので日本でいう幻想文学ですね。結局私はここに回帰するんですきっと。自分で結構速読な自覚あるけど、百年の孤独に関しては3、4ヶ月読破にかかった。しかも名前が似てるから途中からどんどん分からなくなっては戻って読むみたいなことを繰り返し……   日常に入り込む幻想と文章の美しさに「すごいものを読んだな」って感触だけは残った。たくさん話したいけど、全部「分かった気になってる」だけなんだろうなとも思う。
 私が百年の孤独を読んで感じたのは桃源郷とか胡蝶の夢とかに似てるな〜と。物理的にも作品の中に沈んでいても自分の現在地がわからなくなるような感じで、普段の読書が行き慣れた市民プールで楽しく遊んでる感じとすれば百年の孤独は真っ裸で深海に放り込まれたような。ただ私が在るということすらも不安になるような、そんな読者体験だった。


 名作編、と打って出たはいいもの、正直これは好き!!と声をあげて言える作品が私の元にそんなになかった。
 もう一つ見出しでつけられるのならきっと『罪と罰』になると思う。もっと書こうと思えば書けなくもないけど「教養として読んどくか」みたいな意識で埋めていっていたのでそもそもそんなに興味はなかったのかもしれない、とこれを書きながら今気づいた。
 それでもやっぱり中島敦の『山月記』は名作で心が弱ってる時に読むと泣くし、ドストエフスキーの『罪と罰』を読めば自分の身のうちにある感情に苦しくなるので、私が好きとか嫌いとか関係なく物語に殴られる名作というものは凄いのだと思う。

【ノンフィクション編】

・届かぬ悲鳴 尊属殺人罪が消えた日

 二審の判決に反吐が出る。法律は「こうありたいと願った人々の祈り」だと理解しているけれど、守るに、祈るに値しない法律は時代の移り変わりとともに変えていくべきなのだと思う。
 従属殺人罪が消えたこともまた「人々の祈り」なわけだけれど。

・彼女は頭が悪いから

 ドストエフスキー『罪と罰』を彷彿とさせる。持つべきものは持たざる者への還元が義務だというのは暴力だけれど、それを強者が自覚して選民思想に捕らわれるのもまた危険なことなのだなと。

・なぜ君は絶望と闘えたのか

 光市母子殺害事件の被害者遺族のお話。少年法の理不尽さと、そのために法を変えるという決意をまざまざと見せつけられて、自分はその意思を持って動けるだろうかと悶々と考える。

・「少年A」 この子を生んで……

 有名な事件なので読んでおいて損はないと思う。少年A自身の書いた『絶歌』の方は読むと本当に気分が悪くなるので注意。

・生ける屍の結末「黒子のバスケ脅迫事件の全真相」

 渡邉被告の文章力が高すぎてどんどん引きずり込まれる。嫉妬やそういうものをないまぜにしてすべてを行動力に変えた彼自身、わたしから見れば「こんなことが出来るなら他になんだって出来るだろ」って思っちゃたりもしたけど。 彼自身の自己分析が凄すぎるので必読。やっぱり私は「好き」を原動力に変えたいなと思う。ネットでアンチ垢とか作ってる人たちの末路です。

・女子高生コンクリート詰め殺人事件

 人間にここまでのことが出来るんだ、って信じられなくなる。悲鳴やそういうものが周囲に漏れ出ていたのに「誰も助けなかった」という所にも闇を感じて、なんで、なんで誰も助けられなかったんだろう、って。正常性バイアスの何たるかを見せつけられる。異常。
 確実に気分の悪くなる本なので必読とは言えないけれど、読めそうなら読んでおいた方がいいと思う。

【詩歌編】

・オール アラウンド ユー

燃えない、と書けば燃えない紙になる。きみはそういうことができる子。

オール アラウンド ユー p75

立てるかい、君が背負っているものを君ごと背負うこともできるよ

きみを嫌いな奴はクズだよ p122

 木下龍也さんです。私が今一番好きな歌人さんです。トークショーとかサイン会とか行けるものは全部行ってる。木下さんの言語感覚、本当に素晴らしくて、あとがき?だかトークショーだかで「本当はコピーライターになりたかったんです」ってお話をされていて全ての合点がいった。しかも木下さんが本当にコピーライターのままでいたら広告業界の誰も勝てない覇権になっていたと思う。度々世間でバズる『あなたのための短歌集』もめちゃくちゃに好きだが、やっぱりここはオールアラウンドユーで。木下さんは基本的に肯定して包み込んでくれるような短歌を詠われるけど、時たま首筋に刃物を当てるような、その短歌の前では息を吸うことすら許されないような冷たい歌を詠まれていて、それが本当に好きです。

