連続ブログ小説「南無さん」第二話
ひどく冴えた冬の朝のことである。南無さんの体に異変が起きた。
すなわち、徐波睡眠下における下腹部海綿体への過剰送血、いわゆる朝起ちである。
これを必定、生命の危機と感じた南無さんは、取るもの取り敢えず、穿くもの穿き敢えず、枕を引っ掴むや否や、キラキラとカウパーの尾を引きながら、家を飛び出してしまったのだった。
全裸の南無さんを見かねたのか、道行く青年がこれに声をかけた。
おいおい、あんた、そんな格好でどこへ行くんだい。ここは天下の往来だ。人目もあろうに、ちょっとこちらへおいでなさい。
すっかり気が動転していた南無さんは、青年に手を引かれると、ワッと叫んで枕を投げつけた。
あわれ青年、投げつけられたのは枕とは名ばかりの使用済みセブンティーンなのであった。南無さんが昨日世話になった後、枕にしていたのだ。
汚濁で濡れそぼった青年の唖然とした顔を前に、南無さんははたと正気に戻る。
いかにも、ここは天下の往来である。故に、わたしも往来するところのものである。
そう屹然と言い放つと、拾い上げたセブンティーンを股間に誘い、前へ後ろへと往き来させた南無さん。
オーライ!オーライ!発射オーライ!
かくして新たな白線が往来を舞った。
彼の帰りを待つ者などいないのだ。