・滑走路

サンタクロースあなたにぼくは逢いたくて逢えず大人になってしまった

滑走路 p74

抑圧されたままでいるなよ ぼくたちは三十一文字で鳥になるのだ

滑走路 p14

 現実の苦しさを、でも萩原さんがその中に見出した希望の光を見出しては苦しくなる。 彼を偲んで。

・四百センチ毎秒の恋、あるいは

石ころをきみに見立てて蹴ってみる溝ではなくて恋に落ちてよ

四百センチ毎秒の恋、あるいは p28

もういっそ法で定めてくれないか君への恋の有効期限

四百センチ毎秒の恋、あるいは p123

 自費出版なのかな?ペーパーバックでしか手に入らないので、どこかの出版社さんが拾っていつか商業できちんと本が出ればいいなと思ってたりする。
 一応ウェブページで読めるっちゃ読めるんだけど、本の方が解説とか諸々ついてて楽しい。彼女さんも西村さんの必死な感じもキュートで、少女漫画を読んでるみたいで本当に楽しかった。

・ぼくがゆびぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集

「うふふふ」
「なにわらったの」
きみは目をまるくした。「気もちわるい」
「そういう、ことばに、ならないものが、詩なんだよ」
「でもさあ、これ、ことばだよね。ぜんぶ」
きみは、いった。「ことばにならないものが、ことばになってるの?」
「ただしくいうと、ことばになってるんじゃなくて、ことばにしようとした、あと、なんだ」
(中略)
「でも、ひとが、もじをつくったのも、こころや、できごとを、のこそうとしたからなんだ。そのおもいが、じぶんといっしょに、ほろびてしまわないように」

ぼくがゆびぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集 p48

 言葉ってなにも出来ないのかもしれない、って感じたときに読む本。
 自分の感情は自分の知っている言葉でしか表せないし、だからこそ私自身は私自身の力によってしか言語化されないんだよ。それがどうしたって心細くなる時があって、そんなときに読むとなんだか「これでいいんだ」って気持ちになるような気がして。

・千の風になって

 私のことをリアルで知ってる人がこれよんだらちょっとクスっと出来るかもしれない。最後を飾るのはこの本しかないなと思って。
 私の名前の由来です。って言うのも皆が歌ってる方ではなくて『千の風になって』って短歌が元々あったんですよね。原題は詠み人不詳で『Do not stand at my grave and weep』 木下龍也さんのサイン会に行ったとき、名前を伝えたら「いい名前ですね」って言われて名前と共に添えてもらったのが『愛された犬は来世で風となりあなたの日々を何度も撫でる』という歌だったんだけど、この本にも通ずるところがあるなと思う。すごく好き、というか私にとって大切な本。

おわり!

 シリーズ合計も含め、264冊の本がここで紹介されました!
 卒論は書けないのに、趣味の駄文では1万をゆうに超した駄文をつらつらと書けるんだねって私の中の悪魔が囁いてる。20年生きてきての中間決算をしようと思い立ったのは、中学生の時の読書記録を見つけたからなんですけど そこには今の私には逆立ちしても感じられないような感性の感想が書かれていて私は意外と大人になったんだなあと。今の私の感想って今の私にしか書けないから、取り敢えずここまでを文字として残しておこうと思って。
 本棚をひっくり返して、記憶を掘り起こしてどんな本を読んだか思い出してる時はちょっと楽しかった。それと、私はつまらない本も沢山読んできたなあと思った。(私の感性に従っての"つまらない"です) 
 私の中にはつまらないと面白いが沢山混在してて、面白いと思うのはほんの上澄みに過ぎなくて、でもその沢山のつまらないを積み重ねてきたからこそここまで書いたような「面白い」に出会うことができたんだよなと思うと同時に、それってなんかいいなって。美味しいものしか食べてなかったら美味しいすらも分からなくなるのと同じで、不味いがあるから美味しいがわかるわけじゃないですか、 私が世界をつまらないと感じる限り、どこかに面白いがあると信じ続けられるなと思って。そしていつか本気で「この世を生きるに値する」と思えるくらいの鮮烈な面白い、を見つけたい。
 
 これは「小説・詩歌編」だったので今後「映画・舞台編」「まんが編」へと続く、はず。自分の備忘録として書いたけど、もしここまで読んでくれた人がいたならそれは本当にありがとう。是非読んでみてね。


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